『機動戦士Zガンダム』(以下、『Zガンダム』)は最後に主人公であるカミーユ・ビダンが、精神崩壊を起こす非常にほろ苦いエンドが印象的です。そんな『Zガンダム』ですが、実はハッピーエンドで終わる予定だったといいます。
◆カミーユは壊れるはずじゃなかった? 悲劇の裏に隠された初期案の謎
『Zガンダム』の主人公であるカミーユといえば、悲劇的な運命を辿った主人公としても有名です。最終話で、パプテマス・シロッコを討ち取るも、精神が限界を迎えて心が壊れてしまいました。
そんなほろ苦いエンドから、『Zガンダム』は『ガンダム 』シリーズの中でも、屈指の鬱エンドともいわれています。そんな『Zガンダム』ですが、初期案ではハッピーエンドで終わる予定だったといいます。
『別冊アニメディア 機動戦士Zガンダム』(出版社:学習研究所、1986年3月30日)によると、シナリオの第一稿では、ハッピーエンドに近いふわっとした最終回になる予定で、エマ・シーンも退場しないはずだったと語られています。
ただ、続編である『機動戦士ガンダムZZ』の制作が決まったため、その影響でカミーユを退場させなければならなくなったとも語られていました。
一方で、『機動戦士Zガンダム大辞典』(出版社:株式会社ラポート、1986年8月25日出版)によると、富野監督は「『Zガンダム』が現実認識のストーリーであったんです。それから考えていったら、彼はあのようになるしかなかった」とも語っていました。つまり、初期案とは違うものの、カミーユの精神崩壊エンドは、決して妥協から生まれたエンドではなかったことがうかがえます。
なお、2005年に公開された、劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation 星を継ぐ者』では、カミーユが精神崩壊を回避するエンドが採用されていました。これは、『機動戦士ガンダムZZ』へのつながりを考えなくてよかったからこそ、描けたハッピーエンドでもあったのでしょう。
──続編制作などの事情で選ばれた悲劇でしたが、それは監督が物語のリアルを追求した結果でもありました。それから長い年月を経て制作された劇場版で、ついにハッピーエンドが描かれたことで、カミーユの魂はようやく救済されたのかもしれません。
〈文/北野ダイキ〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「カミーユ・ビダン×ぴあ 」(出版社:ぴあ)』


