『ガンダム』シリーズは、生みの親の富野由悠季監督がファンから「皆殺しの富野」と呼ばれるほど、戦死するキャラクターが多いシリーズですが、近年の作品では死亡フラグを立てながらも生存するしぶといキャラクターが多く登場しています。次の3人は、死亡フラグをへし折り終戦まで生きのびた強者です。

◆ジョゼフ・ヨット──メタ発言が生存フラグだった?

 『∀ガンダム』の第1話から登場しているジョゼフ・ヨットは、第48話で主人公のロランと押し問答の末、ガンダムで無理矢理出撃します。しかもガンダムは正規のコクピットであるコアファイターを外し、仮設で別のモビルスーツのコクピットが取りつけられた万全でない状態です。

 去り際には恋人のフランが妊娠していることを明かし、「せめてキスぐらいしていきなさいよ」という批難を背中に浴びるなど、この時点で嫌な予感がビンビンします。

 戦場ではラスボスであるギンガナムが乗るターンXを相手取り、「やったぜ!フラン!」と勝ち誇るなど完全な死亡フラグを立たせます。

 ここでダメ押しとばかりにギンガナムから、「戦場で、恋人や女房の名前を呼ぶときというのはな、瀕死の兵隊が甘ったれて言うセリフなんだよ!」と死刑宣告にも似たメタ発言が飛び出し、サイコミュ攻撃で彼は窮地に陥りました。

ジョゼフ危うしというタイミングですが、救援が間に合い戦線から彼は離脱しています。

 ギンガナムのメタ発言は視聴者がジョゼフを案ずる気持ちを代弁することで、死亡フラグを死亡とは別の形で回収したもので、生存フラグだったのかもしれません。

 また、最終話で描かれた戦後の場面で、ジョゼフは子守をしながら働いており、終戦まで生きていることが確認できました。

◆オブライト・ローレイン──死亡フラグ回収の抜け道

 『ガンダムAGE』第2部アセム編に登場するオブライト・ローレインは、モブキャラパイロットの1人のような見た目とポジショニングで印象の薄いキャラクターでしたが、整備クルーで眼鏡っ子のレミと恋愛フラグを重ねて存在感を増します。

 レミのチャーミングな人柄と、オブライトの実直で誠実なたたずまいはむつまじいものでした。それ故に、オブライトの「俺たちパイロットはいつ死ぬかわからない」と前置きをしたプロポーズは、見事な死亡フラグの立て方だったといえます。

 最終決戦前にレミからプロポーズを承諾され、当時オブライトの生還を絶望視した視聴者が多かったことは想像に難くありません。

 一方でレミは母艦ディーヴァの整備のために、作業用モビルスーツで出撃します。ヴェイガンの部隊はレミを襲撃し、まさかのレミが戦死。死亡フラグを恋人が回収するという珍しいパターンによりオブライトは生存しました。

◆パトリック・コーラサワー──愛の力で死亡フラグをたたき折る!

 『ガンダム』シリーズで死亡フラグ回避といえば「不死身のコーラサワー」こと『機動戦士ガンダム00』のパトリック・コーラサワーを忘れてはいけません。

 彼は第1話で、全世界が注目する中、刹那の駆るガンダムエクシアに一方的に撃墜されたため、いわばかませ犬でした。

 その後カティ・マネキンと修正も含めたコミュニケーションを重ねて親睦を深めます。何度となく出撃して撃墜されますが、彼女と帯同しつつ最終局面までガンダムマイスターたちの前に立ちはだかります。

 最終局面の2期第23話で、カティの乗艦する艦の盾になり、あろうことかカティに告白しながら撃墜されますが、幾度も死亡フラグを折ってきた彼は、当たり前のように生存しエピローグでカティと結婚します。

 後日談の劇場版においても、戦闘中に「幸せ過ぎて不死身じゃなくなったみたいです」とカティに告げながら、敵を道連れに自爆を試みるも、直前で救援に来た刹那に救助され生還しました。

 コーラサワーは作中でもコメディリリーフの役回りが多く、何となく生き延びてくやしがっているイメージの強いキャラクターです。しかし、そんな彼が生き延びた背景には、彼の卓越した操縦技術があります。

 まだ誰もガンダムとの戦闘をしたことがなかった、第1話のエクシア戦においてもその技術の高さが垣間見えるのです。

 僚機のモビルスーツは初手で撃墜されているのに対し、コーラサワーだけはしのいでいます。加えてガンダムの装甲に傷をつけられなかったもののコーラサワーの射撃を受けてエクシアは火花を上げていますし、GNソードで乗機を両断される際も、シールドと右腕で防いだ上にコクピットが斬られないように身をかわしています。

 セリフの情けなさにイメージをひっぱられますが、決して腕の悪いパイロットではなく、どんなに追いつめられても絶対にあきらめない不屈の戦士なのです。

 

 ──『ガンダム』シリーズはリアルな人間関係の描写が特徴的で、それ故に人の生き死ににまつわる展開も多くあります。

 現代ではアニメに限らずあらゆるコンテンツで物語が消費されています。当然フラグという言葉も一般的になり、フリがあってオチがくると、想像しながら視聴してしまう人も少なくないでしょう。

 だからこそこちらの予想を裏切る、死亡フラグを立てたのに生存するキャラクターが登場するようになったのかもしれません。

〈文/雨琴〉

 

※サムネイル画像:http://www.turn-a-gundam.net/story/48.htmlより

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