『機動戦士ガンダム』で活躍したシャアの専用機ですが、小説版やゲームでしか登場しない専用機の中には、リック・ドムや、まさかのガンダムもあります。さらにシャア専用ザクとジオングにまつわる有名シーンから、パイロットとしてのシャアのこだわりを知ることができます。

◆通常の3倍のスピードの真相──シャア専用ザク

 シャア専用機の代名詞とも言えるシャア専用ザクは、作中で「通常の3倍のスピード」であることを明言されたことで、強烈なインパクトを与えました。

 シャア専用ザクはスラスターやジェネレーターなどを変更することで、30%ほど機体性能を向上させてはいますが、それだけで通常のザクの3倍の速さで動けるようにはなりません。

 改めてこの台詞が使われた場面を確認すると、あくまでホワイトベースに接近してくる数機のザクのうち、1機は他のザクの3倍のスピードで近づいてきたという意味です。

 つまりザクたちがホワイトベースに接近するまでの道のりで、シャアは性能だけでなくテクニックでもほかのザクのパイロットより秀でていたため、スムーズにホワイトベースまで近づけたということでしょう。

 ちなみにゲームの『スーパーロボット大戦』の一部の作品では「通常の3倍のスピード」という台詞になぞらえて、通常のザクが4マスずつしか動けない中、隠し要素で手に入るシャア専用ザクは3倍の12マス動けるという破格の性能でした。

◆小説版では決戦兵器──リック・ドム

 シャア専用リック・ドムは小説版で、ザクを破壊されたシャアが搭乗した最後の愛機です。

 小説版の『機動戦士ガンダム』ではジオン軍のモビルスーツはザクとリック・ドムしか存在しないので、アニメ版におけるゲルググやジオングのポジションに当たります。

 シャア専用リック・ドムは特別高い推進力を持っていますが、推進力が高すぎるあまり小回りは利かず、シャアの反応速度に対応しきれていませんでした。

 専用機に限らず小説版のリック・ドムは、テレビ版と異なりビームバズーカやビームサーベルと言ったビーム兵器を装備しています。

 それでも性能的にはガンダムどころかジムにも敵わないものですが、アムロとの決戦時に、シャアに帯同したルロイはリック・ドムでアムロの乗ったガンダムを撃墜しています。

 シャアとアムロが分かり合えたかもしれない、テレビ版とは異なる可能性が開かれた瞬間に起きた悲劇でした。

◆シャアのこだわりがよく分かる兵器──ジオング

 ジオングはア・バオア・クーでシャアが受領しますが、この際完成度が80%であることを告げられ、ジオングを実際に見たシャアは「足はついていない」と不満を述べました。

 それに対して整備兵が「あんなの飾りです!」と返す名シーンですが、シャアにとって足がついているかどうかが、重要であることが分かる場面があります。

 ここで思い出したいのは第3話で、シャア専用ザクがガンダムにキックをする場面です。この場面は人気があるだけでなく、『機動戦士ガンダムUC』で赤い彗星の再来と呼ばれたフル・フロンタルもシナンジュでユニコーンガンダムにキックをするのが印象的です。

 シャアは先ほどの整備兵に対して、ジオングのサイコミュ兵器を自分が使えるか心配している気持ちを漏らしていました。扱えなかったときのために、できればキックができる足が欲しいと思ったのではないでしょうか。

 ジオングは足がない状態でも23メートルと、通常のモビルスーツより大きいので、その質量を使ってキックをすれば、ザクでガンダムを蹴ったとき以上にダメージを与えられたかもしれません。

 実際に『冒険王コミック文庫』に掲載されていた漫画版では、ジオングが体当たりでジムを破壊していたので、モビルスーツを質量兵器としてぶつけるという発想は、シャアにとって自然なものなのでしょう。

◆まさかの赤いガンダム──キャスバル専用ガンダム

 キャスバル専用ガンダムは、連邦の白い悪魔と呼ばれたガンダムと同型の赤いガンダムです。

 ゲームの『ギレンの野望』シリーズで、シャアが早い段階でザビ家から離反し、ジオン・ダイクンの息子としてネオ・ジオンを発足した場合、ニュータイプの象徴として建造します。

 性能面もカスタマイズされた結果、運動性に特化した接近戦向きのモビルスーツになりました。

 『ギレンの野望』以外のゲームに登場することも多く、シャア専用ザクよろしくキックをするところからも、接近戦に特化していることがうかがえます。

 通常のガンダムとの違いは、カラーリングだけでなく、腰のV字マークや、シールドの星型マーク(連邦軍のマーク)がないことです。

 

 ──シリーズを通して専用機を持つパイロットはたくさんいますが、シャアは専用機という概念を作ったと言っても過言ではないキャラクターです。

 さまざまなシャア専用機を通して、シャアの操縦技術の高さやこだわりがうかがい知ることができます。

〈文/雨琴〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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