『ガンダム』シリーズはロボットアニメですが、主人公が自らの身体で戦うシーンもあります。

 中でも主人公が剣を持って戦う場面はそれぞれの主人公の性質を表していて、戦争の記憶に終止符を打つ者もいれば、モビルスーツを一刀両断する強者も存在します。

◆テレビでは「1度だけ」、劇場版では「ありません」──ロランvs.ギンガナム

 『∀ガンダム』のロランは最終話でギンガナムから刀を投げ渡され、「剣で戦ったことは?」と質問されます。

 テレビ版のロランは、クワウトル王との戦いで剣での決闘を経験しているため「1度だけ」と答えますが、劇場版ではクワウトル王の登場がカットされているため「ありません」と答えています。

 軍事演習をくり返し、ギンガナム自身も自信があるからこそ剣での決闘を申し出たはずですが、ロランも運動神経が良いので善戦します。

 ∀ガンダムとターンエックスがお互いの月光蝶によって繭玉のように結合していく中、ギンガナムは持っていた刀ごと取り込まれてしまい、決着がつきました。

 戦争に取りつかれ、黒歴史を掘り起こしてもてあそんだギンガナムに相応しく、兵器と共に埋葬されてしまいます。

◆ボロボロに錆びた刀──ドモンvs.デスアーミー

 ドモンは大根も切れないようなボロボロに錆びた刀を、シュバルツから渡され、明鏡止水の境地を体得するための修行にはげみます。

 シュバルツの協力もあって、明鏡止水を体得したドモンはデスアーミー3体をなで切りにしました。

 修行の際にはガンダムシュピーゲルの刀を錆びた刀で受け止めるなど、常人離れした芸当を見せています。

 これはシュバルツが修行を完成させるために、手加減せずシュピーゲルで襲いかかることで、ドモンに生命の危機を感じさせ、デビルガンダムを奪って逃げたキョウジへの憎しみや、デビルガンダムの手先となったマスター・アジアへの怒りなどを断ち切って、曇りのない鏡のように澄んだ心で戦うことを教えるためでした。

 とはいえガンダムの攻撃を生身で受け止めるのですから、ファイターの肉体の強さはとてつもないものです。

 師匠のマスター・アジアも腰布でデスアーミーを倒していたことを考えると、錆びた刀で倒すくらいは容易なのかもしれません。

◆代わりに名乗り出る自信──シンvs.シュラ

 劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』ではコンパス一行がファウンデーション王国を訪れた際に、ブラックナイツのシュラからサーベルでの手合わせを頼まれます。

 戦うことに消極的なキラを見て、シンが代わりに戦いました。

 シンは士官学校時代のナイフ戦で1位の成績を持つ実力者なので、白兵戦に自信があったのでしょう。サーベルの構えを見ると、デスティニーガンダムなどに乗っているときと同じ剣道の構えをしています。

 一方のシュラはコーディネーターを越えるアコードなので身体能力も高く、相手の思考を読むこともできます。

 戦いを神聖視する武人のように振る舞う一方で、心を読んだりモビルスーツに騙し討ち用の含み針のような隠し武器があったりと、勝つためには手段を選ばないところもあります。

 心を読まれての戦いはシンにとって不利だったのか、サーベルでの手合わせはシュラの一方的な勝利に終わります。

 シュラはこの時点でアスランとの戦いを望んでいた様子で、アスランを最強の戦士と認めていました。

 ラクスがさらわれてからのキラとアスランの殴り合いでも、アスランはほとんど一方的にキラを殴っていましたし、見かねたシンがアスランを殴りに介入しても2人から弾き出されていたことを考えると、白兵戦最強はアスランというシュラの見立ては間違いなさそうです。

◆機械いじりが趣味の少年にしては善戦!?──アムロvs.シャア

 『機動戦士ガンダム』の最終話では、モビルスーツ戦で相討ちとなったアムロとシャアが、フェンシングで戦っています。

 軍人として訓練を受けているシャアに対して、アムロはあくまで機械いじりが趣味の内向的な民間人です。

 無重力空間でのフェンシングなので通常のフェンシングとは体の動かし方も違うところが多いと思われますが、ニュータイプ能力の高さだけで、よく善戦したといえます。

 シャアが圧倒的に有利と思える条件での戦いでしたが、アムロは右腕を負傷し、シャアはヘルメットを貫かれ、顔を負傷します。

 まさに「ヘルメットがなければ即死だった」状況でした。

 シャアは普段、ノーマルスーツを着ずにモビルスーツに乗るので、ララァをはじめとした部下たちに心配されることもしばしばでしたが、ジオングから脱出する際にわざわざスーツを着込んだのはこのためだったと言わんばかりの命拾いです。

 

 ──ガンダムの操縦に長けているからといって、必ずしも身体能力に優れているわけではありません。

 けれど剣を持ち、直接命のやり取りをすることで、それぞれキャラクターのポリシーが見えてきたのではないでしょうか。

〈文/雨琴〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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