『ガンダム』シリーズの描く命の奪い合いの中で、愛を育むカップルは珍しくありません。その中でもお互いを補うようにひかれ合ったカップルには、不死身故のねばり強いアプローチや、復讐に一生をささげる孤独な人生に理解を示すものもありました。

◆どこまでも付き合いのいい彼氏──シーブックとセシリー(『機動戦士ガンダムF91』)

『機動戦士ガンダムF91』では宇宙空間に放り出されたセシリーをシーブックは見事にキャッチ。その後もセシリーがベラ・ロナを名乗るなら自分もキンケドゥを名乗り、ベラがストレス発散にパンを作るなら一緒になってパンを作ってクルーに振る舞いました。

『機動戦士クロスボーン・ガンダム』でシーブックは右腕を失う重傷を負いますが、戦後を描いた『機動戦士クロスボーン・ガンダム スカルハート』ではセシリーと結婚し子供も授かり、一緒にパン屋をやっていることが明かされました。

 ザンスカール戦争のころを描いた『機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト』では、シーブックとセシリーの間に生まれた2人の子供はどちらもリガ・ミリティアに志願して家を出たと言うので血は争えません。

 シーブックとセシリー自身もザンスカール軍の襲撃から逃れた避難民に対し、食料調達などで世話を焼いて頼りにされています。

 可憐なイメージのセシリーですが、海賊にもパン屋にもシーブックを付き合わせているあたり、もしかして尻にしくタイプなのでしょうか。

◆復讐者の唯一の理解者──フリットとエミリー(『機動戦士ガンダムAGE』)

 UEことヴェイガンとの戦いはフリットの一生に渡って続き、幼少期に母を、少年期にユリンを失ったこともあって、作中でも「復讐にとりつかれた男」と形容されています。

 ヴェイガン殲滅という強硬な姿勢を崩さず、味方どころか実子であるアセムからも冷ややかに扱われるフリットですが、妻であるエミリーだけはそんなフリットに寄り添い続けました。

 たとえ家庭を省みない夫であっても、自分が救世主でなければならないと強迫観念に駆られて、周囲と摩擦を起こしていても、フリットの妻として支えました。

 ゲーム版で描かれた外伝『UNKNOWN SOLDIERS』では、フリットがエミリーの存在を意識するきっかけが描かれており、子供のころから側にいて、自身の帰りを待っていてくれたことに気づきます。

 そして小説版では、ガンダムAGE-FXの開発に関わっています。実の娘にも関わらずフリットとの会話の場面が少なかったユノアと共に、アスノ家の女として生き様が掘り下げられています。

◆不死身のアプローチ──コーラサワーとカティ(『機動戦士ガンダム00』)

 三国合同演習に遅刻してきたコーラサワーをカティが張り倒して以来、不死身のコーラサワーのこりないアプローチが続きました。

 定番のお調子者なコーラサワーの場面と思いきや、国連軍結成に際して10人のトップガン選抜のための質問に対しても「学のない自分が考えるより信頼できる人物が考えたほうが良い」という旨の回答をし、着実にカティからの信頼を得ていきます。

 2ndシーズン終盤ではカティの乗る艦をかばって告白しながら撃墜されますが、しっかり脱出しており無傷で生還。不死身改め幸せのコーラサワーとして結婚式を挙げています。

 ちなみに劇場版ではカティ側に婿入りしたことでパトリック・マネキンになっていますが、職場ではコーラサワーと呼ばれ続けている実質的夫婦別姓の状態です。

 そして最終決戦ではELSに取りつかれたことで自爆を決心し、「幸せ過ぎて不死身じゃなくなった」と弱気を見せますが、ダブルオークアンタの介入によりまたしても生還。

 不死身にして不滅を体現するかのような気持ちの良い愛しっぷりです。

◆トロフィーからパートナーへ──スレッタとミオリネ(『機動戦士ガンダム 水星の魔女』)

 ミオリネの脱走を妨害してしまったスレッタは、「責任とってよ!」の剣幕に押されて、わけもわからず決闘をし、自身との結婚をトロフィーのような賞品扱いされていたミオリネの婚約者になります。

 同性婚でもお構いなしで、その後もスレッタはタイトルホルダーとして防衛を続け、一度はグエルに敗れるものの、無事にホルダーの座を取り返し、最終話ではスレッタとミオリネが左手の薬指に薬指をはめているシーンがあります。

 キーホルダーに宿ったエリクトが自身のことを「小姑」と形容していますし、正式に結婚したと判断して良いでしょう。

 スレッタはキャリバーンに乗った後遺症が3年経っても残っており、リハビリを続けている様子ですが、地球への脱走を妨害した責任をとることも果たすことができました。

 ミオリネが温室でトマトを栽培していたことや、スレッタに学校を作る夢があること。そして同性婚という要素から、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の三日月の忘れ形見である暁を育てたアトラとクーデリアの関係と印象が重なります。

〈文/雨琴〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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