『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』での一騎打ちの最中、シャアはアムロに「情けないモビルスーツと戦って勝つ意味があるのか?」と言いました。
しかし前半でアムロが乗っていたリ・ガズィも、決して情けなくない戦績を挙げています。
シャアはどうして「情けないモビルスーツ」と評価したのでしょうか?
◆なぜシャアは「情けないモビルスーツ」だと思ったのか
リ・ガズィはΖガンダムの量産型として開発された経緯があります。コストのかかる変形機構を簡易なものにすることで、既に少数の量産がされていたΖプラスシリーズよりも低コスト化が図られました。
ウェイブライダー形態への変形はBWS(バック・ウェポン・システム)と言うオプションパーツに集約することで、低コスト化と同時に本体のジェネレーターの大型化も実現。低コスト化に加えて大口径ビーム・キャノンによる高火力も両立させています。
しかしそれでも、シャアにとって満足のいく性能ではありませんでした。
一年戦争の時代から、ずっとライバルであり続けたアムロと決着をつけるならば、アムロにもサザビーに匹敵する性能のモビルスーツに乗ってもらう必要があったのです。
そのため、シャアはサイコフレームの情報を連邦側に横流して、サザビーと同条件で戦えるモビルスーツであるνガンダムを作らせました。
つまりリ・ガズィに限らず、νガンダムを受領する前の連邦軍には、シャアを満足させる性能のモビルスーツはいなかったということでしょう。
◆せめてΖや百式だったら
アムロはΖガンダムや百式の戦いを間近で見ていますし、カラバに参加した際はΖプラスA型に搭乗しているので、リ・ガズィ以上に操縦に慣れている可能性があります。
そのためか、小説版ではアムロがブライトに対し、ロンド・ベルにΖガンダムの配備ができないか訪ねるシーンがあります。
しかしジュドーらガンダムチームが活躍した第一次ネオ・ジオン抗争終結後、連邦軍はガンダムと名がつくだけで核兵器同然に扱うようになっており、どこに保管されているかも分からなくなっていると言うことでした。
Ζガンダムはリ・ガズィと異なりBWSに頼らない変形ができますし、何よりΖガンダムも百式もバイオセンサーを搭載しています。
Ζガンダムのバイオセンサーの性能を十分に引き出すことができたのはカミーユだけではありますが、ジ・Oとの決戦時の活躍を考えれば、サザビーとも渡り合えた可能性はあります。
実際、バイオセンサー自体はリ・ガズィにも仮設の物が搭載されていますが、サイコミュ兵器に対抗できるだけの戦果は上げられませんでした。
◆情けなくない戦績
一方でリ・ガズィの戦績は決して情けないものではありません。
5thルナではギュネイのヤクト・ドーガに一歩も引かない戦いをしています。BWSを犠牲にしつつもファンネルを回避し、ビームライフルであと一歩まで追いつめます。
サザビーの乱入により撃墜はし損ねますが、ダミーを巻くことでサザビーの懐に接近し、サザビーのビームライフルを切断しています。
シャアはこの時も「そんなものでは!」とリ・ガズィを酷評していますし、ギュネイが指摘するようにファンネルを使っていないので手加減をしてはいますが、十分善戦しているといえます。
その後、νガンダムに乗り換えたアムロに変わって、ケーラが搭乗してからは、高火力と機動力を活かしてムサカ級巡洋艦を多数、撃沈しています。しかしパイロットの力量に左右されるところも多く、ギュネイのヤクト・ドーガのファンネルに太刀打ちできませんでした。
サイコミュ兵器への対応については、アムロのニュータイプ能力を仮設とはいえバイオセンサーがしっかり反応できていたからこそ、勝敗が分かれたと考えられます。
◆良いとこ取りできなかったBWS
リ・ガズィの特徴はΖガンダムの火力や機動力を低コストで実現するためのBWSでしたが、あくまでオプションパーツなので、一度モビルスーツ形態に変形するとウェイブライダー形態に戻れない欠点があります。
BWSにスラスターは付いていないので、ウェイブライダー形態も小回りが利くわけではなく、対艦戦闘や奇襲をした後のモビルスーツ戦はBWSを排除する前提の運用が考えられていたのでしょう。
Ζガンダムのハイパー・メガ・ランチャーのように、ウェイブライダー形態の大口径ビーム・キャノンをモビルスーツ形態でも使うことができれば、機動力と高火力のいいとこ取りができたでしょうか。
──10月4日に発売のVR映画『機動戦士ガンダム:銀灰の幻影』ではBWSを装備しない、モビルスーツ形態での戦闘に特化したリ・ガズィが登場します。公式サイトの紹介ではバックパックが強化されているとのことなので、何らかの新兵器を装備している可能性もあります。
情けないモビルスーツとは言わせないリ・ガズィの活躍を見られるかもしれません。
〈文/雨琴〉
※サムネイル画像:Amazonより