『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の作中では、ガンダム試作2号機のアトミックバズーカが核弾頭を搭載していることについて、南極条約違反と批判されています。
一方で『機動戦士ガンダム』では水爆ミサイルが登場しており、ガンダム試作2号機の核弾頭は条約違反じゃなかった可能性も否めません。
◆開発や所持は南極条約違反ではない?
『機動戦士ガンダム』の第25話、オデッサ作戦で敗色濃厚となったマ・クベは、水爆ミサイル攻撃の前に、核兵器を所持し発射態勢を取っていることをレビルに伝えて交渉のカードにしています。
このことから南極条約で禁止されているのは核兵器の使用であって、開発や所持をしていても使わない限り違反にならない可能性が高いでしょう。
加えて南極条約は戦時条約であり、ジオン公国はザビ家の滅亡と一年戦争の終結によってジオン共和国へと変わっています。
つまり地球連邦政府とジオン公国が取り交わした南極条約は既に効力を失っているので、戦後に開発が始まったガンダム試作2号機が核兵器を搭載しているからといって条約違反を追及するのは無理筋かもしれません。
◆なぜ核弾頭を装備しているのか
元々ガンダム試作2号機はさまざまな弾頭を発射できるバズーカを装備するモビルスーツとして開発されていましたが、途中から核弾頭に特化した装備になりました。
一年戦争中、ジオン軍が核兵器を使おうとしたり保有したりしていた事例は多数あるので、報復攻撃のために開発されたと考えられます。
先に述べた水爆ミサイル以外にも、劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』でもジオン軍が多数の核ミサイルを保有していたことが判明しました。
宇宙世紀においてはミノフスキー粒子によるレーダーのかく乱で、誘導ミサイルの精度は万全ではありません。報復攻撃として所有していることに抑止力としての意味を持たせるには、モビルスーツに装備し、目標を確認できる距離まで近づいて発射する必要がありました。
接近して確実に核弾頭を命中させ、自身も無事に離脱する。実際に星の屑作戦でガトーがやってのけたことを考えると、その設計意図を体現する活躍をしたといえます。
◆ほかにどんな弾頭があったのか
ガンダム試作2号機の使う弾頭には徹甲弾や炸裂弾、ビーム攪乱膜散布弾など多種多様な作戦に対応できるさまざまなものが計画されていました。
デラーズ・フリートも星の屑作戦で核弾頭を使ったあとは、スキウレのメガ粒子砲を転用したビームバズーカを装備させる予定がありました。
またデラーズ・フリートではケリィのヴァル・ヴァロが使っていたプラズマリーダーを発射するための多弾頭弾も装備する構想もありました。
この設定を反映してか、ゲームの『スーパーロボット大戦EX』ではアトミックバズーカの代わりにプラズマリーダーを装備したガンダム試作2号機を使えます。
また、漫画『機動戦士ガンダム カタナ』や、ゲーム作品ではアトミックバズーカの代わりにロケットランチャーを背負ったガンダム試作2号機が登場しています。
トリントン基地での地上試験には間に合いませんでしたが、アトミックバズーカ以外の武装として計画されていました。
◆実はシールドが弱点?
アトミックバズーカを使うためには専用の冷却能力を持つラジエーター・シールドが必要です。
そのためアトミックバズーカによる核攻撃で星の屑作戦を成功させたいガトーは、シールドを失うわけにはいきません。
シールドなのに防御に使えないという本末転倒な状態で、実際、第2話では追いつめたはずのコウにシールドの冷却装置を攻撃されて退却せざるを得なくなる場面もありました。
ラジエーター・シールドはアトミックバズーカのバレルを運搬することと、機体を衝撃から守りつつ核爆発で発生した高熱を急速冷却して自身を守るためのものです。
大きさも通常のモビルスーツのシールドと比較してかなり大きいので、接近戦で使うことを前提にしていないのかもしれません。
ガンダム試作2号機はアトミックバズーカを装備する関係上、バックパックがすっきりしています。
背負えなかった分のバーニア類は特徴的な肩のフレキシブル・スラスター・バインダーで補われており、核爆発に耐えるために増加した装甲の重量を、補ってあまりある加速性能を実現しました。
このバインダーを元にリック・ディアスのバインダーが作られており、漫画『機動戦士Ζガンダム Define』ではクワトロが予備機のガンダム試作2号機をテスト操縦して所見を述べる場面が描かれています。
──『ガンダム』シリーズの特徴としてミノフスキー粒子の存在があります。核攻撃されたら核ミサイルで反撃するという、いわゆる核抑止力が成立しない世界ですが、モビルスーツに核兵器を持たせてでも抑止力を持とうとした結果、敵に奪われて使われてしまうと言うのは皮肉過ぎです。
のちの作品でも「核は持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃない」という台詞がありますが、そもそも使って嬉しい兵器なんてないという教訓なのかもしれません。
〈文/雨琴〉
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