公開から3週末目を経た『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』は、ついに公式サイトにて新たな登場人物やモビルスーツを公開しました。

 中にはシャア・アズナブルやシャリア・ブルといった往年の『機動戦士ガンダム』に登場していたキャラクターも並んでいるという、驚きの発表となりました。

 またモビルスーツとして“赤いガンダム”と“白いガンダム”というジークアクスとは別のガンダムの登場も明らかになり、本編を観ていないと「何が起きてるんだ」と困惑させられる状態となっています。

 ただ、ガンダムシリーズに以前から触れていたという人には、シャアと赤いガンダムの並びには既視感を覚えるかもしれません。何を隠そう『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』という作品に関係なく、シャアと赤いガンダムには“ある縁”が古くからありました。

◆アニメ未登場? キャスバル専用ガンダムとは?

 ガンダムシリーズは始まりこそTVアニメでしたが、小説や漫画、ゲームシリーズなど、その後さまざまなメディア展開をしていきました。

 その中の特殊な例として1998年に発売されたゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』です。このゲームにはシャアが乗り込む真っ赤なガンダム「キャスバル専用ガンダム」が登場しました。

 この『ギレンの野望』というゲームは一風変わった作品で、『機動戦士ガンダム』で描かれた一年戦争を連邦軍かジオン軍のどちらかを選んで戦っていくシミュレーションゲームです。TVアニメでは主人公のアムロが連邦軍についていたこともあり、ジオン軍は敵勢として描かれましたが、このゲームでは逆の立場も体験できます。

 プレイヤーの立場だけでなく、TVアニメシリーズで描かれた展開とは別の筋立てを体験でき、そういった特例の一例としてこのゲームで初登場したのが前述のキャスバル専用ガンダムです。

 このキャスバル専用ガンダムは連邦軍のモビルスーツ技術をジオン公国側の技術者が解析に成功し、連邦のガンダムと瓜二つの形状でありながら特徴的な真っ赤なカラーリングと、より高い性能を有する独自のガンダムの開発に成功した、というものです。

 詳しい人には言わずもがな、“キャスバル”といえばシャアの本名であるキャスバル・レム・ダイクンから来ており、このガンダムもいわばシャアが乗るためのガンダム。その他のシャア専用機と同じ赤い機体となっています。

 このキャスバル専用ガンダムはTVアニメシリーズには一切登場していないので、知らないとファンメイドの機体のように見えてしまうかもしれませんが、れっきとした公式発のモビルスーツの一つです。

◆ゲームにとどまらず活躍していくキャスバル専用ガンダム

『ギレンの野望』をやったことがない人でも既視感を感じることがあるのは、実はこのキャスバル専用ガンダムはゲーム内だけにとどまらない活躍をしていくからです。

 ゲームでの登場以降にプラモデルやフィギュア、果てにはカプセルフィギュアに至るまで、スピンオフ作品が出典とは思えないほど、登場から時を経ても度々商品化の機会を獲得していきます。

 ガンダムに限った話ではないですが、やはり“主人公とそっくりな敵役”は見た目のインパクトが強い一方で生産しやすいという特徴があります。

 立体にしてもデータにしても、大抵先行して制作された主人公のモデルをそのまま流用したり、多少手を加えるだけで済みます。

 そういった点でも本来のガンダムと大半のデザインはそのままで、カラーリングが違うだけのキャスバル専用ガンダムは製作する側からしても都合の良いモビルスーツという見方もできます。こうしてTVアニメには一切登場していないのに、度々露出の機会を与えられるキャスバル専用ガンダムは現在も活躍しています。 

 ここで冒頭の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』に話を戻すと、少しガンダムを齧っている人は今回の新情報でこのキャスバル専用ガンダムが頭を過ぎるわけです。

 ただしキャスバル専用ガンダムとは明らかにデザインも違えば名称も“赤いガンダム”と端的に表現されるのみ。じゃあこの“赤いガンダム”は何なのかという話になってくるわけです。そういった“引き”が今回の新たなキャラクターとモビルスーツを公開したねらいの一つともいえます。

 果たして赤いガンダムやシャアはどう『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』に絡んでくるのか。その答えは劇場にあるわけです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

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