<この記事にはTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>
『ガンダム』シリーズに登場するモビルスーツには、どうしてこのような名前になってしまったのか疑問に感じるユニークなネーミングの機体があります。
アニメ制作現場の切実な状況を現したものからかわいい由来、明らかにとりあえず付けたであろう名前までバリエーション豊かです。
◆原画の仕上がりが遅くてクビになりかける?
『機動戦士Vガンダム』に登場するモビルスーツ、ゲンガオゾは「原画の仕上がりが遅かった」ことが由来となっています。本来の意味からほぼそのままネーミングされているため、それだけ原画が遅いことへのいら立ちがすさまじかったのかもしれません。
アニメの制作現場の実情を現したような名前のゲンガオゾですが、サイコミュを搭載した試作モビルスーツで性能は高いです。ザンスカール帝国特殊機関スーパーサイコ研究所が最初にロールアウトした機体ですが、原画も最初に上がってくるというわけにはいきませんでした。
また、ゲンガオゾには同様のシステムを使っている後継機が存在します。その機体の名前はザンネックで、原画が上がってくるのが遅かったため「クビにするぞ」が由来になっているのではないかという噂です。
デザイナーの石垣純哉氏によると、ザンネックはもともとザンコックという名前だったとのこと。名前があまりにも「残酷」であること、ザンネックという名称のモビルスーツを出したいという要望があったことで変更したそうです。
ザンコックのネーミングもアレですが、ザンネックのほうが名前としては露骨にヤバイ気がします。そう考えるとザンネックにしたいという要望があったのも、原画の仕上がりが遅くて相当ヤキモチしていた可能性もあるでしょう。
「クビにするぞ」がザンネックの由来というのも、まんざら噂だけではないのかもしれません。しかし、モビルスーツの名前にもこのような遊び心が反映されているところも、歴史が長い『ガンダム』だからこそといえるでしょう。
◆森のくまさんをもじったボリノーク・サマーン
『機動戦士Zガンダム』に登場したボリノーク・サマーンの名前の由来は、『月刊OUT』に掲載されたデザイナーのインタビューで明かされています。機体の形状と搭乗するパイロットから童謡『森のくまさん』をもじって名付けられたそうです。
ボリノーク・サマーンの機体はむっくりしたシルエットをしており、熊のフォルムを彷彿させるところがあります。また、搭乗した主なパイロットはサラ・ザビアロフで、女性だったことからメルヘンチック由来のネーミングとなりました。
サラの乗るボリノーク・サマーンは、シロッコ搭乗のジ・Oを守って撃墜されます。「お嬢さんお逃げなさい」といわんばかりにシロッコをかばう姿は、最後の最後まで森のくまさんだったといえるでしょう。
また、『SD戦国伝』に登場するボリノーク・サマーンの武者版の名前は「森之熊参」です。このことから公式でもネタにされていることが分かります。
◆ゲルググ感がまったくないゲルググ
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の第4話では、なんとゲルググという名前のモビルスーツが登場。名前だけ聞けば特に驚きはないネーミングですが、このモビルスーツの見た目はどう考えてもジムでありゲルググ要素は見当たりません。
第4話を視聴したファンもジム系統のモビルスーツだと思っていた人が多く、作中で機体の名前が明かされて驚きの声があがりました。
公式X(旧Twitter)ではゲルググスガイ機とゲルググボカタ機と紹介されていますが、特にスガイ機は赤と白のカラーリングでジムを彷彿とさせます。
ガンダムのデータをもとに開発されたジオン公国軍の正式採用機であり、型式番号はgMS-01です。このことからやはりジム系統のモビルスーツであり、ゲルググ独特の盾やビームナギナタを持っていないのもうなずけるでしょう。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』では1年戦争がファーストガンダムとは異なる結末を迎えているため、より連邦軍の技術やデータがジオン公国に流入していると考えられます。そのため、本来開発されるはずだったゲルググの開発ルーツも変わって、名前だけそのまま付けられたのかもしれません。
◆とりあえず感がすごい戦闘機
『機動戦士ガンダム』シリーズに登場する連邦軍の戦闘機トリアーエズ。その名の通り「とりあえず」が由来となっており、装備や機動力に関しても名前に恥じない性能となっています。
武装は機首にある25mm機関砲2門のみで、モビルスーツが登場してからは当然のごとく戦力として扱われていません。それもあってジムが量産されるまでの間、とりあえず使われていたのではないかとネタにされています。
また、『ガンダム』シリーズにはモビルスーツを載せて運ぶサブフライトシステムという機体があります。そちらのネーミングもとりあえず感がすさまじく、『機動戦士ガンダム』のドダイ系の機体は土台、『機動戦士Ζガンダム』のゲターは下駄が由来。
さらに『機動戦士Vガンダム』のセッターは雪駄、『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』にいたってはノッセルと、もうモビルスーツを載せる機能そのままの意味となっています。
多く登場するモビルスーツの名前を考えるのも大変でしょうから、戦闘機やサブフライトシステムについては思い切りとりあえず感が出てしまっているといえるでしょう。
──『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』は違う結末を迎えた一年戦争という世界線だからこそ、ジム仕様のゲルググというとんでもない機体が誕生。これは『ガンダム』ファンにとっても予想外のネーミングであり、今後もおもしろい由来を持つモビルスーツの登場に期待がふくらみます。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
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