<この記事にはTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の最新話までのネタバレが含まれます。ご注意ください。>
『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX(ジークアクス)』(以下、『ジークアクス』)の舞台は一年戦争が終わったあとですが、いわゆるファーストガンダムの歴史とは異なるifストーリーです。
そのため、本来の歴史が変わる要因や設定の変更も多くあり、コアなガンダムファンなら気になってしまうタイムパラドックスが生じています。
◆特殊性が極まる『ジークアクス』
U.C.0085が『ジークアクス』の舞台となっていますが、ifストーリーとなっているのが特徴です。『新機動戦記ガンダムW』や『機動戦士ガンダムSEED』などこれまで宇宙世紀とは異なる世界観を持つ、いわゆるアナザーガンダムと呼ばれるものもありましたが、パラレルワールドという要素はかなり特殊といえるでしょう。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に続いて女性主人公を採用していること、深夜枠での放送は『ガンダム Gのレコンギスタ』以来10年ぶりとなっていることもレア要素です。また、映画による先行公開からTVアニメの本放送が始まっており、『ガンダム』シリーズでも特殊性が際立っています。
その中でも、やはりチャレンジ的かつ独特といえるのがifストーリーです。ジオン公国が一年戦争に勝てた理由となる、歴史を変えた要素とはいったいどのようなものなのでしょうか。
◆シャアがガンダムの強奪に成功
本来アムロが乗るはずだったガンダムですが、『ジークアクス』ではシャアが強奪に成功。RX-78ガンダムはモビルスーツの開発に遅れをとっていた地球連邦軍の試作機のため、それを奪われて運用データを収集できなくなったことで一年戦争の流れが大きく変わります。
本来の歴史ならば、V作戦から地球連邦軍の主力となるジムが大量生産される流れとなって盛り返していく構図です。しかし、ガンダムを奪われてしまっては、もともとモビルスーツ開発に遅れていた地球連邦軍になす術はないでしょう。
この結果、ジム仕様のゲルググ スガイ機やボカタ機が生まれるなど、ジオン公国にガンダムによって得られたデータが流量されていくことに。ガンダムを奪われたことが地球連邦軍にとって大きな痛手となったこと、それによってジオン公国のモビルスーツの開発ルーツが変わった点については必然の流れといえるでしょう。
◆ビグ・ザムの量産に成功
一年戦争の歴史が変わったもう一つの大きな要因として、ジオン公国がビグ・ザムの量産に成功したことが挙げられます。
ジオンのモビルアーマーは大量生産に向いておらず、そのうえアムロに次々と撃破されていったわけですが、ビグ・ザムが量産化がジオン公国の勝利を決定的なものとしました。
これはファーストガンダムでのドズル・ザビのセリフ、「ビグ・ザムが量産の暁は、連邦なぞあっという間に叩いてみせるわ」を実現した形となります。ビグ・ザムの火力は、アムロに圧倒的だといわしめるほどのもの。
実際にソロモン内に侵入した多くのジムやボールを大型メガ粒子砲でほふりました。このような圧倒的な攻撃力を持つモビルアーマーを大量生産されたら、たまったものではないでしょう。
『ジークアクス』では、大量生産されたビグ・ザムの活躍でジオン軍が連邦の要塞ルナⅡを陥落させます。この強烈な歴史変更は、一年戦争の結末を変えるに十分なインパクトといえるでしょう。
◆ガンダムファンがモヤモヤするタイムパラドックス
ジオン公国が一年戦争に負けた大きな要因は冷却装置を小型化するのに苦戦して、モビルスーツにビーム兵器を装備できなかった点です。
その結果、大型のモビルアーマーの開発に力を入れることとなったわけですが、『ジークアクス』でビーム兵器を搭載したRX-78ガンダムを強奪できたのなら、ビグ・ザムの量産という未来に進まなかったのではないかというタイムパラドックスが生まれます。
ガンダムがあれば本来の一年戦争の地球連邦軍と同じように、量産したジムが主力となっているはずです。実際にジム仕様の
ゲルググ スガイ機やボカタ機が生まれており、ジオン公国軍の正式採用機となっています。
そのため、奪ったガンダムを参考にしたものの、冷却装置の小型化ができなかったということは考えられないでしょう。いわゆるバタフライ効果によって、その後のジオン軍の方針やキャラクターの考え方、行動にも変化が生まれているはずです。
モビルスーツにビーム兵器を装備できるなら、ビグ・ザムをはじめとしたモビルアーマーの開発が盛んになることはなかったと考えられます。単純にドズルの好みでモビルアーマーの開発がなされたのかもしれません。
しかし、ソロモン攻防戦にビグ・ザム1機しか送って来なかったギレンに対して、彼は「戦いは数だよ兄貴!」と発言。このことから戦争において数を重要視していたことは明らかです。
そのため、ドズルがモビルスーツよりモビルアーマーの開発を優先するとは思えません。ただ、早い段階からモビルアーマーを量産するだけの莫大な資金に目処がついていたら話は別でしょう。
モビルアーマーの火力は圧倒的ですが、巨大なため生産にお金がかかります。しかし、量産できるだけの資金や部品を調達できるなら、モビルスーツよりモビルアーマーを生産したほうが戦力として脅威となることは間違いないです。
ビグ・ザムを量産した資金をどこから持ってきたのかは謎であり、『ジークアクス』のifストーリーにはまだあっと驚く歴史の変更があるかもしれません。そして、ガンダムファンが気になるタイムパラドックスを解消してくれる設定が、今後制作秘話といった裏話で明かされればさらに作品を楽しめるでしょう。
──ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』では、異なる歴史のルートを選べました。そこではシャアの乗る機体として赤いキャスバル専用ガンダムも登場しており、当時ゲームをプレイしてワクワクさせられたファンも多いでしょう。『ジークアクス』のifストーリーからも『ガンダム』シリーズの可能性がまだまだ広がっていくことを感じさせられます。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
※サムネイル画像:https://www.gundam.info/feature/gquuuuuux/story/4/
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