<この記事にはTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>

 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』(以下、『ジークアクス』)は、『ファーストガンダム』とは異なる歴史となっていますが、ストーリーも視聴者の予想を裏切る展開が多いことで話題となっています。その思いがけない物語の流れやキャラの行動とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

◆アマテとニャアンがマヴにならないまさかの展開

 『ジークアクス』のモビルスーツ戦では、2人1組で戦うM.A.V.戦術(通称、マヴ)がキーポイントとなっています。やりたいことがなく漫然と日々を過ごす女子高生アマテとお金を必要としているニャアン。彼女らがマブとしてクランバトルで戦い、自分たちの道を見つけていく展開を予想する視聴者が多い中、物語は思いがけない方向へ進みます。

 アマテは部屋にクラゲのイラストや写真を飾ったり、クラゲマークのある私物を持っていたり。さらには、進路希望にも「くらげ」と書くくらい好きなようです。

 地球に行きたがっているのも海を見たいという願望があり、コロニーでも泳ぐわけでもないのに水着で過ごすシーンがあるほど。一方のニャアンは理由は不明ですが、お金を稼ぐために違法の運び屋をしています。

 2人が出会うことで物語は始まっていくのですが、このあたりの背景は一向に深掘りされていきません。アマテが進路希望について、よく母親とケンカをしているシーンが描かれている程度です。

 エンディングではアマテとニャアンが、仲良く楽器を弾いたり踊ったりしているシーンが続きます。そのため、『リコリス・リコイル』の錦木千束と井ノ上たきなのように、私生活と戦いを通して絆が深まっていくストーリーを予想した視聴者も多いでしょう。

 ところがアマテとニャアンのバックグラウンドが語られることはなく、今のところマヴとして戦うこともありません。そのため、2人の目的がはっきりしないままストーリーが進んでいくことなります。

 アマテとニャアンの関係やバックグラウンドの代わりに描かれていたのが、赤いガンダムに乗るシュウジとの関係です。シュウジと一緒にいる時間は短いですが、彼女らは突如現れた彼に急速に惹かれていくことになります。

◆前代未聞の無気力系ガンダムパイロットを取り合う三角関係

 アマテやニャアンの乗るジークアクスとマブを組んで戦ったのは、赤いガンダムのパイロットである無気力系キャラクターのシュウジでした。アマテとニャアンは思っていたほど仲良くはならず、彼女らは目的どころか何を考えているかイマイチ分からないシュウジと急接近して三角関係のような展開になります。

 歴代のガンダムのパイロットといえば正義感が強かったり、上官に歯向かったり熱いキャラクターが多かったです。しかし、シュウジは主体性のない無気力系キャラクターで、口グセは「ガンダムがそういっている」です。

 そのため、ガンダムの意志に従って行動しているようなところがあり、シュウジ自身が何を目指しているのは不明。彼のバックグラウンドも描かれていないため、アマテやニャアン以上に得体の知れない存在となっています。

 そんなシュウジはアマテとニャアンにとって特別な存在となるわけですが、その気持ちが憧れなのか恋心なのかはまだはっきりしていません。ただ、彼の前で大胆に服を脱いで下着姿になるくらいですから、2人とも好意を持っているのは確かでしょう。

 また、ニャアンがジークアクスに乗ってシュウジと一緒に戦ったとき、アマテはジェラシーを露わにしていました。このことからシュウジにかなり執着していることが分かりますが、この3人の三角関係を生んでいる鍵となるのがキラキラです。

◆アマテもニャアンもキラキラを感じたい

 『ジークアクス』のもう一つのポイントとしてキラキラというワードがあり、これはニュータイプが特殊な知覚によって感じる現象のようです。まだ謎が多いものの視聴者が思っていた以上に作品の中核をなす要素のようで、アマテとニャアンはキラキラ依存症の状態となってまるで現実逃避するような展開となっています。

「シュウジはどこ!? ガンダムは!? シュウジがいないと、キラキラになんないよ!」というアマテのセリフから、キラキラは赤いガンダムもしくはシュウジがいてこそ生じるようです。これがアマテやニャアンが、短期間で異様にシュウジに執着するようになった理由でしょう。

 ただ、強化人間のドゥー・ムラサメはシュウジと関係なく、キラキラの存在を認識できる模様。そのため、ニュータイプ能力が一定を超えればアマテやニャアンも単独でキラキラを感じられるようになるのかもしれません。

 いずれにせよ現在のアマテにとってシュウジは、自分の生活になかったキラキラを与えてくれる存在であることは確かです。視聴者はこのキラキラを体験できないためどのようなものか感じ取りにくいですが、アマテたちにとってはとてつもなく重要なものとなっています。

 その結果、アマテはシュウジと地球に行くためにアンキ―のお金を盗んだうえ、彼女に向けて発砲。さらには軍警から追われることになり、テロリストとして指名手配されます。

 キラキラ中毒となった彼女は男のために身を崩して、犯罪に手を染めて行くという最悪の行動をとってしまいました。このあまりに予想外の展開に視聴者は、「このくらい尖っているほうが記憶に残る」「歴代のガンダム主人公のなかでも突っ走り過ぎている」と話題沸騰。

 これまでの『ガンダム』シリーズでは戦争に巻き込まれて、望む望まないに関わらず主人公が戦いに巻き込まれていくパターンが多かったです。しかし、『ジークアクス』では既に戦争が終わっており、アマテは自分のためだけに行動しています。

 しかし、彼女の地球へ行くという計画は失敗してアマテはシャリア・ブルに助けられ、シュウジは赤いガンダムとともに行方不明。ニャアンはキシリアのもとで保護されることになりました。

 バラバラになった彼女らが今後どう絡んでいくことになるのか、キラキラ依存症がどうなっていくのかが見どころといえるでしょう。さらに視聴者の予想を裏切るストーリーが展開されていく可能性もあり、アマテの無鉄砲な性格がどのような行動につながるのかも楽しみなところです。

◆黒い三連星が素人に負ける

 一年戦争後に落ちぶれたガイアとオルテガはジャンク屋をやっており、ポメラニアンズとのクランバトルで敗れてしまいます。マッシュがおらず二連星だったとはいえ、本来の歴史ではアムロがマチルダの犠牲のうえ倒した彼らを初めてモビルスーツに乗るニャアンが1人で倒す展開に視聴者はド肝を抜かれました。

 『ジークアクス』では『ファーストガンダム』と違う歴史となっていますが、黒い三連星は一年戦争で活躍していたと思われます。マッシュがウーセン市長になれたのも、戦場で得た名声があったからでしょう。

 軍に残ったガイアとオルテガもそれなりの地位を得ていたと思いますが、マ・クベによって免職されて落ちぶれてしまいました。そのため、クランバトルに参戦して暮らしていたわけですが、彼らが敗れることを予想していた視聴者は多いでしょう。

 しかし、敗れる相手は赤いガンダムを操るシュウジとオメガ・サイコミュを搭載するジークアクスをいきなり起動させてみせたアマテだと思っていたはず……。2人はクランバトルの戦いで勝利し続けていましたから、ガイアとオルテガが彼女らに負けたとしてもそれなりに説得力はあったでしょう。

 ところが黒い二連星との戦いは予想外の展開となり、ジークアクスにはアマテではなくニャアンが搭乗。シュウジは赤いガンダムで出撃するも、体調不良のためまったく戦力になりませんでした。

 そのため、素人の動き丸出しのニャアンが1人でガイアとオルテガを撃破することに。これまでモビルスーツを乗りこなせる適性や、その予兆すら見せていなかったニャアンのいきなりの大活躍にド肝を抜かれた視聴者も多かったことでしょう。

 

 ──キラキラを感じたりジークアクスをいきなり操縦してみせたり、特別なセンスを持っていると思われるアマテとニャアン。そのような特殊な存在が見せるバトルセンスや突拍子もない行動を凡人が予想できない、理解もできないのは当然なのもしれません。

〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488

《諫山就》

アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』キービジュアル

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