<この記事にはTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>

 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』(以下、『ジークアクス』)が、ついに最終回を迎えました。

 シリーズ作品を継続させていくには、いかに過去シリーズのファンに持続して応援してもらいつつ、新たなファンを獲得していけるかにかかっています。そんな中、それを“試みた”作品として『ジークアクス』は興味深い一例です。

◆毎週用意されたサプライズ! リアルタイムで楽しませる『ジークアクス』

 かつてのシリーズ作を現代の技術を使ってリメイクしたり、シリーズの続編を製作したりするというシリーズの新機軸の例は数多ありますが、『ジークアクス』はそれらとは違って、かつてのシリーズの物語を大幅に改変するという大きく踏み込んだ方法を取っています。

 なんといってもかつての主人公が不在で、そのポジションには立場を相対していたライバルキャラクターが居座るという大胆な改変を行なったのだから、本来であれば非難轟々となってもおかしくありません。

 ただ、そこはさすがに歴史の長い『ガンダム』シリーズのアドバンテージ。既にいくつものメディアミックスを経て、いわゆる“正史”となっていた物語を改変する前例が大小複数あったこともあり、「なんてことを」という声よりも「そうきたか」と思わせやすい背景が功を奏しています。

 しかも、ここまではTVアニメの放送前に公開した劇場版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』で用意していた仕掛けです。

 TVアニメシリーズではさらにここからさらなるサプライズをいくつも用意しています。それは物語のスピード感であったり、これまでにまだ登場していなかったキャラクターの再登場であったり、『機動戦士ガンダム』だけでなく後続のシリーズの登場キャラクターが出てきたり。 毎週、毎週、感想を述べたくなるような仕掛けがいくつも用意してあり、SNS上ではその発見や感想、今後の考察、さらには二次創作などの共有が活発に行われました。

 映像配信サービスが活発に利用される中、リアルタイムで最新話を追いたくなるような環境が整うことになったのは、どこまでねらい通りだったのかは分かりませんが大成功だったといえます。

◆新規ファンには届くのか? ガンダム初心者にも届く仕掛け

 それだけなら往年のガンダムファン……、しかもマニアックになるほどコアなファンだけが楽しめるコンテンツになってもおかしくなかったのですが、『ジークアクス』の見事なところは完全新規の主人公や周囲の人物をメインに物語を進めているところにあります。

 マチュ、シュウジ、ニャアンという今作で完全に新規で生まれたキャラクターが主軸となっているので、これらのキャラクターに関しては往年のファンとガンダム初心者のどちらもがまったくゼロの状態から同じように放送を追っていけます。

 ディテールでは「実はこういう背景があって」とか「元ネタがあって」とかネタをいくつも作中に仕込んではいながらも、それらを知らなくても楽しめるようにできているのは大きいです。

 本編中にはマチュ以外にもシャアやシャリア・ブルの視点の物語も描かれつつ、それらのパートは音やキャラクターデザインなどで明らかに別物として描いています。そのおかげで詳しく知らないという人も「ここは別物」と目を逸らしやすいようにできているのは、ある意味で親切です。

 前述のようなSNSの効果も大きく、詳しい人が率先して解説などを発信してくれるので、シリーズに詳しくない人も放送直後から気軽に作り込まれた部分や詳しくないと気づけない部分にも触れやすい環境になっていたのも、良い効果をもたらしています。ファンの規模がもともと大きいこともあり、どう面白いのかが波及しやすかったのも『ジークアクス』の強みでしょう。

◆いかにシリーズ作品を後世に残していくかはカラーに学べる

 従来のファンと新規ファンのどちらも楽しませようという企画は、昨今のリメイクアニメーションシリーズの数が飽和していることからも流行しているのは明確です。

 しかし、単純にかつての感動をリフレインさせるよりも『ジークアクス』のように往年のファンと新規のファンのそれぞれに新しい面白味が感じられる部分を用意できることは、ほかの作品も前例として見習っていくべきことでしょう。

 今回の『ジークアクス』が海外では日本ほどのファンの熱意を帯びてないことなどから、『ガンダム』というシリーズ自体が日本では相当なファンダムを形成しているから『ジークアクス』の人気が成立したという見立てはできるかもしれません。しかし海外に関してはこれから日本と同じようなファンダムを築いていけばいいだけの話。

 こと日本に関しては、いかにシリーズ作品を後世に残していけるかという問いかけに対して、『ゴジラ』、『ウルトラマン』、『仮面ライダー』、そして『ガンダム』とヒットの前例を残している株式会社カラーの戦略に学べることは多いのでしょう。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:Amazonより 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』キービジュアル


機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト
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