『SDガンダム』には、『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーに酷似したキャラなど、さまざまな作品の明らかにパロディだと思われる機体がいくつも登場します。
少し前には、TVアニメ『ダンダダン』でのパロディに関する問題が大きな話題となりました。おおらかだった昭和の時代から現代まで駆け抜けてきた『ガンダム』シリーズですが、過去にはより大胆なパロディが展開されていました。
◆全シリーズ一貫して『六神合体ゴッドマーズ』のパロディ!?
<機甲神エルガイヤー>
<画像引用元:『魂ウェブ』公式Webサイトより 『「元祖SDガンダムワールド 機甲神エルガイヤー」(メーカー:バンダイ) ©創通・サンライズ』>
1981年に放送され、人気を博したロボットアニメ『六神合体ゴッドマーズ』(以下、『ゴッドマーズ』)ですが、『SDガンダム外伝 ナイトガンダム物語』(以下、『ナイトガンダム』)第4作では、本作をオマージュした設定やストーリーが展開されていました。
主人公の神秘騎士ネオガンダムは機兵と呼ばれるロボットに搭乗して悪と戦いますが、その機兵の名は「機甲神エルガイヤー」でした。
そして、『ゴッドマーズ』の主人公・明神タケルが乗るゴッドマーズの核となるロボットの名前もガイヤーです。両者は名前が似ているだけでなく、カラーリングも同じ真紅を基調とするなど、複数の共通点が見られます。
さらには、主人公が窮地に陥ると敵陣営に潜入中の双子の兄が助けに来るという共通の展開もあり、二作品が酷似していることは否めません。
著作権の観点からは大胆な内容ですが、エルガイヤーなどが2024年8月に玩具として発売されるなど商品化は続いているため、権利元から問題視されることはなく、展開が続いているようです。
◆マーベル作品のパロディも!? 恐るべし『ナイトガンダム』
『ナイトガンダム』シリーズでは、ほかにもオマージュしたキャラクターが登場します。
『ナイトガンダム』第6作目である「黄金神話」ではマーベル作品をパロディした敵キャラクターが複数体登場しています。
その一例が「異能戦士 ゴッゾーラ」です。『機動戦士Vガンダム』に登場するモビルスーツ・ゴッゾーラをモチーフとした戦士ですが、元の機体に比べて頭部の二対のアンテナは大きく、異様な印象を与えます。
さらに両腕には、元機体でビームローターが装着されている部分から爪のような刃が複数本飛び出しています。
そのシルエットは『X-MEN』シリーズのウルヴァリンに酷似しています。カラーリングも、ゴッゾーラより黄色の部分が多く、黒と黄色を基調としたウルヴァリンのコスチュームを強く意識したデザインです。
この異能戦士はほかにも数体存在し、サイクロップスを彷彿とさせる「異能戦士オクトゾリディア」や、カードに書かれたセリフまでスパイダーマンらしさがあふれる「異能戦士RFグフ」など、マーベル・コミックお馴染みのキャラクターを思わせる面々が登場します。
しかしながら、マーベルから許可を得ていたかは不明であり、危ない橋を渡って制作された機体なのかもしれません。
◆『スター・ウォーズ』まんまの敵キャラも!?
アーノルド・シュワルツェネッガー氏の代表作の一つ『コマンドー』をモチーフにしたコマンドガンダムが主人公の一人を務める『SDコマンド戦記』。そのシリーズ3作目である『SUPER G-ARMS』でも、大胆なキャラクターが登場します。
主人公もハリウッド映画をモチーフとする本シリーズでは、敵対勢力であるコスモザタリオン帝国にも別の映画を元ネタにしたキャラクターが登場します。
そのキャラクターが「ダースベルガ」。黒の部隊の隊長を務める彼は、部隊名の通り『機動戦士ガンダムF91』にてザビーネ・シャルが駆るベルガ・ギロス(黒の部隊仕様)をベースにしたキャラクターです。ガスマスクを想起させる顔立ちはベースのキャラクターそのままですが、名前も含め、明らかに『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーを意識した意匠が見受けられます。
著作権上、際どいと思われるダースベルガですが、ベース機体が元々ダース・ベイダーと似ていたため、特に問題にはなっていないようです。しかし、名称について許可を得ていたのかは不明です。
◆タツノコプロのあの作品まで!?
『SDコマンド戦記』の第4作「グレートパンクラチオン編」では、前作の戦いの末に主人公の一人であるキャプテンフォーミュラー91が別の銀河へ転移し、それまでの軍事仕立てのストーリーから宇宙一の強者を決める格闘大会へと舞台を移すという驚きの展開を見せます。
「グレートパンクラチオン」と呼ばれるその格闘大会には、さまざまな猛者が最強の名を求めて参加しており、その一人に銀河貴公子シルバクラスターというキャラクターがいます。
このシルバクラスターは、額の部分にある独特の縁取りからモチーフになった機体はガンダム試作3号機ステイメンであることがうかがえます。しかし、作中では「宇宙の騎士」と呼ばれており、『SDガンダム』としては珍しいスレンダーな体つきや、両端に刃が付いた槍を武器とするなど、知っている人が見れば、タツノコプロの『宇宙の騎士テッカマン』(以下、『テッカマン』)を連想させるデザインです。
作中で「宇宙の騎士」と呼ばれていることからも、『テッカマン』がモチーフであることは間違いないでしょう。
30年以上前に登場したキャラクターであり、現在は玩具展開などもされていないため、もしかすると権利上の問題があったのかもしれません。
──このように、大胆なパロディを多く含んでいた『SDガンダム』シリーズですが、さまざまな派生作品を生み出し、挑戦的な取り組みがあったからこそ、『ガンダム』シリーズ自体の存続に寄与したことは間違いないでしょう。
『SDガンダムワールド ヒーローズ』では、歴史上の偉人をモチーフにしたガンダムたちが登場し、プラモデル化やTVアニメの放送といったメディアミックスが展開され、現代のちびっ子たちの『ガンダム』への入り口という立ち位置を担っています。
〈文/鮎喰川ほとり 編/相模玲司〉
※サムネイル画像:『魂ウェブ』公式Webサイトより 『「元祖SDガンダムワールド 機甲神エルガイヤー」(メーカー:バンダイ) ©創通・サンライズ』