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 『機動武闘伝Gガンダム』(以下、『Gガンダム』)を語るとき、ファンの間で必ず話題になるのが「なぜネオドイツが忍者なのか?」という疑問です。シュバルツ・ブルーダーの存在は、当時の視聴者に強烈なインパクトを与えましたが、彼の使う「ゲルマン流忍術」の正体とはいったいどのようなものだったのでしょうか?

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各国流派の中で浮く“ドイツ忍者”の異質さ

 『Gガンダム』では、ネオフランスはフェンシング、ネオアメリカはボクシング、ネオチャイナは少林拳といった分かりやすい組み合わせが多く見られました。しかし、ネオドイツだけは「ゲルマン流忍術」というまったく異質な設定でした。

 サンライズ公式Webサイトの『Gガンダム』作品紹介ページでは、シュバルツ・ブルーダーについて「ゲルマン流忍術の使い手で、手裏剣や隠れ身などさまざまな術を駆使し、隠密行動も得意」と紹介されています。

 しかし、その「隠密行動」の実態は独特です。木にしがみついて現れたり、地面から浮上したり、建物の壁を透過したりと、もはや忍術の域を超えた超常現象のような描写が続きます。

 ドイツ国旗カラーの覆面をかぶった大柄な男が木に張り付く姿は、隠密性よりもインパクトを重視した演出であり、その奇抜さは視聴者を驚かせました。

 実際、シュバルツにあのような登場をされては、ドモンも深刻な話に集中できなかったでしょう。「修行が足りんぞ、ドモン!」といった格言めいた指導も、木から現れる覆面の男に言われては説得力が半減してしまいます。これこそが『Gガンダム』らしい「真面目にふざけている」演出の真骨頂といえるでしょう。

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本編におけるシュバルツの正体──""としての忍者性

 ネオドイツ代表シュバルツ・ブルーダーは、覆面の忍者戦士として登場し、ドモンを導く存在でした。その正体は、デビルガンダムに取り込まれたドモンの兄・キョウジの精神から生まれた擬似人格であり、まさに「影武者」そのものです。

 バンダイから20028月に発売されたプラモデル「MG 1/100 ガンダムシュピーゲル」の組立説明書では、シュバルツに関する詳しい設定が解説されています。

 それによると、本物のシュバルツ・ブルーダーはデビルガンダムとの戦闘で死亡しており、「キョウジは彼の遺志と肉体と技能を継承し、自らの記憶と思考を転化した」とされています。DG細胞により作られたアンドロイドでありながら、本物シュバルツの要素を受け継いだ存在として描かれているのです。

 第44話でドモンが「あんたは兄さんだ!」と叫ぶ感動的なシーンは、忍者らしい“影”の役割を象徴的に描いています。忍者は「闇に潜む者」「変わり身の使い手」としても語られる存在です。シュバルツがキョウジの罪を背負い、ドモンを成長させる影であったことから、「忍者」というキャラクター像は物語と自然に結びついていたのです。

 物語の終盤、シュバルツはドモンの身代わりとなって消えていきます。この「変わり身の術」は、文字通り弟の身代わりとなることで兄の愛を示した、最後の忍法でもありました。

外伝『英雄変生』が明かしたゲルマン流忍術の起源

 2024年の30周年を記念して公開された、今川泰宏総監督書き下ろしの外伝『機動武闘伝Gガンダム外伝 英雄変生』。その第6話(2024111日公開)では、アニメでは描かれなかったシュバルツ・ブルーダーの過去が明かされています。

 外伝では、双子のブルーダー兄弟が幼少期から「忍者ごっこ」に夢中なり、やがてそれを本格的な武術として体系化していく過程が描かれます。弟ブルーダーが「兄さんはスポーツに長けている! 僕は得意の科学で忍者の術を研究する!!」と提案し、体術(兄)と科学技術(弟)を組み合わせた独自の武術として「ゲルマン流忍術」が誕生したのです。

 ステルス機能などの高度な技術も、科学者となった弟が発明したものとされており、子供のころの夢を本気で追求し、科学と体術を融合させて完成させたという熱い背景が、30年の時を経て明かされました。

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“変わり身の術”がつないだ本編と外伝

 外伝第6話の「〜回想〜シュバルツ・ブルーダーの誕生」の章では、決定的なシーンが描かれます。東方不敗との戦いで致命傷を負った本物のシュバルツが、死の間際にキョウジへ忍者マスクと軍服コートを託すのです。

 シュバルツは「これでお前はシュバルツ・ブルーダーになれる!!  最後のゲルマン忍法、変わり身の術だ」と語り、キョウジは「今日から私はネオドイツのガンダムファイター! シュバルツ・ブルーダーだ!!」と宣言します。

 この外伝の描写は、2002年のMG説明書にある「遺志と肉体と技能の継承」という設定を、より具体的に補完するものとなっています。本物のシュバルツから名と装束を継承したキョウジが、その技術と精神を受け継いでドモンの前に現れた──。本編と外伝が見事につながる瞬間です。

遊び心と本気度が生んだ「ゲルマン流忍術」

 「ドイツが忍者?」という突飛な設定は、一見すると奇抜に映ります。しかし、2002年のプラモデル説明書では「遺志と肉体と技能の継承」という背景が示唆され、さらに2024年の外伝では、双子の兄弟が科学と体術で生み出した独自武術であること、その名と装束がキョウジへ託された経緯が具体的に描かれました。

 30周年記念の外伝で明かされた「本物のシュバルツからの継承」という設定により、ゲルマン流忍術はたんなるコミカルな設定ではなく、物語の核心部分を支える重要な要素だったことが明らかになりました。

 

 ──突拍子もないアイデアを徹底的に作り込み、最後は作品世界の深みに変えてしまう──。ゲルマン流忍術とは、そんな『Gガンダム』らしい遊び心と本気度の象徴だったのです。30年を経た今も語り継がれるこの設定は、『Gガンダム』という作品の魅力を凝縮した存在といえるでしょう。

〈文/コージ 編集/相模玲司〉

 

※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「機動武闘伝 Gガンダム」第5巻(販売元:バンダイビジュアル)』

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