<PR>
<PR>

 映画『機動戦士ガンダムF91』(以下、『ガンダムF91』)の主人公機F91ですが、実は本機の開発コードに、ガンダムの名は含まれていません。それどころか、サナリィが開発した機体の中に、ガンダムの名を冠した機体はほぼ見られません。それは連邦が「ガンダム」という名前に抱く悪印象と、アナハイム・エレクトロニクス社の存在が大きく影響していると考えられます。

<PR>

◆アナハイムが築いたガンダム神話とその崩壊

 『ガンダムF91』の劇中にて、F91は「ガンダム」と呼ばれています。それは、F91の顔を見たレアリー・エドベリが、「昔ガンダムと呼ばれていたMSに似ているから」という理由で命名したためです。

 そのため、F91のガンダムはあくまで愛称で、開発コードに与えられたものではありません。ではなぜ、誰が見てもガンダムらしい機体であるにもかかわらず、サナリィはF91にガンダムの名を与えなかったのでしょう?

 まず、1つ目の理由として、サナリィのライバル企業アナハイム・エレクトロニクス社の存在があります。アナハイムは一年戦争後、連邦の「ガンダム開発計画」へ参加したことを皮切りに、地球圏のモビルスーツの開発・製造を一手に担ってきました。

 そうして製造されたアナハイム製のモビルスーツには、ガンダムの名を持たない機体も多く存在します。それでも、アナハイムの最新鋭技術を搭載して開発された多くの機体に、ガンダムの名前が与えられていました。そして、グリプス戦役からマフティー動乱まで、多くの戦乱で活躍し、その名を轟かせています。

 そのため、いつからかガンダム=アナハイムという図式が、世間に浸透していったのでしょう。事実、漫画『機動戦士ガンダムF90FF』第6巻(出版社:KADOKAWA)では、技術者たちの間では、ガンダムとはアナハイムの技術の象徴と認識されています。

 しかし、宇宙世紀110年前後から、連邦の軍縮路線が始まります。これにより、連邦は費用を抑えられる、小型モビルスーツの開発をアナハイムに要請しました。しかし、アナハイムのヘビーガンは、連邦の要求したスペックを満たすものではありませんでした。

 そんな情勢で台頭してきたのが、連邦直轄の兵器研究・開発機関であるサナリィです。そして、宇宙世紀111年に行われたコンペで、見事サナリィのF90がアナハイムのMSA-120を下し、正式に採用されます。これにより、アナハイムの天下は終わり、サナリィがモビルスーツ開発の中心を担うようになりました。

 これが、モビルスーツの歴史から、ガンダムの名前が減少していく一因になったと考えられます。

<PR>

◆サナリィにとっては商売敵の主力商品

 先述した通り、数々の戦乱を経てガンダムという名前は、アナハイムを象徴する機体というイメージが強まっていました。

 つまり、サナリィからすれば、ガンダムとはライバル企業の主力商品名ということです。そのためか、『機動戦士ガンダムF90FF』第6巻でサナリィの中には、F90をガンダムと呼びたがらない人もいると記述されています。

 開発コードとは、企業にとって商品名のようなもの。そこに、ライバル企業を象徴するような名前を、わざわざ使おうとするのでしょうか? そう考えると、F91がどれほどガンダムと似ていても、開発コードにガンダムを含めなかった理由が理解できるでしょう。

 また、サナリィがガンダムを開発コードに含めない理由は、ガンダムの運用形態も強く影響しています。

 小説『機動戦士ガンダムF91 クロスボーン・バンガード() 』(出版社:KADOKAWA)によると、サナリィの開発チーム内では当初、F91にガンダムという愛称をつける案もあったと記述されていました。

 しかし、ガンダムには正規軍から外れた部隊が運用するモビルスーツという印象がありました。そのため、サナリィのような、軍の正規の開発研究チームが受け継ぐには相応しくない名前として却下されたようです。

 つまり、サナリィとしては、Fシリーズを軍の正式採用機として開発したにもかかわらず、正規軍に避けられるモビルスーツの名前を与えるのは、不吉であるという感覚もあったのでしょう。

<PR>

◆連邦政府にとってガンダムは忌まわしい存在

 サナリィにとって、ガンダムは印象が悪い兵器名でした。また、連邦政府にとっても、ガンダムは忌むべき存在となっています。

 事実、小説『機動戦士ガンダムハイ・ストリーマー 2 クェス篇』(出版社:徳間書店)によると、連邦政府の中にはガンダムを核兵器と同じように考える者もいると記述されています。そのため、Zガンダムを始めとしたガンダム系のモビルスーツは連邦の管理下で、秘匿措置が行われているようです。

 その理由としては、ガンダムとニュータイプが切っても切れない関係にあったためと考えられます。連邦政府は常々ニュータイプによる反乱を恐れていました。事実、小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ()』(出版社:‎ KADOKAWA)によると、ケネスはブライトが軍に縛られているのは、ニュータイプによる反乱があった場合、盾にする意図もあったと語っています。

 それほど、連邦政府はニュータイプによる反乱を恐れ、その対策を講じていました。歴代ニュータイプとともにあったガンダムの秘匿措置も、その一環だったと考えられます。

 連邦とサナリィのガンダムに対する心象を踏まえると、「ガンダム」という名のモビルスーツが減少していったのは自然なことではないでしょうか。

 

 ──時代の流れにのまれ、ガンダムの名は開発コードから徐々に消えていきました。しかし、たとえ開発コード上になくとも、その名前を呼ぶ人は後を絶ちません。それこそが、ガンダムが特別なモビルスーツである最大の理由ではないでしょうか。

〈文/北野ダイキ〉

 

※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG ガンダムF91」 (C)創通エイジェンシー・サンライズ』

<PR>
<PR>

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.