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 『ガンダム』シリーズではこれまで数々の名セリフが生まれており、特にアムロやシャアなど能力の高いキャラクターが発する言葉には重みと説得力があります。

 戦争やモビルスーツ戦という生きるか死ぬかの極限状態にあることも多いため、そういうものかと普通に聞き流してしまいがちです。しかし、よくよく振り返ってみるとムチャ振りが過ぎるとツッコミたくなるとんでもないセリフもたびたび飛び交っています。

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◆ムチャ振りの権化ブライト

 『ガンダム』シリーズのムチャ振りキャラといえば、ほんの少し前までただの民間人だった15歳のアムロを叱咤激励するブライトを思い浮かべる人が多いでしょう。緊急事態で流されるままガンダムで戦ったというだけで、軍人としての重すぎる責任を負わせるアムロへのムチャ振りは数知れません。

 ブライトのアムロへのムチャ振りは、第2話「ガンダム破壊命令」からいきなりエンジン全開。「甘ったれるな! ガンダムを任されたからには貴様はパイロットなのだ」とアムロに有無を言わせず、地球連邦軍の切り札となるモビルスーツを任せるという重圧をかけます。

 ブライトの口うるささは、第3話「敵の補給艦を叩け!」でも本領発揮。アムロはシャアが指揮する補給中のムサイに奇襲をかけるときに、自分たちが太陽を背にして攻撃できるように回り込みました。

 このアムロの機転には、コア・ファイターで一緒に出撃したリュウも感心していました。しかし、ホワイトベースに戻って来たアムロに対して、ブライトは回り込み過ぎだとか立ち向かい方を考えろと戦い方にも口を出して来ます。

 この理不尽なセリフに対してアムロがリュウに「僕ホントにあの人を殴りたくなってきた」と愚痴を漏らすのも仕方ないでしょう。

 しかし、第9話「翔べ! ガンダム」では逆にアムロがブライトに殴られ、抗議の声を挙げると「殴ってなぜ悪いか! 貴様はいい。そうして喚いていれば気分も晴れるんだからな」と散々なことを言われてしまいます。

 このようにブライトからムチャ振りや理不尽な仕打ちばかりされていたアムロ。そんな彼も『機動戦士Zガンダム』では、期待した若者についムチャ振りをしてしまう男になってしまいます。

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◆ニュータイプの人間離れしたムチャ振り

 『機動戦士Zガンダム』第16話「白い闇を抜けて」において霧の中での戦闘で苦戦するカミーユにアムロは、「後ろにも目をつけるんだ」とニュータイプならではのムチャ振りをします。カミーユに見どころがあるとはいえ霧で視界が遮られているモビルスーツ戦の最中にこのような無理難題を言ってのけるところを見ると、アムロも1年戦争の間にブライトの影響をしっかり受けてしまっていたのかもしれません。

 カミーユにニュータイプの素質を感じたからこそのアムロのアドバイスだったのでしょう。しかし、このときのミッションは百式とともに宇宙に上がるクワトロが乗るシャトルを、襲って来るティターンズのアッシマー部隊から守るという難しいものです。

 しかも濃い霧が出ている中での戦いであり、カミーユはアムロが敵モビルスーツのバーニアだけを切断して爆発させない技術をマネしようとして失敗していました。そのような状況だからこそ、あえて「後ろにも目をつけるんだ」という人間離れしたアドバイスをしたのかもしれません。

 しかし、カミーユは後手に回り、ブラン・ブルタークが乗るアッシマーにやられそうになります。その窮地をリック・ディアスを操縦するアムロが救い、アッシマーを撃破。

 7年間のブランクがあるはずのアムロが、カミーユとの戦闘技術の差をまざまざと見せつける結果となります。「後ろにも目をつけるんだ」というニュータイプだからこそのアドバイスは、カミーユにもさすがにムチャ振りだったといえるでしょう。

◆ド正論に見せかけたすごいムチャ振り

 『機動戦士ガンダム』第2話「ガンダム破壊命令」においてサイド7から脱出したシャアが、ガンダムのビームライフルを初めて見てたじろぐスレンダーに放ったセリフが「当たらなければどうということはない」です。

 言っていることは間違っておらずシャアの冷静ぶりから説得力を感じてしまいますが内容はかなりのムチャ振りであり、それを証明するようにスレンダーの乗るザクはガンダムのビームライフルに貫かれて撃墜されてしまいます。

 実はシャアも「当たらなければどうということはない」のセリフの前に、ガンダムの頑丈さと運動性能に驚いていました。それでも巧みな操縦テクニックでガンダムのビームライフルをかわしたり、死角に入ってザクマシンガンで攻撃したりアムロを翻弄するところはさすが。

 しかし、リュウがコア・ファイターで援護に来て余裕ができたアムロは、スレンダーが乗るザクのコックピットをビームライフルで撃ち抜きました。

 この「当たらなければどうということはない」という発言は、モビルスーツを操る技術が高いシャアだからこそあてはまる言葉なのでしょう。そのため、あくまで一般兵であるスレンダーにとっては、ムチャ振り過ぎたようです。

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◆ブーメランになって自分に跳ね返って来たムチャ振り

 『機動戦士ガンダムF91』でザビーネ・シャルが、裏切って連邦軍についたアンナマリー・ブルージュに放ったセリフが「感情を処理できん人類はゴミだと教えたはずだがな」です。

 ザビーネに振り向いてもらえず寝返ったアンナマリーにはごもっともな意見なのですが、さすがにゴミは言い過ぎでありこの言葉は10年後にブーメランとなって彼自身に突き刺さってしまいます。

 『ガンダム』シリーズではレコア・ロンドやニナ・パープルトンのように、私情で裏切るキャラクターは多いです。ザビーネに言わせれば彼女らもゴミなのでしょうが、戦場で恋に落ちた敵同士のシロー・アマダとアイナ・サハリンも軍規に違反して軍を離脱しました。

 また、リアルの歴史でも寵愛する側室の子を後継者にするため、ルールを破って現太子を廃嫡しようとお家騒動が起こったり国が亡んだりすることもあります。

 そして、この10年後を描いた『機動戦士クロスボーン・ガンダム』において、ザビーネの発言は自分自身に突き刺さりました。彼は理想とする貴族主義を実現するために木星帝国へ寝返りますが、信用されずにスパイ容疑をかけられます。

 過酷な拷問を受け続けた結果ザビーネは精神崩壊を起こし、自分の野望を邪魔したキンケドゥに強い恨みを抱くことに……。感情むき出しで戦うようになったザビーネは、キンケドゥとの一騎打ちの敗れて戦死。

 かつての「感情を処理できん人類はゴミだと教えたはずだがな」という自分の言葉が、見事に跳ね返って来てしまいました。軍人として常に冷静であることは大切ですが、人間に対してのセリフとしてはやはりムチャ振りだったといえるでしょう。

 

 ──戦時下であればモラルなどにかまっていられないわけで、現代であれば完全にアウトなアムロやシャアたちの部下へのムチャ振り発言もついポロッと出てしまったのでしょう。昨今の社会ではコンプライアンスに過剰に配慮している面もありますが、平和だからこそモラルに対して向けられる目が苛烈になってしまうのかもしれません。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。X(旧Twitter)⇒@z0hJH0VTJP82488

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「機動戦士ガンダムシャアVSアムロ: 一年戦争から逆襲のシャアまで二人の戦いの軌跡 」(出版社:ラポート)』

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