『機動戦士Zガンダム』(以下、『Zガンダム』)で前半主役機を務めたガンダムMk-Ⅱ。グリプス戦役だけでなく、第一次ネオ・ジオン抗争でも活躍し、エゥーゴを支えました。そんなガンダムMk-Ⅱですが、実は第一次ネオ・ジオン抗争終結後も、たびたび戦場に姿を現しているのです。
◆宿敵ヤザン・ゲーブルが乗った機体も!?
TVアニメにおけるガンダムMk-Ⅱの活躍は、『機動戦士ガンダムZZ』(以下、『ガンダムZZ』)第46話、クィン・マンサとの戦闘で中破し、アクシズに乗り捨てられたシーンが最後となっています。
しかし、第一次ネオ・ジオン抗争以後を描いた作品では、たびたびその姿を確認できます。まず、第一次ネオ・ジオン抗争から1年後を描いた漫画、『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』では、第18巻で登場。搭乗者は、なんとヴァースキ・バジャックと名前を変えたヤザン・ゲーブルです。
かつてカミーユ・ビダンたちを苦しめた宿敵が、ガンダムMk-Ⅱに乗る。これにはヤザン自身も思うところがあるようで、機体を調達したゴップに「冗談が過ぎますな」と苦言を呈しています。しかし、機体の調達をお願いしていた手前、やむを得ず受領していました。
ちなみに、本作に登場するガンダムMk-Ⅱは、ゴップ議長が根回しして、アナハイム・エレクトロニクス社(以下、AE社)から独自に調達した機体です。機体色はかつての愛機・ハンブラビを彷彿とさせる、濃いブルーと緑に塗装されていました。また、AE社で計画されたものの未開発だったフルアーマープラン用のパーツを、ゴップの権限で生産・装着させています。
また機体本体にも、メカニックによって手が加えられたようです。特に燃焼室の形状見直しや最新の推進剤の使用により、出力は原型機と比べ15%向上しています。
なお、ガンダムMk-Ⅱのフルアーマープランは、元々雑誌企画『Z-MSV』にて設定された装備です。同誌では、ガンダムMk-Ⅱの装甲の弱さを補うために計画されたものの、Gディフェンサーの採用によって廃案になった幻のプランとされています。
そんな幻のプランを装備したガンダムMk-Ⅱに乗るのが、Gディフェンサーを破壊したヤザンというのは、不思議な縁を感じずにはいられません。
◆バナージが乗ったのは失われたはずの機体?
ガンダムMk-Ⅱは、宇宙世紀0096年を描いた漫画『機動戦士ガンダムUC episode EX2 獅子の帰還』(以下、『獅子の帰還』)にも登場します。操縦するのは、『機動戦士ガンダムUC』(以下、『ガンダムUC』)のバナージ・リンクスです。
作中ではラプラス事変後、メガラニカの自治やジオン共和国の防衛のために運用されていました。
本機は『ガンダムZZ』で、アクシズ内部に乗り捨てられた機体と考えられています。その証拠に、『獅子の帰還』の作者の玉越博幸氏も、X(旧Twitter)で「サイド3に残されていたMk-Ⅱを運用している」と言及しています。
さらに、ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション2』(以下、『バトオペ2』)の説明文には、アクシズ内部に投棄された機体である旨が記載されています。そのため、かつてエゥーゴで運用されていた機体が、巡り巡ってバナージの元に渡ったと考えていいでしょう。
なお、同一機体といっても、本機は内部構造をはじめ、総合力強化のため大幅に改修されています。また、機体色もエゥーゴカラーから、ユニコーンガンダムと同じホワイトへ変更されていました。さらに右腕部は、ビーム・マグナムを運用するために、シルヴァ・バレトの腕部パーツを2本合わせた特殊な構造へ改修されています。
ビーム・マグナムはバナージの代名詞的な武装ですが、RX-0シリーズ以外の機体で運用すると、発射時の反動で腕部が破損するという欠点があります。そこで、腕のパーツを二重にして強度を上げ、無理やりビーム・マグナムの発射可能回数を増やしているのです。
ちなみに、『ガンダムZZ』で登場したガンダムMk-Ⅱは、カミーユが乗っていたものではなく新造された機体という説もありますが、本作では「グリプス戦役で大破したものを修復し、再配備した」説を採用しているようです。
◆残念なガンダムが屈指の名機に!?
グリプス戦役からラプラス事変後まで、実に8年近く運用されているガンダムMk-Ⅱ。しかし、ロールアウトした直後の評価は散々でした。
当時、エゥーゴは主力モビルスーツの装甲にガンダリウムγという新素材を採用していましたが、ガンダムMk-Ⅱは既存素材を利用した複合装甲を採用していました。さらに、重量増加を避けるためにフレームが露出している部分が多く、防御性能に不安があったのです。
また、本機の開発には、ジオン系のテクノロジーはほとんど採用されていません。それは、ティターンズの、スペースノイド弾圧という方針が大きく影響しています。しかし、グリプス戦役時には、連邦系とジオン系の技術をミックスしモビルスーツ開発を行うのが主流となりつつありました。つまり、連邦系の技術のみで製作された本機は、開発された時点で既に旧式のモビルスーツだったのです。
そのため、開発者のフランクリン・ビダンからも、「あんなもの、もうやってもいいでしょう」とまで言われています。
それでも、ムーバブル・フレームの採用により、高い運動性能と汎用性を獲得。さらに、加速性能にも優れていたため、総合性能では同世代のモビルスーツとも十分に渡り合えていました。
さすがにグリプス戦役中期頃には機体性能で遅れを取るようになりますが、専用の支援メカが投入され延命。エゥーゴの厳しい懐事情もあり、そのまま第一次ネオ・ジオン抗争まで戦い抜きました。
そして、第一次ネオ・ジオン抗争後も、その汎用性の高さを活かして、さまざまな戦場に投入され続けています。
──当初はガンダムの名を継ぐ機体としては、失敗作のような評価をされていたガンダムMk-Ⅱ。しかし、その汎用性と運動性能の高さが評価され、結果として8年近くも運用されました。これは、1年も経たない内に失われがちな主人公機の中では、トップレベルの運用期間です。
近年では宿敵ヤザンだけでなく、バナージも搭乗し、華々しい活躍を見せています。失敗作のレッテルを貼られた機体は、その活躍によって長く愛される名機へと成り上がったのです。
〈文/北野ダイキ〉
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 ガンダムMk-2 Ver.2.0(エゥーゴ)」 (C)創通エージェンシー・サンライズ』




