『ガンダム』シリーズには、数多くの量産型モビルスーツが登場しますが、基本的には「やられ役」というイメージが強いのではないでしょうか? しかし、ゾロアットやゲルググなど、スペック上はガンダムを上回る性能を持つ、高性能な量産機も多く存在しています。
◆クロスボーン・ガンダムすら上回る高性能機!?
『機動戦士Vガンダム』で登場した、ザンスカール帝国の主力量産モビルスーツ・ゾロアットは、宇宙世紀でも屈指の性能を誇る量産機です。本機はザンスカール帝国の軍事部門「ベスパ」によって開発されました。
量産機らしくバランスに優れた機体であり、機動性、ジェネレーター出力、武装と、あらゆる面で高い性能を誇っています。
特にジェネレーター出力は目を見張るレベルで、2019年6月出版の『週刊 ガンダム・モビルスーツ・バイブル』18号(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、以下、『MSバイブル』)によると、Vガンダムのジェネレーター出力は4,780kW。対するゾロアットは『MSバイブル』46号(2020年5月出版)によると出力は5,280kWと、主役機であるVガンダムすら上回っています。
また、『MSバイブル』38号(2020年3月出版)によると、出力だけで言えば、宇宙世紀0130年代における最強格のモビルスーツであった、クロスボーン・ガンダムに匹敵する数値です。実際、漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』の作中では、 クロスボーン・ガンダムX-0のバタフライバスターを、ビーム・シールドで易々と受け止める描写がありました。
これほど高いジェネレーター出力を誇りながら量産性にも優れているため、一般兵にも支給されています。『MSバイブル』46号によると、この性能の高さとバランスの良さが、ザンスカール帝国に開戦を決意させた一因である旨が記されています。
また、センサー類の性能も非常に優れています。たとえば、頭部の複合式マルチセンサーは、可視光に含まれない帯域の電磁波も感知可能です。
なお、本機は宇宙用として開発されていますが、同誌によると、その基本性能の高さから、のちに開発されるベスパ製モビルスーツの設計母体となりました。性能、量産性、基礎設計の優秀さ、どれをとっても宇宙世紀トップレベルの量産機といえるでしょう。
◆ユニコーンガンダムにも追随できる高性能機
『機動戦士ガンダムUC』(以下、『ガンダムUC』)に登場したジェスタは、ジェガンの上位機種にあたる機体であり、その性能はジェガンをはるかに上回っています。なぜなら、ジェスタは元々、ユニコーンガンダムの護衛役として開発された機体だからです。
『MSバイブル』68号(2020年10月出版)によると、「UC計画」にて開発されたユニコーンガンダムは、フルサイコフレームを搭載し、対ニュータイプ戦に特化した機体となっています。しかし、性能をフルに発揮できるデストロイモードには時間制限があるため、継戦能力の観点から、単機での運用には難がありました。
そこで、ユニコーンガンダムがデストロイモード中にニュータイプとの1対1の戦いに専念できるよう、露払い役を果たせるモビルスーツが求められたのです。こうして開発されたのがジェスタでした。
その開発経緯から、ジェスタは量産用モビルスーツとしては破格の性能を有しています。『MSバイブル』68号によると、ジェネレーター出力は2,710kW。単純なジェネレーター出力においてはZガンダムすら上回っているようです(『MSバイブル』4号/2019年2月出版より)。さらに、カタログスペック上は、νガンダムの9割程度に届く数値を誇っているとされています。
また、マッシブな外見通り装甲も非常に強固です。その分重量も増えていますが、それを補って余りある推力と機動性を有しています(プラモデル「HGUC 1/144 ジェスタ」取扱説明書より)。さらに拡張性も高く、オプション・パーツを増設すれば、中距離支援タイプであるジェスタ・キャノンとしても運用可能です。
『ガンダムUC』作中では、Zプラスやグスタフ・カールを瞬時に制圧する圧倒的な性能を見せています。ただ、護衛対象であるはずのユニコーンガンダムとは、むしろ交戦する羽目になったため、本来の役割を果たすことはできませんでした。
◆実はガンダムを超えていたジオンの量産機
『機動戦士ガンダム』終盤に登場した、ジオン公国軍の量産型モビルスーツ・ゲルググ。実はスペック上の数値は、RX-78-2 ガンダムを上回っています。
『MSバイブル』76号(2020年12月出版)によると、ゲルググのジェネレーター出力は1,440kW、総推力は61,500kg。対するガンダムの出力は1,380kW、推力は55,500kgであり、単純なカタログスペックではゲルググのほうが優れています。
さらに、連邦軍のRXシリーズと同じくビーム兵器を装備しており、攻撃力に関しても申し分ありません。対モビルスーツ戦闘を想定して設計されているため、格闘能力も優れています。
また、汎用性の高さもザクⅡ以上であり、整備性にも優れています。さらに、ほぼ無改造で重力下運用が可能とされています(プラモデル「MG 1/100 シャア専用ゲルググVer.2.0」取扱説明書より)。このように、モビルスーツとしての総合的な完成度でいえば、ガンダムを上回っているといえるでしょう。
ただ、開発が遅れてしまったため、実戦投入された機体数はそこまで多くなかったようです。1986年に発売されたプラモデル「1/144 リゲルグ」の取扱説明書によると、ア・バオア・クー戦では67機しか参加していないと記述されています。
また、訓練期間が短かったため、多くのパイロットが機体の扱いに苦労したようです。特にザクⅡから乗り換えたばかりの新兵は、ゲルググの高機動性に振り回され、能力を引き出す前に撃破されてしまったとされています。
そのため、性能は優れているものの、ゲルググが戦況に与えた影響は微々たるものでした。しかし、その性能が同世代の量産型モビルスーツの中で圧倒的だったのは事実で、「あと1ヵ月配備が早ければ、歴史を塗り替えていたかもしれない」とさえいわれています(プラモデル「MG 1/100 シャア専用ゲルググVer.2.0」取扱説明書より)。
──やられ役であるはずの量産型モビルスーツ。しかし中には、実際の性能が主役機であるガンダムにも匹敵する機体も、たびたび登場しています。
それでも作中で思うような活躍ができないのは、機体性能以上に、パイロットの腕の差が大きかったからでしょう。アムロ・レイをはじめとする主人公たちの操縦技術がいかに卓越していたかが、このことからも分かります。
〈文/北野ダイキ〉
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 量産型ゲルググ」(C)創通エイジェンシー・サンライズ』




