ガンダムのビーム・ライフルは、モビルスーツ黎明期において破格の火力を持った兵装でした。シャア・アズナブルも、作中で「戦艦並みのビーム砲を持っているのか?」と驚いています。しかし後年には、戦艦並みどころか、戦艦の主砲をそのまま転用した規格外の威力をもつ武装も登場しました。
◆内蔵火器としては宇宙世紀最強レベル!?
『機動戦士ガンダムZZ』のZZガンダムのハイ・メガ・キャノンは、宇宙世紀のモビルスーツの中でもトップレベルの火力を持つ内蔵火器です。本兵装は、機体に積載されたジェネレーターをオーバーロード寸前まで稼働させ、発生したエネルギーをすべて凝縮させてビームを照射します(プラモデル「MG 1/100 MSZ-010 ZZガンダム」取扱説明書より)。
その出力は50MWで、コロニー・レーザーの約20%に相当すると記されています。大型戦艦も一撃で撃沈可能な威力を有しており、従来のモビルスーツの装備とは比較にならない性能を誇ります。しかも、頭部に搭載されているため取り回しが良く、対戦艦だけでなくモビルスーツとの白兵戦でも使えます。
ただし、威力が強い分リスクも大きく、最大出力で使用すると機体がほぼ稼働不能状態に陥る危険性すらあるようです(プラモデル「ZZガンダム (1/100) 」取扱説明書より)。
そのため、ほかの機体に搭載される際は、デチューンされるケースもあり、量産型ZZガンダムでは発射回数が制限された簡易版が搭載されています(ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション2』公式Webサイトより)。
それでも十分な火力を有しており、漫画『機動戦士ガンダム U.C.0094 アクロス・ザ・スカイ』では、サイコ・ガンダムの頭部を融解させていました。
◆コロニー・レーザーの30%ほどの出力がある!?
ZZガンダムは第一次ネオ・ジオン抗争終盤に、フルアーマーZZガンダムへと改修されます。その際、主兵装として検討されたのが、ハイパー・メガ・カノンです。グリプス戦役から第一次ネオ・ジオン抗争にかけて、モビルスーツの携行火器は飛躍的に向上しており、身軽さが売りのZガンダムですら、ハイパー・メガ・ランチャーのような兵装を有していました。
本兵装は、そんなモビルスーツが恐竜的進化を遂げていた当時においても、最大級の火力を持つ兵装といえるでしょう。その出力は、ハイ・メガ・キャノンの約60%増しです(プラモデル「MG 1/100 FA-010S フルアーマーZZガンダム」取扱説明書より)。
火力は、コロニー・レーザーの出力の約30%に及ぶとされています。しかも、数秒のインターバルで連射が可能となっており、使い勝手の良さはハイ・メガ・キャノンをしのぎます。
また、Gフォートレス形態時にも、出力を制限すれば使えるので、機動性と火力を活かした一撃離脱戦法も可能です(プラモデル「MG 1/100 FA-010S フルアーマーZZガンダム」取扱説明書より)。
しかし、兵装が巨大な分だけ慣性重量も膨大であり、近接戦闘を行うにはパージする必要があります。そのためか、実際にはフルアーマーZZガンダムには採用されず、フルアーマーの試験評価用に開発されたFAZZにのみ採用されました。
FAZZでは、頭部と腹部のハイ・メガ・キャノンがダミーだったこともあり、ハイパー・メガ・カノンが唯一の強力な攻撃手段となっています。そのため、FAZZでは近接戦闘での性能を考慮せず、遠距離支援用の機体と割り切ることで、本兵装の強みを最大限発揮する運用を行っていました(プラモデル「MG 1/100 FA-010A FAZZ(ファッツ)」取扱説明書より)。
◆戦艦の主砲をモビルスーツの武器に!?
ZZガンダムには戦艦の主砲と同レベルの火力を持つ兵装が搭載されましたが、ほかの作品には戦艦の主砲そのものをモビルスーツの武器に転用した例も登場します。
小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』(出版社:角川書店、1988年2月2日出版)に登場したハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーもその一つです。
本兵装は小惑星アクシズを破壊するために急造されたもので、ラー・カイラムの主砲を用いて建造されています。つまり、戦艦の主砲そのものを、モビルスーツの武器として転用しているのです。
さらに、使用する際はラー・カイラムから直接ケーブルをつなぎ、エネルギー供給を受けることで発射可能となります。消費エネルギーも膨大で、エネルギー供給時には一時的にラー・カイラムが停電するほどでした。そのため、出力に関しては、通常の戦艦クラスの主砲を凌駕していると考えられます。
ただ、それだけのエネルギーを扱うのは難しく、漫画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』第5巻(出版社:KADOKAWA、2017年3月25日出版)に描かれた設定画を見ると、武器の各部には排気スリットと冷却用の噴射口が設けられていました。
ほかに戦艦の主砲を転用した例としては、ディープストライカーの主砲ユニットが挙げられます。本兵装はアーガマ級、アイリッシュ級の主砲と同タイプのメガ粒子砲を、上下逆にして取り付けたものです(プラモデル「MG 1/100 PLAN303E ディープストライカー 」取扱説明書より)。これもまた、戦艦並みの火力ではなく、戦艦の主砲をそのままモビルスーツに持たせた兵装と言えるでしょう。
また、ディープストライカーには、主砲同軸センサーや大型ディスク・レドームが設置されています。これらも戦艦搭載と同等の探知能力を持っているため、索敵能力に関しても並みのモビルスーツをはるかに超えています。
ディープストライカーはこの兵装を活かし、爆発的な加速力で敵陣を攻撃する、基地艦隊攻撃機と想定されました。しかし、さすがに戦艦級の装備をいくつも搭載するのはコストがかさんだようで、ペーパー・プランのみに終わっています。
──モビルスーツは宇宙世紀に登場する兵器の中でもトップレベルに運動性が高く、小回りも効きます。そんな兵器に、小回りの効かない戦艦級の火力を持たせようというのは、非常に理にかなった発想といえるでしょう。
〈文/北野ダイキ〉
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 ダブルゼータガンダム Ver.Ka」(C)創通・サンライズ』


