強そうに見える機体ほど、実はクセが強いことがあります。『ガンダム』シリーズには、名機のような外見を持ちながら、中身は試験機や作業用メカだった機体も登場しました。見た目と実態のギャップから、その意外な魅力を振り返ります。
◆ZZの裏に潜む実験機としての脆さ
雑誌企画『ガンダム・センチネル』に登場するFAZZ。その見た目は、『機動戦士ガンダムZZ』で活躍したフルアーマーZZガンダムに酷似しています。しかし、その総合性能はフルアーマーZZガンダムには及ばない、やや残念な機体です。
書籍『週刊 ガンダム・モビルスーツ・バイブル 92号』(出版:ディアゴスティーニ・ジャパン、2021年3月30日)によると、 FAZZはΖΖガンダムのフルアーマー・システムを評価するために、試験的に開発された遠距離支援砲撃用モビルスーツだったといいます。
そのため、見た目こそフルアーマーZZガンダムですが、あくまでフルアーマー状態の性能試験のみを目的としているに過ぎない機体となっています。ゆえに、増加装甲の着脱、Gフォートレス形態への変形には未対応。
装甲もガンダリウム・コンポジットを用いた装甲は、オリジナルよりワンランク劣る材質が用いられました。さらに、原型機に比べるとオミットされた機能は多数あり、機体中央のハイメガ砲と、頭部のハイ・メガ・キャノンはダミーとなっています。
それでも、それ以外の能力はフルアーマーZZガンダムと同等レベルなので、当時としては非常に高いポテンシャルを機体といえるでしょう。特に、右腕で持つハイパー・メガ・カノンや、各部に搭載されたミサイルを用いた火力は、当時としてはトップクラスのものでした。
しかし、近接格闘能力は低いため、接近されると非常に弱いとされています。実際、宇宙世紀0088年1月25日に発生したペズン事件では、長距離砲撃戦では互角の戦いを演じたものの、ガンダムMk-Vに接近を許すとあっさり破壊されました。なお、この戦いで、開発された機体すべてが失われています。
「見た目倒し」とまではいかずとも、データ収集用の試験機の限界を知らしめた機体といえるでしょう。
◆見た目はZ、中身はネモ以下
漫画『機動戦士ゼータガンダム1/2』に登場したハーフゼータ。見た目こそ、『機動戦士Zガンダム』の主人公機であるZガンダムに似ていますが、その中身は量産機にも及ばない、非常に低い性能を持つ機体でした。
ハーフゼータは元々、アナハイムがZガンダム登場以前から独自に開発していた可変モビルスーツの実験機です。元はZガンダムの見た目を持つ機体ではなく、Zガンダムに似た外装は、本機を譲り受けたカラバが独自に施したものでした。そのため、見た目はZガンダムに似ていますが、Zガンダムの強化タイプ、発展型というわけではありません。
本機最大の特徴は、機首や主翼を巨大なシールドにまとめることで、可変機構を簡略化している点です。逆に言えば、飛行能力を集約したシールドが破損すると、飛行できなくなるという致命的な欠点も有しています。
作中では敵機を蹴散らすために、シールドで打撃攻撃を行なった際に大きく破損。この破損が原因で、飛行能力を失ってしまい、ジャングルを走破する羽目になっていました。
また、飛行ユニットと盾の機能を集約してしまったため、翼の面積も通常のウェイブライダーと、Zガンダムの中間くらいとかなり大きくなっています。そのため、取り回しが難しい上に、モビルスーツ形態時にはデットウェイトになってしまうという欠点がありました。
ただ、デカすぎる翼を振り回すために、アームの力が異常に強いという、本末転倒な強みもあるようです。また、性能もそこまで高くないようで、作中では「ネモの方が断然いい」とまで言われています。
作中ではエドガー・エドモンド・スミスによって運用され、アムロ・レイの影武者救出に参加。その後も、性能では量産機にすら劣っている部分があるにも関わらず、グリプス戦役終結まで戦い抜いています。
まさに、「ハリボテ」という言葉が相応しい機体ですが、作中ではZの名に恥じない活躍を見せていました。
◆見た目はガンダム中身は作業メカ?
漫画『ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム』で登場した Dガンダムファーストは『ガンダム』シリーズでも珍しい、搭乗者の趣味から生まれた機体となっています。
本機は『ENTERTAINMENT BIBLE .3 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.3 アクシズ戦争編】』(出版:バンダイ出版、1989年6月1日)によると、民間企業の作業員であるダリー・ニエル・ガンズが、破壊されたモビルスーツの部品やワーカーを流用して製作したハンドメイドモビルスーツだといいます。
そのため、正式にアナハイム・エレクトロクス社や、連邦軍が生産した戦闘用の機体ではなく、あくまで作業用のモビルスーツとなっています。また、見た目がガンダムなのも、製作者の趣味なだけで、ガンダムの系譜にある機体というわけでもありません。
一方で、ムーバブル・フレームやジェネレーターは、第一次ネオ・ジオン抗争時の戦闘用モビルスーツから部品を流用しています。そのため、基本性能は作業用にも関わらず、異常に高いようです。
しかし、戦闘用の機体ではないため武装は有しておらず、コロニー修復作業用の7つ道具を武器として転用しています。それでも、パイロットであるダリーの卓越した技術で、作中ではガザCやズサなど、ネオ・ジオンのモビルスーツを撃破することに成功していました。
その後、戦闘用に改修され、Dガンダムセカンド、Dガンダムサードへと改修されていきました。 『ENTERTAINMENT BIBLE .3 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.3 アクシズ戦争編】』によると、サードでは当時の連邦の量産機と、同等以上の性能を獲得していると説明されています。まさにハリボテから本物へと登り詰めた機体といえるでしょう。
──見た目こそ伝説の機体に似ていますが、その中身は試験用や作業用といったハリボテたち。しかし、そんな弱点を抱えながらも戦場を駆け抜けた泥臭い活躍こそが、彼らを本物のガンダムへと変えたのかもしれません。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 FAZZ Ver.Ka」(C)創通・サンライズ』

