『ガンダム』シリーズの戦場では、敵の姿が見えたときにはもう遅いのかもしれません。ガンタンクの超長距離砲撃、Sガンダムの宇宙狙撃、ザンネックの成層圏からの攻撃など、シリーズには規格外の射程を持つ機体が登場します。数字で見ると、その恐ろしさは想像以上です。
◆ガンタンクの射程は東京〜名古屋級? 元祖支援機の意外すぎる性能
長距離砲撃機の元祖といえば、『機動戦士ガンダム』に登場したガンタンクでしょう。作中ではハヤト・コバヤシや、リュウ・ホセイといった、有名キャラが搭乗しているため、非常に人気の高い機体となっています。
そんな本機の特徴は、両肩上部に2基装備された120mm低反動キャノン砲による、超長距離狙撃です。書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 87号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2021年2月22日出版)によると、本兵装の射程は240kmから260kmほどとされています。理論上は東京から名古屋まで届く、超長距離射程の武装です。
ただ、宇宙世紀にはレーダーを阻害する、ミノフスキー粒子が散布されているため、レーダーを利用した精密な射撃は困難とされています。そのためか、アニメ劇中では有視界で行える距離の砲撃に留まっていました。
一方、非常にアナログな方法で、本機の性能を十二分に発揮する様子を描いた作品もあります。たとえば、漫画『機動戦士ガンダム ラストホライズン』2巻では、200キロメートル先の観測員から有線通信で送られてきた着弾観測情報を頼りに、射程の長さを活かした一方的な砲撃支援を行っていました。
このように長距離支援に関しては群を抜いた性能を誇っていますが、前述の書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 87号』によると支援性能に特化しすぎているため、自衛能力が乏しいという欠点があるようです。
そのため、モビルスーツを名乗りながら、白兵戦特化であるはずのモビルスーツとしての性質はない、陸戦兵器という位置付けの機体となっています。
◆Sガンダムは1万2000キロメートル先を撃った? 宇宙を切り裂く精密狙撃
宇宙空間で1万キロメートル以上離れた相手に、正確な狙撃を行った機体も存在します。それが雑誌企画『ガンダム・センチネル』に登場するSガンダムです。
本機を象徴する武装と言えば、フレームを介して装着するビーム・スマートガンでしょう。書籍『Model Graphix Special Edition - Gundam Wars III - Gundam Sentinel - The Battle of Real Gundam』(出版社:大日本絵画、1989年9月1日出版)によると、本兵装はノーマルのセンサーと並列に、Zプラスのスマートガンと同型のディスク・レドームをセットできます。
さらに、プラモデル『MG 1/100 MSA-0011 Sガンダム』の説明書によると、これらのセンサーはモビルスーツ本体のコンピューターとリンクしており、より広範囲のスキャンが可能です。しかも、本機に搭載されているコンピューター、ALICEは戦闘時の高度な状況判断能力を行い、機体の自動戦闘すら可能にします。
また、銃口部分にはメガ粒子偏向機が取り付けられているため、ビームを偏向し命中率を高められます。作中では、この命中率を活かして、発電衛星SOLへの12,000キロメートルもの長距離射撃を行っています。
しかも、この狙撃は敵機からの攻撃に晒されながら行ったものでした。そのため、敵機に察知されていない状況なら、より遠い距離からの精密な狙撃も可能だったかもしれません。
また、本機は最大3人のパイロットが搭乗できるため、索敵手が同乗すればその性能を十分に発揮できます。こうした背景から、作中では1万キロメートルほどの長距離射撃しか行っていないものの、本機のポテンシャルを考えれば、より長射程の狙撃も可能でしょう。
◆ザンネックは宇宙から地表を狙える? 成層圏狙撃の恐ろしさ
『ガンダム』シリーズの中には、宇宙から地上への一方的な狙撃を可能にした機体もあります。それが、『機動戦士Vガンダム』に登場した、サイコミュ搭載型モビルスーツであるザンネックです。
本機最大の特徴は、全長20メートルにも達する、ザンネック・キャノンを利用した超長距離射撃でしょう。書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 146号』(出版社;デアゴスティーニ・ジャパン、2022年4月12日出版)によると、ザンネック・キャノンは両肩に装備されたミノフスキー粒子の加速器から生み出された超高エネルギーメガ粒子を発射することで、長距離でも減衰しない高威力のビームを発射できます。
さらに、本機は独自のサイコミュを使うことで、高精度な狙撃を可能としました。宇宙世紀ではミノフスキー粒子の影響で、レーダーなどの電波を利用する機器が阻害されるため、超長距離の射撃は実質的に不可能です。
しかし、小説『エンジェル・ハィロゥ 機動戦士Vガンダム』第5巻によると、本機に装備されたサイコミュ・センサーでは、増幅したサイコウェーブを放出することで、敵の脳波を感じ取り位置を捕捉できます。
この画期的なシステムにより、ザンネックは超長距離での精密な狙撃が可能となりました。ほぼ一方的に相手へ攻撃することもでき、作中では成層圏から地表の基地に対する狙撃を行っています。
また、専用のサブフライトシステム・ザンネックベースは、大気圏の離脱・突入ができるため、地表からも宇宙からも攻撃が可能です。ちなみに、ザンネックベースにはビームシールドが搭載されているため、万一地表から攻撃できたとしても、ザンネックへ攻撃が届くことはありません。
──ガンダムシリーズの長距離砲撃機は、ただ遠くから撃つだけの機体ではありません。ガンタンクは地上支援機としての射程を、Sガンダムは高性能センサーとALICEによる精密射撃を、ザンネックはサイコミュを使った成層圏からの攻撃を見せました。時代や技術は違っても、いずれも「相手の届かない場所から戦局を動かす」という点で共通しています。
接近戦の華やかさに比べると、砲撃機は地味に見えることもあります。しかし、一撃が届く距離と命中精度を考えると、その存在はむしろ戦場全体を支配する脅威といえるでしょう。
狙われた側が気づいたときには、すでに勝負が決まっている。そんな怖さこそ、超長距離射撃機ならではの魅力なのかもしれません。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
《北野ダイキ》
『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 RX-75 ガンタンク」 (C)創通エージェンシー・サンライズ』


