<PR>
<PR>

 『機動戦士ガンダムF91』以降、モビルスーツはそれまでの18メートル級から15メートル級へと小型化しました。作中では連邦軍の財政事情が理由とされていますが、現実の制作現場では、キャラクターに芝居をさせやすくするための判断でもあったようです。なぜ『ガンダム』の世界でモビルスーツは小さくなったのか。設定と制作側の事情、さらにガンプラ価格説まであわせて振り返ります。

<PR>

◆なぜ連邦軍はMSを小さくしたのか 背景にあった深刻なコスト問題

 アニメ『機動戦士ガンダムZ』以降、モビルスーツは巨大化の一途を辿っていました。ZZガンダムやΞガンダムはその代表例といえるでしょう。しかし、映画『機動戦士ガンダム F91』では一転して、モビルスーツの全高は15メートル級まで小型化されました。

 これは作中においては、連邦軍の切実な懐事情が関係しているとされています。書籍『機動戦士ガンダムMS大図鑑 (part 4 MS開発戦争編)』(出版:バンダイ出版、1991年2月1日)によると、宇宙世紀0100年にジオン共和国が自治権を放棄したことで、連邦は戦乱消滅を宣言。

 それでも、大きな戦争とはいかずとも、小規模な戦闘行為は各地で散発的に発生していました。これを受け連邦はモビルスーツ新機種の開発を進め続けていきます。しかし、グリプス戦役以降モビルスーツの大型化・高性能化が進み、生産コストが財政を圧迫するようになっていましたといいます。

 また、モビルスーツが大型化するということは、それを運用する戦艦・基地も大型化し、既存の施設が流用できず、新設するしかなくなってしまいます。結果、運用するための機材関係を含めて、モビルスーツを大量に導入することがコスト的にはばかられるようになっていました。

 これを受けて、連邦軍は関係企業に通達し、性能を落とさないまま、小型化したモビルスーツの開発を要請します。これに、モビルスーツ開発企業最大手のアナハイム・エレクトロニクス社と、サイド4に拠点を置くサナリィが参加。最終的にはサナリィのフォーミュラ計画で開発されるモビルスーツが、次期主力機として採用決定しました。

 こうして、F91やクロスボーン・ガンダムといった、小型モビルスーツが数々誕生することになるのです。

◆富野監督はなぜ15メートルにこだわったのか 「芝居をさせる」ための小型化

 モビルスーツが小型化したのは、アニメ制作側の都合もありました。現実におけるモビルスーツの小型化が進められた理由は、作劇場の都合が大きかったとされています。しかも、モビルスーツの小型化は、富野由悠季監督が率先して進めた施策とされています。

 書籍『富野由悠季 全仕事』(出版社:キネマ旬報社、1999年6月9日出版)に掲載されたカトキハジメ氏と出渕裕氏の対談によると、「モビルスーツを15メートルに縮めたのは富野さん」「バンダイに聞いても『あれは富野さんです』という答えを何度も聞いてるから間違いない。」と言及されていました。

 そして、富野監督自身も書籍『グレートメカニックスG 2022 Summer』(出版社:双葉社、2022年6月17日出版)などで、「より芝居をさせやすいサイズにさせたい」と考え、モビルスーツを小型化させたことを明かしています。そして、『機動戦士ガンダムF91』のころに「ガンダムのスケールを刷新できるのでは」と思い、モビルスーツの小型化に踏み切ったようです。

 より詳しい小型化の理由については、サンライズで企画室室長を務めていた井上幸一氏も書籍『グレートメカニック 14』(出版社:双葉社、2004年12月1日)で言及しています。

 井上氏曰く、大型化したモビルスーツのコックピット付近でキャラクターに芝居をさせると、モビルスーツの顔は同じフレームに入らないし、ボディも板にしか見えないという弊害が出ていました。

 そこで、キャラクターに芝居をさせやすいよう、モビルスーツの小型化を提案させたようです。ただ、小型化しすぎると、ガンプラ化した際に商品的な見栄えが悪くなってしまいます。そこで、ガンプラ化と作劇場の都合の折り合いが取れるサイズ感を模索したところ、15メートルが限界のサイズだったようです。ちなみに、この小型化に関しては、バンダイ側も大きな理解を示してくれたとも同書籍内では語られています。

<PR>

◆小型化はガンプラ価格のためだったのか? 商品展開との意外な接点

 モビルスーツの小型化については、ちまたでバンダイがガンプラの値段を抑えるために行ったという説もたびたび見られます。この説の発端となったのは、恐らく書籍『機動戦士ガンダム宇宙世紀 vol.4 総括編』(出版社:ラポート、1999年4月1日出版)でしょう。

 同書籍では、当時モビルスーツの大型化によって、1/144のスケールの値段設定を維持できなくなりつつあったこと。それに伴い、商品価格上昇による低学年層へのアピールが難しくなる懸念があったことが語られていました。

 実際、Zガンダムの1/144のスケールは500円でしたが、300円の価格帯の商品をラインナップに加えたいのか、その下に1/220というスケールが設定されています。さらに、νガンダムになると、いろプラ化されたとはいえ1/144スケールが1000円まで値上げされていました。

 こうしたガンプラの高額化の対策として、『機動戦士ガンダムF91』以降のモビルスーツは小型化されたと語られています。ただ、先述した複数の書籍で語られている通り、モビルスーツの小型化は富野監督が作画上の見映えを意識して導入されました。

 そのため、バンダイは初めから商売を考えて、モビルスーツを小型化させたわけではなかったのではないでしょうか。一方で、富野監督の意向があったおかげで、ガンプラの価格を抑えることができたというのも事実です。

 

 ──作中では、連邦軍の財政事情や運用コストの問題から進められたモビルスーツの小型化。しかし現実には、富野由悠季監督が「より芝居をさせやすいサイズ」を求めたことも大きな理由でした。

 15メートル級への変化は、たんなるサイズ変更ではありません。宇宙世紀の設定、アニメとしての見せ方、そしてガンプラの商品展開が重なった結果、『機動戦士ガンダムF91』以降のモビルスーツは新しい時代へ踏み出したといえるでしょう。改めて見返すと、F91やクロスボーン・ガンダムの小さな機体にも、当時の制作現場のねらいが詰まっているのかもしれません。

〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉

《北野ダイキ》

『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。

 

※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 ガンダムF91」 (C)創通・サンライズ』

<PR>
<PR>

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.