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本記事には漫画『HUNTER×HUNTER』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

本記事は漫画『HUNTER×HUNTER』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 ビヨンド=ネテロの顔に刻まれた大きな傷は、ただのデザインではないのかもしれません。『HUNTER×HUNTER』の王位継承戦では、カキン王族の血筋、二線者、壺中卵の儀、そしてビヨンドの子どもをめぐる疑惑が重なり、これまで何気なく見ていた描写まで伏線に見えてきます。

中でも気になるのは、ビヨンドがカキン王室とどう関わっているのかという点です。ネテロの過去、真林館事件、チョウライとオニオールの関係までたどると、王位継承戦の裏側にある別のねらいが浮かび上がってきます。

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◆ビヨンドの顔の傷は何を意味するのか カキン王族とのつながりに残る疑問

 王位継承戦の参加条件は、国王ナスビ=ホイコーロの正室の子であることです。この条件が改めて重要視されたことで、14人の王子の中にビヨンド=ネテロの子どもがいるのではないかという疑惑が浮上しました。そうなると、ビヨンド自身にもカキン王族の血が流れている可能性が出てきます。

 この考察で見逃せないのが、ビヨンドの顔にある大きなエックス字の傷です。カキンでは、王の婚外子は「二線者」と呼ばれ、顔に傷をつけられるとされています。もしビヨンドがカキン王族の血を引く存在であれば、彼の傷も二線者の証と関係しているのかもしれません。

 壺中卵の儀では、「壺に血の継承を証し、王即位への思いを念ずる」ことで、王子たちに守護霊獣が憑くとされています。守護霊獣が死者の縁の深い者に憑くと考えるなら、その死者とは壺を具現化した初代王を指すのでしょう。つまり、守護霊獣はカキン王の血筋を受け継ぐ者に反応していると見られます。

 ただし、二線者の傷は二枚刃でつけられるため、オニオール、ブロッコ、モレナに見られる傷跡と、ビヨンドのエックス字の傷は形が異なります。そこが、この説の気になる点です。

 一方で、二線者の傷が屈辱の証であるなら、ビヨンドの性格上、その傷を隠すようにさらに深く大きな傷を重ねた可能性もあります。傷跡が一つだけなら、二線者の存在を知る者には意図が読まれるかもしれません。そこで同じような傷をもうひとつ増やし、エックス字の傷に見せたと考えると、彼の顔の傷にも別の意味が生まれてきます。

◆ネテロとカキンの接点はあったのか ビヨンドの母親をめぐる仮説

 仮にビヨンドがカキン王族の血を引いているとすれば、母親はいったい誰なのでしょうか。父親がアイザック=ネテロである以上、若いころのネテロがカキン国の王族、あるいは元国王に近い人物との間にビヨンドをもうけた可能性が考えられます。

 カキンでは、正室の子どもであれば性別を問わず「王子」と呼ばれます。そして、王位継承戦を勝ち残れば女性でも王になれる仕組みです。ナスビより前の時代に女性の王が存在したとしても、設定上は不自然ではありません。

 もちろん、オニオールが現国王ナスビの異母兄弟であることを踏まえると、直前の前国王は男性だったと考えられます。そのため、女性の王がいたとすれば、それよりさらに前の世代になるでしょう。

 ネテロは享年100歳を超える人物であり、ビヨンドがクカンユ王国による暗黒大陸調査に参加したのは約50年前とされています。年代を考えると、カキン国に女性の王、あるいは王位に近い女性がいた時期に、ネテロとの間でビヨンドを身ごもった可能性は残ります。

 強さを追い求めたネテロの生き方を考えると、カキン国王を正式な妻として迎えたとは考えにくいかもしれません。むしろ、若き日のネテロが旅の中で彼女と出会い、恋人関係になったものの、その後は別々の道を歩んだという形のほうが自然にも見えます。

 その場合、ネテロ自身がビヨンドの存在を最初から知っていたとは限りません。成長したビヨンドが後にネテロの前へ現れ、そこで初めて親子関係が明らかになった可能性もありそうです。

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◆真林館事件はビヨンドの仕込みだったのか 30年前から動いていた可能性

 ビヨンドがカキンに深く関与していたとすれば、約30年前の真林館事件も大きな分岐点だったのかもしれません。カキン国はこの事件をきっかけに、帝国社会主義から議会民主主義へと体制を変え、現在の新しい国家へと生まれ変わりました。

 この変化を機に、ビヨンドがカキン国内へ入り込み、自分の子どもを王族の中に仕込んでいった可能性があります。年長の王子たちや、ビヨンドの子どもとされるロンギの年齢を考えると、30年前という時期はかなり重要に見えてきます。

 真林館事件の詳細はまだ明かされていません。しかし、もしこの事件そのものにビヨンドが関わっていたとすれば、現在の暗黒大陸進出ともつながってきます。実際、カキンは「新生カキン帝国」となったことを理由に、各国との暗黒大陸不可侵条約を曖昧にする形で外の世界へ踏み出そうとしています。

 この流れは、ビヨンドにとってあまりにも都合がよく見えます。暗黒大陸の探索を本命とする彼にとって、カキンという国家の方針転換は、長年待ち続けた突破口だったのかもしれません。

 ただし、ビヨンドがカキンそのものを支配したいのかは分かりません。彼の目的はあくまで暗黒大陸の探索であり、王座そのものへの執着は薄いようにも見えます。自分の子どもを王にしようとするねらいがあるとすれば、それは暗黒大陸探索を始めるためのきっかけ、継続するための後ろ盾、あるいは得られるリターンを独占するための保険だった可能性があります。

◆チョウライの「父さん」は何を示すのか 王位継承戦の条件に隠れた伏線

 ビヨンドの子ども疑惑と並んで、王位継承戦の条件を考えるうえで重要なのが、第3王子チョウライの存在です。第33巻には、王位継承戦の参加条件として、国王ナスビ=ホイコーロの正室の子であることがすでに記されています。数年前の連載再開後、このルールの重みが改めて強調されたことで、チョウライがナスビの実子ではないという伏線にも注目が集まっていました。

 チョウライが後ろ盾としているのは、シュウ=ウ一家の組長オニオール=ロンポウです。彼はナスビの異母兄弟ですが、婚外子であるため、前回の王位継承戦には参加できませんでした。

 チョウライは念能力や念獣について聞くため、オニオールのもとを訪れます。その帰り際には「頼んだぞ…父さん…」というモノローグが入っています。この描写から、チョウライは第3王妃トウチョウレイとオニオールの子どもである可能性が高いと考えられます。

 もしそうであれば、王位継承戦に参加するためには、ナスビの実子である必要はありません。正室の子であれば参加条件を満たすというルールは、この時点ですでに示されていたことになります。

 チョウライとトウチョウレイは肌の色も近く、実の親子であることはかなり自然に見えます。さらに、オニオールに食事を食べさせている娘も、血縁者である可能性があります。

 オニオール自身は二線者であるため王にはなれませんでした。しかし、密かに自分の子どもをカキンの王にしようとしているのだとすれば、王位継承戦は単なる王子同士の戦いではなく、親世代の陰謀まで絡んだ血筋の争いという見方もできるでしょう。

 

 ──王子の中にビヨンドの子どもがいるかもしれない。この疑惑が浮かび上がったことで、ビヨンドの顔の傷、ネテロの過去、真林館事件、チョウライとオニオールの関係まで、別々に見えていた要素が一気につながり始めます。

 もちろん、現時点ではまだ仮説の域を出ない部分も多くあります。それでも、新しい事実が明かされるたびに過去の場面の意味が変わって見えるのが、『HUNTER×HUNTER』王位継承戦の面白さです。ビヨンドの仕込みがどこまで進んでいるのかを意識して読み返すと、何気ない一言や傷跡にも、思わぬ意味が隠れているのかもしれません。

〈文/相模玲司〉

《相模玲司》

編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動。メンズファッション誌の編集、週刊誌Web版での取材記事制作、アニメ・漫画関連のムック本制作など、幅広い媒体で編集・執筆経験を持つ。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画・映画を中心としたエンタメ記事の編集、構成確認、コンテンツ制作を担当している。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「HUNTER×HUNTER」第35巻(出版社:集英社)』

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