ザクは『ガンダム』シリーズを代表する量産機であり、やられ役の印象も強い機体です。しかし宇宙世紀には、そのイメージを覆すほど高性能なザクも存在しました。ザクの正統後継機として開発されたザクIII、ジョニー・ライデンが愛した高機動型ザクII R-2型、そして見た目はザクでも中身は別物といえるRFザク。設定をたどると、ジオンの量産機に込められた技術者たちの意地が見えてきます。
◆ザクIIIはなぜ“正統後継機”と呼ばれたのか ZZガンダムにも食らいついた高性能機
ザクといえば一年戦争で活躍したイメージがありますが、ジオン公国が消滅したあとも、ジオン残党派によって後継機が開発されていきました。その内の1機が『機動戦士ガンダムZZ』に登場したザクIIIです。
プラモデル『HGUC 1/144 ザクIII 量産型』の説明書によると、本機は連邦製のハイザックをザクの後継機と認めないアクシズの技術者が開発した機体とされています。ジオンの威信をかけて、真の後継機として開発しただけあって、最新技術が多数導入されたようです。
また、ザクの特徴である汎用性の高さを実現するため、各種オプションを装備することで、多様な戦況に対応可能なよう設計されています。
しかし、最終的に量産されたのは火力や攻撃能力で勝るドーベン・ウルフで、本機は数機分のメインフレームと幾つかのオプションがロールアウトしただけだったようです。
そんな本機のジェネレーター出力は2,150kw。プラモデル『HGUC 1/144 ドーベン・ウルフ』の説明書に記載された、ドーベン・ウルフのジェネレーター出力5,250kwと比べると、約半分程度の数値となります。マシュマー・セロが搭乗した改修機であるザクIII改も、プラモデル『HGUC 1/144 AMX-001ザクIII改』によると出力は2,860kw。ドーベン・ウルフには遠く及びません。
それでも劇中では、ザクの後継機とは思えないほど驚異的な活躍を見せています。アニメ第35話、第36話における戦闘では、ネオ・ジオンのエースパイロット、ラカン・ダカランが搭乗。2倍以上のジェネレーター出力を有するZZガンダムと互角以上の戦いを繰り広げました。
そして、アニメ第44話からは、強化人間に調整されたマシュマー・セロが搭乗するザクIII改が登場。第45話ではその圧倒的なパワーで、クィン・マンサを一時撤退に追い込みました。さらに、ラカン・ダカラン率いるスペース・ウルフ隊の戦いでは、拘束され一斉射撃を浴びるも、オーラでビームを跳ね返すなどオカルトな力も披露。
むしろ拘束しているワイヤーを手繰り寄せ、ドーベン・ウルフを1機道連れに自爆しました。この四肢を拘束されながらも、無理やり引き寄せるほどのパワーを見ると、ドーベン・ウルフとのジェネレーター出力ほどの性能差は感じられません。
◆ジョニー・ライデンはなぜR-2型を愛したのか “ザクの皮を被ったゲルググ”の実力
一年戦争の高性能ザクといえば、“真紅の稲妻”の異名を持つジョニー・ライデンの愛機として知られる、高機動型ザクII R-2型です。本機は元々、雑誌企画『モビルスーツバリエーション』(以下、『MSV』)で登場した機体となります。
本企画では高機動型ザク、俗にいうMS-06R系のバリエーションが数多く展開されたが、R-2型はその最終形態とも言える存在となります。プラモデル『1/144 S-06R-2 ジョニー・ライデン専用ザク HG』の説明書によると、本機はジオンが空間戦闘用の次期主力モビルスーツのコンペティションを実施した際、ジオニック社が提案した機体です。
コンペこそツィマットのリック・ドムに敗れますが、スペックはリック・ドムを上回っていました。本機はその見た目こそザクですが、当時開発中だったゲルググから部品の大部分を流用していたため、「ザクの皮を被ったゲルググ」とまで呼ばれています。
書籍『機動戦士ガンダムMS 大図鑑 (part.1)』(出版:バンダイ出版、1989年2月1日出版)に記載された、RX-78-2の出力は1,380kw。対して、書籍『GUNDAM MECHANICS 1』(出版:ホビージャパン、1998年5月1日)によると、R-2型のジェネレーター出力は1,340kwと、白い悪魔にも迫る数値を誇っていました。
ちなみに、プラモデル『1/144 S-06R-2 ジョニー・ライデン専用ザク HG』の説明書によると、R型は「連邦の戦艦を沈めるよりも調達が難しい」といわれるほど配備が少なく、パイロットたちの憧れの機体でもあったようです。
その中でもR-2型はわずか4機しか生産されておらず、選りすぐりのエースパイロットに与えられました。中でもクリムゾン・レッドと黒を基調に塗装された、ジョニー・ライデン少佐の専用機が有名です。
ただ、プラモデル『MG 1/100 ジョニー・ライデン専用ザクII』によると、少佐が本機に本機に搭乗していた期間はわずかだったとされています。それでも、ジョニーは「本機こそが愛機」と語っていたようです。
◆RFザクは本当にザクなのか 見た目と中身が違いすぎるレプリカMS
一年戦争から遥か先の時代にも、ザクは登場します。中には、見た目は一年戦争のころのまま、中身はギラ・ドーガすら上回る性能を持つ機体すらありました。それこそ模型企画『機動戦士ガンダムF90』に登場するRFザクです。
書籍『こちら月刊モビルマシーン編集部!』(出版社:KADOKAWA、2026年3月26日出版)によると、本機はオールズモビルと呼ばれる、ジオン残党軍を中心とした組織が扱う、18メートル級のレプリカ・モビルスーツ郡RFシリーズの内の1機です。
外見こそザクに似ていますが、最新技術を盛り込み開発されたことで、その性能はギラ・ドーガすら上回りました。また、フレームの構成部品はジェガン、グスタフ・カール、ギラ・ドーガ、ギラ・ズールなど、さまざまな部材が用いられています。
装甲材質は基本的にはチタン合金セラミック複合材が使われていますが、エースパイロット用の機体にはガンダムと同じガンダリウム合金を使用したケースもあったようです。
そしてジェネレーター出力は2,750kw。先述したザクIII改にも迫る数値を誇っています。機体性能については加速力・大気圏飛行能力はジェガンJ型に劣るものの、旋回性能は同等以上だったようです。
陸戦能力も高く、特に大気圏内におけるホバー装甲時の高速旋回性能に秀でていました。なお、当初開発されたのは前期型と呼ばれており、強奪したF90 IIのデータを元に、抜本的な改修を加えたのが後期型とされています。
──ザクは、どうしても大量に撃破される量産機として語られがちです。しかし、ザクIII、高機動型ザクII R-2型、RFザクの設定を見ていくと、その印象は大きく変わります。ジオンの名を受け継ぐために作られた機体、エースの愛機となった機体、そして後の時代にザクの姿をまとってよみがえった機体。それぞれに、たんなるやられ役では終わらない理由がありました。
量産機でありながら、時にガンダムタイプや高性能機に迫る存在感を見せるのがザクの面白さです。緑の装甲やモノアイの奥には、ジオンの技術者たちのこだわりと、エースたちの戦場の記憶が刻まれているのかもしれません。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
《北野ダイキ》
『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 AMX-001ザクIII改」 (C)創通エイジェンシー・サンライズ』


