『ガンダム』は、他作品に引用されたときほど存在感の大きさが分かるシリーズです。『銀魂』のような直球パロディだけでなく、『GTO』の声優ネタ、『アイカツスターズ!』のモビルスーツ演出など、思わぬ場所に“ガンダム愛”が隠れています。知ってから見返すと、ただの小ネタではなく、作り手の本気の遊び心に見えてくるかもしれません。
◆『アイカツ!』『ラブライブ!』にまで? アイドル演出で生きたガンダムの存在感
『ガンダム』のパロディは、ロボットアニメやギャグ作品だけに限られません。意外なところでは、アイドルアニメの中にもガンダム要素が入り込んでいます。
『アイカツ!』シリーズと『ラブライブ!』シリーズは、いずれも『ガンダム』シリーズと同じサンライズ系の作品です。そのためか、たんなる言葉遊びではなく、モビルスーツそのものを使ったような本格的な演出も見られました。
『アイカツスターズ!』では、自由に動き回る二階堂ゆずを逃がさないため、お付きの生徒がガンダムのハイパーバズーカで捕獲ネットを発射する場面があります。さらに第51話では、白銀リリィがガンダム試作2号機のアトミックバズーカを使用。接続から発射までのギミックが細かく再現され、ガンダムファンの目にも引っかかる場面となりました。
『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第13話「みんなの夢を叶える場所」では、お台場を舞台にしたフェス会場にユニコーンガンダム立像が登場します。しかも、ただの背景ではありません。ライブ中はデストロイモード、雨で中断している間はユニコーンモード、再開後は緑色のデストロイモードというように、アイドルたちの心情や会場の空気に合わせて姿を変えていました。
ここでのガンダムは、たんなるカメオ出演ではなく、ライブの高まりを支える演出装置のようにも機能しています。作品ジャンルが違っても、『ガンダム』という記号が持つ存在感は十分に伝わってくる場面です。
◆『GTO』ガンダム三兄弟はなぜ濃いのか 主役声優がそろったオタクトーク
『GTO』に登場するガンダム三兄弟は、名前からしてガンダム好きの中学生3人組です。修学旅行で同室になったIQ200の天才少女・神崎麗美に対し、どのガンダムが好きなのかを勝手に当てようとする、かなり濃いオタクトークを展開しました。
彼らは本当の兄弟ではなく、ガンダム好きという共通点でつながった同好の士です。部屋番号の「0080」を見て『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の話を始めたり、好きなガンダム作品から性格を読み取る「ガンダム占い」を披露したりと、会話のほとんどがガンダム尽くしでした。
さらに面白いのは、キャスティングまで含めてネタになっていた点です。演じていたのは、アムロ、ドモン、ヒイロといった『ガンダム』シリーズの主役級キャラクターを担当した声優陣。シャアの台詞を引用しながら楽しそうに話す姿も含め、『ガンダム』を知っているほど笑える作りになっていました。
ただの雑談シーンに見えて、声優、部屋番号、台詞、作品名の引用まで重ねたこの場面は、かなり計算されたガンダムネタだったといえます。
◆『焼きたて!! ジャぱん』『銀魂』はどこまで攻めたのか MSまで出るサンライズの遊び心
サンライズ制作作品の中には、パロディというより、ほとんど本物に近いモビルスーツが登場する作品もあります。その代表格といえるのが、『焼きたて!! ジャぱん』と『銀魂』です。
『焼きたて!! ジャぱん』第29話「迫撃!!ブラックジャぱん誕生!」では、黒い三連星を思わせるパン職人が登場します。東和馬の作った竹炭入りクロワッサンを食べたことで、3機のドムに搭乗し、ジェットストリームアタックを破られる名シーンが再現されました。
しかも、ドムを倒す側のガンダムはノーベルガンダムに置き換えられ、コクピットに乗る梓川雪乃はシーマ・ガラハウを思わせる姿になっています。『ガンダム』シリーズの中でも作品をまたいだ要素が混ざっており、ここでしか見られない濃い映像になっていました。
『銀魂』では、アニメ第232話から第236話にかけて描かれた蓮蓬篇が有名です。エリザベスのルーツである蓮蓬という宇宙傭兵部族が登場し、対侍用機動兵器「頑侍(がんさむ)」が描かれました。顔にはモザイクがかかっていますが、見た目はどう見てもガンダムを意識したもの。発進シーンでは「翔べ!ガンダム」がBGMとして流れるなど、隠す気があるのか分からないほどの攻めた演出です。
同じ制作会社だからこそ成立した、かなり大胆な遊び心。『銀魂』らしい悪ふざけでありながら、『ガンダム』を知っている人ほど細部まで楽しめる場面だったといえるでしょう。
◆『ケロロ軍曹』に残る“声”のガンダムネタ
モビルスーツを出さなくても、声優や名前によってガンダム愛をにじませる作品もあります。分かりやすい例が『ケロロ軍曹』です。
『ケロロ軍曹』は、『ガンダム』への愛が強い作品として知られています。ケロロ自身がガンプラ作りを趣味にしているだけでなく、ケロロ役の渡辺久美子さんはカテジナ、クルル役の子安武人さんはギンガナム、ガルル役の大塚明夫さんはガトーと、『ガンダム』シリーズに出演歴のある声優が多く参加しています。
『超劇場版ケロロ軍曹』では、作者を思わせる漫画家役に古谷徹さんが起用されました。ガンダムを慕うケロロの気持ちが、キャスティングによって形になったような場面です。
──『ガンダム』のパロディは、ただ有名作品を茶化すためだけのものではありません。モビルスーツの登場、声優ネタ、台詞の引用、背景演出など、それぞれの作品が自分たちの世界観に合わせて『ガンダム』を取り込んでいます。
知ってから見返すと、何気ない会話や背景の一場面にも、作り手の敬意や遊び心が込められていることに気づきます。長く愛される作品だからこそ、『ガンダム』は別のアニメの中でも共通言語のように機能しているのかもしれません。
〈文/最上明夫 編集/相模玲司〉
《最上明夫》
アニメ・漫画・特撮・映画など、幅広いエンタメ作品に関心を持つライター。作品内の設定やキャラクター描写、物語構成を丁寧に読み解き、読者が作品をより深く楽しめる記事制作を心がけている。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画を中心とした考察・解説コラムを担当している。
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