<PR>
<PR>

 『ガンダム』シリーズの“やられメカ”は、ただ弱いだけの機体ではありません。ガザC、ジムII、ボールはいずれも単機での戦闘力や生存率に不安を抱えながら、数をそろえること、前線を支えることを優先して作られた量産機でした。華やかな主役機の陰で撃破される姿ばかりが目立ちますが、その成り立ちをたどると、戦争を続けるために避けられなかった現実的な妥協が見えてきます。

<PR>

◆ガザCはなぜ“3回で限界”と言われたのか 数で戦う移動砲台の弱点

 『機動戦士Zガンダム』および『機動戦士ガンダムZZ』にてアクシズが運用した量産型モビルスーツであるガザC。その地球外生命体を思わせる独特なシルエットは、アクシズからやってきたネオ・ジオンの壮絶なバックグラウンドを思わせます。

 そんなガザCですが、実はとんでもない欠陥を抱えた機体でした。書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 48号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2020年5月26日出版)によると、本機は簡素な機体構造で、生産性の高さを実現した機体です。

 そのため、その設計は単機での運用ではなく集団砲撃戦を想定しており、単体での戦闘力は担保されておらず、総合性能は決して高くはありません。これはアクシズにおけるモビルスーツの絶対数不足を補うため、生産性を最優先とした設計が採られたからです。

 結果、耐久性に非常に難があり、本機を鹵獲したエゥーゴの技師によると3回戦闘すると空中分解すると酷評するほどでした。実際、グリプス戦役後250機生産されたガザCは、80機ほどしか残存していなかったようです。

 運動性も低く腕部は最低限作業や、アンバック・システムとして利用するための機能が確保されているだけで、格闘戦を行うのは困難とされています。脚部も重力下での歩行は考慮されておらず、モビルアーマー形態時にランディング・ギアや砲架として機能する程度でした。

 それでも可変形態の推力と、ナックル・バスターによってもたらされる火力は目を見張るものがあります。そのため、本機は機動性の高い移動砲台のような機体として運用するのが、最も優れた運用方法だったとされています。

 実際、作中では数にものを言わして、密集陣形による一斉射撃を行うことで、ティターンズ艦隊を圧倒しました。ただ、密集している故にねらわれやすく、百式のメガ・バズーカ・ランチャーで一網打尽にされてしまう場面もあります。

◆ジムIIはなぜ撃破され続けたのか 1万機級の量産が生んだ旧式機の宿命

 一年戦争の傑作量産機であるジム。その後継機として開発されたのが、『機動戦士Zガンダム』に登場するジムⅡです。書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 139号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2022年2月22日出版)によると、本機は当初一年戦争時に建造されたジムの先行量産型に、近代化改装を施したマイナーチェンジ機として建造されました。

 しかし、開発後期には完全新造機も生産され、RMS-179の型式番号が振られています。当然信頼性については、先行量産型を改装したものの方が低いようです。こうまでしてグリプス戦役の時点で旧式化していた機体を量産したのは、生産コストの低さという利点があったからとされています。

 そのため、連邦に広く配備されており、一説によるとその総生産数は1万機にも達するようです。書籍『MOBILE SUIT RGM‐79ジム』(出版社:双葉社、2010年5月25日出版)によると、本機は既存のあらゆる拠点で生産可能でした。一年戦争後の疲弊した戦力の回復が急務の連邦には、こうした数合わせのモビルスーツは重宝したようです。

 当然、グリプス戦役のころには型落ち機となっており、マラサイやハイザックに主力機の座を譲っています。それでも、大量配備されていたのもあってか、グリプス戦役でもティターンズ、エゥーゴで大量に運用されていました。ただ、案の定最新鋭機にはまったく歯が立たず、アニメ2話でもリック・ディアスに次々と撃破されています。

<PR>

◆ボールは本当に棺桶だったのか 低コスト支援機に託された苦肉の役割

 一年戦争におけるジムに並ぶやられ役といえばボールです。書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 119号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2021年10月5日出版)によると、連邦はV作戦を経て主力量産モビルスーツの開発を進めたものの、完成したジムの先行量産型は、生産期間の短縮が仇となって予定した性能を得られませんでした。

 それを補うため、連邦首脳陣はジムの支援機として、簡易型のモビルスーツの大量生産を決定します。それがボールだったのです。とは言っても、モビルスーツ戦に割り込めるほど、優れた性能を持つ機体ではありませんでした。

 本機は、空間作業用スペースポッドに、ガンタンクの主砲を搭載したRX-76を試作機とし、その基本設計をベースに開発されています。そのため、モビルスーツというには、非常にシンプルな機体として完成しました。

 生産コストもジムの4分の1以下で、戦争末期のソロモン戦やア・バオア・クー戦には1,200機以上が投入されています。そのため、基本的には集団戦法を基本としており、中・長距離支援が主な役割でした。

 こうした成り立ちから、単機での戦闘能力は非常に低く、小説『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』上巻では「丸い棺桶(コフィン・ボール)」「一つ目のマト(ワンアイズ・ターゲット」など散々な陰口を叩かれています。

 当然、損耗も非常に激しく、一年戦争でもモビルスーツの性能を前にあっけなく撃破されています。

 

 ──ガザC、ジムII、ボールは、どれも主役機のように単機で戦局を変える機体ではありません。耐久性に難があるガザC、グリプス戦役の時点で旧式化していたジムII、そして「棺桶」とまで呼ばれたボール。どの機体も、画面上では撃破される場面が目立ち、強いモビルスーツとは言いにくい存在です。

 しかし、それでも彼らは戦場に必要とされていました。アクシズには数を補う機体が必要で、連邦には低コストで大量配備できる戦力が必要でした。弱さの裏側には、生産性、補給、運用思想といった現実的な理由があります。だからこそ、これらの“やられメカ”はたんなる弱い機体ではなく、『ガンダム』の戦争描写を支えるもう一つの主役だったともいえるのではないでしょうか。

〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉

《北野ダイキ》

『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。

 

※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 ガザC」 (C)創通エイジェンシー・サンライズ』

<PR>
<PR>

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.