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※本記事には複数の『ガンダム』作品の内容が含まれます。ご注意ください。

 『ガンダム』シリーズの世界では、名前に「ガンダム」と付いていないからといって、ガンダムではないとは言い切れません。ペーネロペーは後年の設定でガンダムの系譜が強まり、ドーベン・ウルフはジオン系の見た目ながらガンダムMk-Vの流れをくむ機体です。さらにブルーデスティニー1号機は、ジムの頭部を持ちながら中身はほぼガンダムという複雑な立ち位置にあります。機体名や顔だけでは分からない“ガンダムの境界線”をたどると、開発や政治の事情が見えてきます。

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◆ペーネロペーはなぜガンダム扱いになったのか 名前に隠れた政治的な事情

 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のライバル機であるペーネロペー。名前こそガンダムの名前は冠していませんが、実は立派なガンダムの系譜にある機体です。これには、ペーネロペーが辿ってきた、奇妙な運命が関係しています。

 まず、初登場となった、小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〈上〉』においては、「機体設計思想そのものにはガンダム系モビルスーツの名残がある」とだけ説明されており、作中でもガンダムとは言及されていません。つまり、当初はガンダムではなく、あくまでガンダムもどきとして扱われています。

 しかし、ゲーム『SDガンダム GGENERATION-F』に登場した際、ペーネロペーのフライトユニットを分離させた形態として、オデュッセウスガンダムが設定されました。こうしてベース機体にガンダムの名を冠されたことで、ペーネロペーはガンダムとして扱われるようになります。

 2021年から展開されている劇場版でも、作中でケネスがペーネロペーを「俺が赴任前に送り込んだガンダム」と言及していました。そのため、近年ではガンダムと名前がついていないにも関わらず、ペーネロペー=ガンダムと認識している方も多く見られます。

 ただ、劇場版を踏襲した漫画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』第2巻では、ペーネロペーはガンダムとは扱われていません。これは、作中で「お偉いさんはガンダムを造ると反乱が起きると思ってる」という理由で、ペーネロペーにガンダムの名は与えられなかったと解説されています。

 そのため、作品ごとに連邦側が”ガンダム”にどのような感情を持っているのかをどう解釈するかによって、ペーネロペーの扱いは変化すると考えられます。

◆ドーベン・ウルフは本当にジオンの機体なのか ガンダムMk-Vから続く血筋

 『機動戦士ガンダムZZ』にてアクシズが運用したドーベン・ウルフ。作中では、ZZガンダムにも匹敵するパワーで、ジュドーたちガンダムチームを翻弄しました。そんなドーベン・ウルフですが、実はティターンズ系ガンダムの系譜にある機体です。

 書籍『Model Graphix Special Edition ガンダムウォーズIII ガンダムセンチネル』(出版社:大日本絵画、1989年9月1日出版)によると、グリプス戦役時ティターンズはサイコ・ガンダムの能力に大きな魅力を感じていたものの、パイロット供給の不安定さと、コスト高から安易に生産数を増やせず苦心していました。

 そこで、強化人間以外でも使える準サイコミュ・システムを搭載したうえで、機体をユニット化しメンテナンスの簡易化、コスト・ダウンのための大幅な小型化した機体の開発を要望します。その結果、誕生したのがガンダムMk-Ⅴです。

 そんな本機は3機が試作されますが、そのうちの1機がグリプス戦役終了後、ムラサメ研究所のローレン・ナカモト博士の手引きによりアクシズに送られ、ドーベン・ウルフの原型となったのです。

 つまり、ドーベン・ウルフはグリプス時代に開発された、連邦系ガンダムの系譜にある機体と言えるでしょう。また、後にドーベン・ウルフは、ガンダム風の改修を受け、原点回帰を果たすことになりました。

 書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 40号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2020年3月31日出版)によると、『機動戦士ガンダムUC』に登場したガンダムタイプの機体であるシルヴァ・バレトは、ドーベン・ウルフを改修したモビルスーツとされています。

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◆ブルーデスティニー1号機はなぜ“青いジム”に見えるのか 頭部だけでは分からない正体

 ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』に登場するブルーデスティニー1号機。アンチニュータイプシステムである、EXAMシステムを搭載した機体です。

 頭部がジムの形状をしているため、ジムの系譜にある機体に見えるかもしれません。作中でも「青いジム」と呼ばれているが、実は頭部以外はほぼガンダムといえる機体です。

 書籍『データコレクション(13) 機動戦士ガンダム 一年戦争外伝3』(出版社:KADOKAWA、1999年11月27日出版)によると、元々ブルーデスティニーは陸戦型ジムをベースに、EXAMシステムを組み込んだ専用の頭部ユニットを搭載して実験をしていました。

 しかし、陸戦型ジムの胴体ではシステムの負荷に機体が耐えられず、目標値を達成することができなかったようです。これを解決するため、EXAMシステムを搭載した頭部のみを取り外し、陸戦型ガンダムをベースに新規開発された機体へと移植されます。

 そのため、頭部こそジムですが、ガンダムといえる機体として完成しました。なお、のちに開発された2号機、3号機は最初から陸戦型ガンダムをベースとしているため、見た目もガンダムタイプとなっています。

 

 ──ペーネロペー、ドーベン・ウルフ、ブルーデスティニー1号機は、どれもひと目で「ガンダム」と分かる機体ではありません。名前にガンダムを冠していないもの、ジオン系の重モビルスーツに見えるもの、ジムの頭部を持つもの。表面的な印象だけを見れば、ガンダムとは別の存在に思えます。

 しかし、その裏側には開発系譜や設定の変遷、政治的な思惑、実験機としての事情が隠されています。ガンダムかどうかは、名前や顔だけでは決まらないのかもしれません。こうした複雑な立ち位置を知ると、見慣れた機体にも別のロマンが生まれます。『ガンダム』という名前の重さと、その境界の曖昧さこそが、シリーズの奥深さを支えているのではないでしょうか。

〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉

《北野ダイキ》

『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。

 

※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 ペーネロペー」 (C)創通・サンライズ (C)SOTSU・SUNRISE』

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