『アルプスの少女ハイジ』(以下、『ハイジ』)は、2024年でアニメ放送開始から50周年を迎えました。明るく朗らかなハイジと動物たちとの触れ合いや、周りの人たちとの交流を描いたこの作品は、今も多くの人に愛されています。しかし、実はアニメ化にあたって原作から大きく変更された点がいくつかあります。
◆クララはもっと前に立っていた? ヨーゼフはアニオリキャラ
『ハイジ』の最大の見せ場は、なんといっても苦労の末にクララが立ち上がる場面です。アニメ第50話の、ハイジが泣きながら「クララが立ってる!」と喜ぶシーンはとても有名です。しかし、実はその前にもクララは立っています。
クララが初めて自分で立ったのは、アニメ第48話です。近づいてきた牛に驚いて、思わずパッと立ち上がったのでした。
牛はそれ以上近づいてこず、力が抜けたクララはすぐ地面にへたり込むのですが、クララはなぜ立ち上がれたのか分からず混乱します。
第50話の印象が強くハイジたちの前で初めて立ったと思われやすいですが、実はクララが初めて立ったところを見たのは、そのとき隣にいたクララのおばあさまだけです。
また、『ハイジ』にはこんな裏話があります。担当プロデューサーだった中島順三さんが、スイスに関する情報を世界に発信しているWebサイト『SWI swissinfo.ch』の「「ハイジ」誕生秘話 制作者がロケ地スイスで語る」という2019年9月に配信されたインタビュー記事の中で、ハイジのおじいさんの相棒的存在である犬のヨーゼフが、原作に登場しないアニメオリジナルキャラクターであることを話しています。
インタビュー記事によると、ヨーゼフは、「実はキャラクターグッズを売り出すためのアイテムとして誕生した」とのこと。つまり大人の事情だったわけです。
原作は宗教色が強く、同インタビューで中島さんは「1つの宗教が良い、みたいな描き方はTVとしてはダメだったんです」と語っており、宗教色を排除した分、ヨーゼフをはじめとした動物たちとの触れ合いのシーンを多く追加したそうです。
ちなみにヨーゼフ以外にも、アニメオリジナルキャラクターはいます。たとえば、アニメ第4話から少しの間だけハイジが飼育していた小鳥のピッチーも、原作には登場しません。
──「クララが初めて立った瞬間」や「ヨーゼフの意外な誕生理由」など、慣れ親しんだ物語の裏には、意外な真実が隠されていました。
原作の持つ宗教的なメッセージを、動物たちとの温かな交流へと昇華させた当時の制作スタッフの情熱が、今もなお世界中で愛される名作を作り上げたのでしょう。
50周年を迎えた直後の今、あらためてハイジと仲間たちが教えてくれる「生きる喜び」に触れてみてはいかがでしょうか。
〈文/士隠カンナ〉
《士隠カンナ》
1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターといて活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。
※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「アルプスの少女ハイジ ハイジとクララ」(販売元:日本コロムビア)』


