2026年には新作アニメの放送が控えている『北斗の拳』。そんな『北斗の拳』の特徴の一つといえるのが、敵があげる断末魔の叫び声……。実は、これらの悲鳴には明確な意味があったそうです。
◆「ひでぶっ!!」は原哲夫先生の造語
原作の武論尊先生と作画担当の原哲夫先生が生み出した80年代を代表する漫画作品『北斗の拳』。作中では「ひでぶ!!」「あべし!!」「たわば!!」と今聞いても斬新な断末魔が数多く登場します。
実はこのあまりにも特徴的な悲鳴から、巷では「元は別の台詞だったが読み間違えた植字業者によって誤植された」という噂が広まっていました。しかし、実際には最初から意図された台詞であることが明かされているのです。
集英社文庫『北斗の拳』第15巻(出版社:集英社 1998年5月出版)のあとがきで、原先生が「ひでぶ!!」と「たわば!!」の断末魔について触れています。
それによると、「ひでぶ」は秘孔を突かれたハートが「痛ぇ」と叫んでいたところ、身体が内部から爆発したことで呂律が回らなくなり「ひでぇ」となり、言い終わる前に破裂するため「ぶ」が最後についた台詞だといいます。ちなみに、「たわば」は「助けてくれ」が同様の原理で変化した台詞になります。
一方で、原作の武論尊先生はこの事実を忘れてしまっていたようです。『北斗の拳2000 究極解説書 PART2』(出版社:集英社 1999年12月出版)では、対談企画の中で「“ひでぶっ”なんてのはただの誤植だからね」と語っており、原先生に間違いを訂正されていました。巷で囁かれていた誤植説の火元は意外にも原作者から来ていたのかもしれません。
──原作と作画の担当が別々の漫画家の場合、同じ作品でも苦労した点が異なることもあるのでしょう。しかし、断末魔の誕生秘話を知ると、それが決してマイナスではなくそれぞれのアイデアが相乗効果となっていることが分かります。だからこそ、より読者に長く愛される作品が誕生するのかもしれません。
〈文/fuku_yoshi〉
《fuku_yoshi》
出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5
※サムネイル画像:Amazonより 『「北斗の拳」第4巻(出版社:コアミックス)』



