2023年で連載開始40周年を迎え、新作アニメの製作が決定した『北斗の拳』には、あまり知られていない制作秘話や、スピンオフ作品でとあるキャラの意外な過去が明かされるなど、驚くべき裏話がいくつもあります。

◆実は北斗神拳の伝承者候補は5人いた!? 才能に恵まれなかった「キム」とは?

 北斗神拳の伝承者候補といえば、正統伝承者となったケンシロウを含めて長兄ラオウ、次兄トキ、三男ジャギの四兄弟と思われがちですが、実はキムという5人目の伝承者候補がいました。

 彼はラオウとトキのように血縁は無く、ケンシロウのように北斗神拳創始者の末裔という血統などもありませんでしたが、キムは彼らと同じく師・リュウケンの元で共に切磋琢磨していました。

 TVアニメの101話に登場し、リュウケンから才無きと判断され破門されてしまうという悲しい結末になったキムですが、『ジュウザ外伝 彷徨の雲』では、道場から去る前に、自らが焼いたパンをジュウザにプレゼントし、それを食べたジュウザから「いいパン職人になる」と温かい言葉をかけられています。

 北斗神拳は一子相伝ゆえ、正統伝承者になれるのは1人だけという厳しい世界。それを改めて教えてくれたのが、キムだといえるのかもしれません。

◆ケンシロウの恋人はユリアではなくユキちゃんだった!?

 北斗の拳といえば、1983年から1988年にわたって『週刊少年ジャンプ』で連載された長編漫画ですが、実はそのベースとなったのは同タイトルの短編読み切り漫画『北斗の拳』でした。

 読み切り版の『北斗の拳』は『北斗の拳』『北斗の拳Ⅱ』の2話構成で、1983年の『フレッシュジャンプ』4月号と6月号に連載されました。こちらは連載版とは違い、原作も原哲夫先生が手掛けており、北斗の拳の伝承者・霞拳四郎(以下、ケンシロウ)が日本進出を目論む悪の組織「泰山寺」の戦士たちを相手に闘いを繰り広げるという、『蒼天の拳』に似たストーリーとなっています。

 ケンシロウの恋人は泰山寺に命を奪われており、名前はユリアではなく「ユキちゃん」でした。主人公の名前「ケンシロウ」と北斗神拳の存在以外の設定は、連載版とまったく異なります。

 武論尊先生が原作で参加したことで、これらの設定を参考にして新たに連載版が生まれました。40年以上前の読み切り漫画とあって幻の作品扱いとなっていましたが、近年はコンビニで販売されている廉価版や、ガイドブック等にも収録され、その存在が知られるようになった、まさに「北斗の拳 エピソードゼロ」ともいえる作品です。

◆ハート様は14歳のころは美少年だった!? そして今やVtuber

 ケンシロウの最初の強敵・シンの部下であり、丸々と太った巨体はどんな衝撃も吸収することから「拳法殺し」の異名を持ち、ケンシロウも苦戦したハート様には驚きの過去がありました。

 2012年12月発売の『コミックゼノン』に掲載されたハート様の少年時代を描いたスピンオフ作品、読み切り外伝『HEART of Meet〜あの日の約束〜』によると、14歳の頃のハート様は「アルフレッド」という名で、鳥籠の中の鳥を愛でる病弱な良家の美少年だったのです。

 ハート様が異常に血を恐れる原因が姉の死によるものだったことも描かれました。

 さらに、『北斗の拳』35周年を記念してバーチャルハート様の名前でVtuberデビューも果たし、「ハート様のはーとふるステーション」というYouTubeチャンネルに動画を投稿するなど、主要人物でないにも関わらず今なお高い人気を誇るキャラクターとなっています。

◆断末魔の吹き替えはほぼアドリブ! みんなで順番に「レバ」「ニラ」「イタ」「メ」と言っていた!?

「あべし」「ひでぶ」など個性的なザコキャラの断末魔は、当時の少年たちの間に大ブームを巻き起こしました。

 中でもナレーションを担当していた千葉繫さんは、ザコキャラの断末魔の吹き替え時、アドリブを多用していたそうで、それが徐々にエスカレート。

 1994年出版の書籍『みんな声優になりたかった: 神谷明と25人の声優たち』では、「今日は後期印象派で死のう」と事前に吹き替え担当者同士で打合せし、「ゴッホ!」「ゴーギャン!」などと叫んだこともあったと神谷明さんは語っています。

 また、千葉さんは2015年出版の書籍『一声入魂!アニメ声優塾 (趣味どきっ!)』や、北斗の拳公式ウェブサイトの「北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー」で、声優陣で順番に「レ」「バニラ」「イタ」「メ」と言い、つなげると「レバニラ炒めライス」になるなど、好き勝手やっていたと語っています。

 しかし、中にはNGとなったものもあったようで、「ちーばぁー!」と自身の名前を叫んだところ「それはダメ」と言われたそうです。

◆シュウのモデルはクリント・イーストウッド!? 実は主要人物たちは海外の俳優がモデル?

 数々の魅力的なキャラクターも北斗の拳の醍醐味ですが、彼らにはモデルが存在していました。

 ケンシロウは原哲夫先生が大好きだったブルース・リーや松田優作に、映画『マッドマックス』の主役を演じたメル・ギブソンを組み合わせて誕生したと、原先生は2023年の11月にライフスタイル誌『GOETHE[ゲーテ]』のWeb版のインタビューで語っています。

 レイはロバート・ランバートという俳優が、シュウは名優クリント・イーストウッドがモデルだったことも明かされました。

 ほかにもサウザーは映画『時計じかけのオレンジ』に登場するマルコム・マクダウェル、ユダはボーイ・ジョージで、ユリアの兄であるリュウガはデヴィッド・ボウイなど、実在の人物をモデルに生み出されていました。

 しかし、ケンシロウの最大の強敵・ラオウについては、フランク・フラゼッタの絵がベースとなっており、そこに名優ルトガー・ハウアーの目だけモデルとして出来上がったキャラクターだったそうです。

〈文/lite4s〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.