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 北斗四兄弟の次兄・トキは、ラオウの実の弟でありながら心優しく対照的な性格で病におかされた独特な設定をもつキャラクターですが、彼の誕生秘話や裏設定はのちにさまざまな形で明かされています。

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◆名前の由来は「絶滅危惧種」

 長兄・ラオウは「修羅」や「王」を想起させる音感から、いかにも強そうなキャラクターをイメージさせます。

 それに対し、トキは名前を聞くとどこか「儚い」、「孤高」といったイメージを抱く読者も多かったのではないでしょうか。これには彼の「名前の由来」が深く関わっていました。

 20063月に双葉社より出版された『北斗の拳データFILE奥義秘伝書』によると、トキの名前の由来は「絶滅した鳥の“朱鷺”から名付けた」そうです。朱鷺(トキ)は、日本において環境省レッドリストで一時「野生絶滅」の状態まで減少していた鳥であり、病におかされ長く生きられないトキの設定とも重なります。

 由来となった鳥の朱鷺は、日本と中国の懸命な保護活動によって個体数が回復しましたが、トキはラオウとの兄弟対決で一時的に剛の力を得るために「刹活孔」を突いたことで、いくばくもない余命をさらに縮めることになりました。

 命名において着想を得た「絶滅危惧種」に、「宿命」や「兄弟の絆」など多くの要素が加わったことで、トキは『北斗の拳』の中でも屈指の人気キャラとなりました。

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◆モデルは世界的な宗教の「自己犠牲の象徴」から

 トキといえば、病によってやつれた顔と無精ヒゲ、穏やかな笑顔など、独特な風貌をしています。彼のキャラクターを語るうえで欠かせない要素の一つが「自己犠牲」ですが、このキャラクター像にはモデルが存在します。

 そのモデルは、世界最大の宗教「キリスト教」の神、イエス・キリストだったと20043月に出版された『北斗の拳 完全読本』(出版:宝島社)によって明かされています。

 確かにトキの長髪や体格、頭に付けている輪(冠)までも、イエス・キリストの特徴と一致します。また、トキが晩年に行っていた医療活動も、イエス・キリストの「救済」に符合し、ラオウとの対決や彼の最期もキリスト教の「自己犠牲」の理念に通じるものがあります。

 ケンシロウは、強敵(とも)の死という哀しみを背負うごとに強くなり、トキの死もラオウを倒すための大きな要素となりました。長兄・ラオウが立ったまま昇天したのは有名ですが、トキもまた、絶命したユリアの兄・リュウガを抱いた状態で立ったまま昇天しています。

 誰の手も借りず1人で逝ったラオウに対し、トキの昇天シーンは2人の生き方の違いを象徴するものであり、トキの「救済」「自己犠牲」という要素が際立つシーンだったといえるかもしれません。

◆実はケンシロウより先に「聖帝の身体の謎」に気づいていた

 聖帝・サウザーは、心臓と秘孔の位置が通常と左右表裏逆という“身体の秘密”により、「北斗神拳では倒せない」とラオウにも恐れられていました。

 最近では、お笑い芸人・チャンス大城さんがサウザーと同じくすべての臓器が左右逆の「内臓逆位」であり、学生時代に「サウザー」とあだ名を付けられていたというエピソードを披露し、ふたたびサウザーの身体の秘密が話題になりました。

 サウザーとの闘いの中で秘密に気づいたケンシロウでしたが、実は彼より先にトキはこの謎を解明していたのです。

 2人の対決を見守っていたラオウは、ケンシロウが苦戦する姿を見て、早くも勝利宣言をするサウザーに対し「おごるなサウザー!!」「きさまの体の謎はトキが知っておるわ!!」と発言しています。また、それを裏付けるように、倒れたケンシロウにトキが歩み寄ろうとするシーンが描かれています。

 しかし、伝承者として自分自身で謎を解明する必要があると悟っていたケンシロウは、トキを制止し、その後の闘いの中で見事に謎を解明して勝利しています。

 これは、医学に精通していたトキだからこそ、誰よりも先に気づくことができたといっていいでしょう。

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◆トキの「病の原因」は何度も設定変更されていた?

 トキが病におかされた原因は「死の灰」によるものですが、その具体的な経緯は何度も変更されています。

 初期の連載では、シェルターにケンシロウとユリアを入れたものの満員になり、トキだけが入れず「被ばく」したためとされていました。

 ところが、「周りのほとんどが子供ばかりなのだから、子供を肩車でもすれば入れるのでは?」など読者から多くの疑問の声が上がったといわれています。TVアニメ版では、シェルターのドアが故障したため、自らの力で外側からドアを閉め続けたと変更されました。

 また、新OVA『真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝』(2008年 レーベル:アミューズソフト)では、核戦争以前から難病におかされており、ケンシロウの北斗神拳伝承の意志を揺るがせないようにするため、自ら死の灰を被ったように改められています。

 さらに、『銀の聖者 北斗の拳 トキ外伝』(2010年 出版:新潮社)では、ケンシロウたちが向かったシェルターが、シェルターへと続くエレベーターに変更されています。エレベーターの重量オーバーでトキは入れず、ケンシロウたちが来る前に重量を軽くするために荷物を外へ捨てる描写もありましたが、トキは既に死兆星を見ていたことから、敢えて自らを犠牲にする形で死の灰を被ったと改められています。

 

 ──今なおスピンオフ作品で描かれ続けるトキは、ある意味ケンシロウを超える人気キャラクターだといえるでしょう。

 『銀の聖者 北斗の拳 トキ外伝』のタイトルが象徴しているように、トキは「救済」と「自己犠牲」に殉じたキャラクターで、まさに「聖者」といえる人物でした。

 そんな儚くも清らかな彼の生き方が、読者をいつまでも惹きつけてやまないのかもしれません。

〈文/lite4s

《lite4s》

Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「北斗の拳【究極版】」第7巻(出版社:徳間書店)』

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