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 ※この記事にはTVアニメ・漫画『北斗の拳』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・漫画『北斗の拳』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 原作者・武論尊氏は、あるインタビューでこう語っています。「(リュウの母親は)ユリアでもいいんじゃないかな?」と。

 ラオウの息子・リュウの母親が誰なのかは、原作でついに明かされることなく、今も『北斗の拳』最大の謎として残されています。

 候補として名前が挙がるのは、トウ、レイナ、そしてユリアの3人。それぞれに「あり得る理由」と「決定的な矛盾」が存在します。なぜ原作者はユリア説への未練を口にするのか、3人の候補を改めて整理します。

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◆原作で唯一ラオウを愛した女性──トウ

 まずリュウの母親としてよく名前が上がるのが、リハクの娘「トウ」です。トウは、作中で登場したキャラクターの中で唯一ラオウに想いを寄せた女性であり、実際ラオウのために命を投げ打っています。

 原作ではあまり深堀されませんでしたが、実は1984年から放送されたTVアニメ版では、トウが幼少時にオオカミに襲われていたところをラオウに救われ、恋心を抱くようになるというエピソードが描かれています。

 つまりトウは、ラオウの子を宿す動機を十分に持っていると考えられる人物なのです。そもそもラオウが放つ闘気は、誰しもに恐怖を与えるモノ……。しかし、トウはその恐怖をも上回る一途な愛を持っていたので、肉体・精神ともにラオウに釣り合う資質は十分にあったと推察できます。

 しかしトウがリュウの母親だった場合、矛盾する点が2つあります。まず1つが、お互いの立場です。トウは南斗正統血統であるユリアを支える南斗五車星の娘であり、ユリアを手に入れようとするラオウと敵対する急先鋒の立場でした。

 事実、トウはユリアの影武者まで務めるほどだったので南斗にとっても重要なポジションにいたことがうかがえます。このことから、2人が密会することは現実的に考えられないでしょう。

 そして、2つ目がトウの最期の描写です。トウは、ラオウに想いを伝えたのち、正式にラオウからユリアを諦めることはできないと断られています。しかし、少しでもラオウの心の中に己を残そうとして、自ら命を失っているのです。

 仮に、ラオウとの間に子供がいたとしたら、トウの性格なら命を失うという選択肢は選ばなかったのではないでしょうか。

◆幼少期からラオウを支えた女性──レイナ

 もう1人可能性が高い人物が、2006年3月に劇場公開された『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』で初登場した女性・レイナ。

 レイナは原作には登場していませんが、ラオウを主人公としたサイドストーリーでは、兄・ソウガとともにラオウの幼馴染だったことが明かされています。そんなレイナは、覇道を歩むラオウを初期のころからサポートしていました。途中、ソウガの件で行き違いがあったものの、最後まで拳王親衛隊隊長としてラオウを献身的に支えているのです。

 一方でラオウもレイナが敵の矢を受けて重傷を負った際、真っ先に駆け寄り助けるなど、たんなる部下とは一線を画す存在として描かれています。またラオウがケンシロウとの決着をつけに行く際に、レイナにお互いの故郷である「修羅の国で待つように」と伝えていました。

 ちなみに、劇場版『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章』でラオウがケンシロウに敗れたのち、黒王号が丁重に包まれたラオウの遺灰を持ち帰るのですが、レイナは「お帰りなさい」と大事に抱えながら水葬しています。このように2人の間には確かな絆があったと考えられるでしょう。

 しかしレイナが母親だった場合、レイナの恋心の自覚という矛盾点が存在します。スピンオフ作品『天の覇王 北斗の拳ラオウ外伝』では、レイナはマミヤと出会うまで、自分がラオウを愛するが故に戦ってきたことを自覚していないのです。

 とはいえ、時系列的な矛盾点は少ないのも事実。原作未登場という点さえ目をつむれば、レイナがリュウの母親だったケースが一番納得できるのではないでしょうか。

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◆慈母星の宿命を背負ったヒロイン──ユリア

 最後に、外せない候補となるのがヒロインであるユリアです。やはり原作内において、ラオウが最も執着した女性はユリアただ一人だった点は注目すべきでしょう。実際、ラオウは力づくでユリアを手に入れようとしていましたし、「従順か、命を落とすか」の2択まで迫っていました。

 ただし、ユリアがリュウの母親だった場合、矛盾点がいくつもあります。まずは、時系列的な矛盾です。トウのところでも触れた通り、ラオウとユリアは立場的に簡単に会うことができません。それ以前にユリアにとっては会う動機すらないでしょう。

 そうなると2人の接点があったのは、ラオウが無想転生を習得しようとユリアのいる城を襲撃したあの夜だけしかあり得ません。また、仮に子を宿していたとしても、ユリアはトキと同じ余命いくばくとなる病気を患っており、ケンシロウと暮らした短い余生の中で果たして出産ができたのかという疑問が残ります。

 そして、矛盾……というよりも倫理的な問題も出てくるでしょう。ユリアはケンシロウの婚約者であり、両者は愛し合っていました。そんな中で、ユリアがラオウの子供を宿したということは、ラオウが卑劣な手段を使った可能性が出てきてしまうのです。

 仮に少し強引に考察すると、「慈母星」を宿星に持つユリアは、あまねく人々にその「慈母」の光を降り注ぐという設定があります。それゆえに、「慈愛」を持ってラオウを受け入れた、とも考えられるかもしれません。

 ただし、どちらのケースにしてもラオウとユリアのそれぞれのキャラクター性が崩壊することになるでしょう。実はこの問題について、1986年9月に発売された『週刊少年ジャンプ特別編集 北斗の拳 SPECIAL』のインタビューから制作側の苦悩が見て取れます。

 当初、武論尊氏はリュウの母親をユリアにしようとしていたそうですが、作画担当の原哲夫先生と編集担当の堀江信彦氏の猛反対を受けたと明かされているのです。

 『北斗の拳』のオフィシャルWebサイトで行われた、『北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー「北斗語り」』でも、武論尊氏は「リュウの母親に関しては、誰っていう設定はない」と前置きしつつも「ユリアでもいいんじゃないかな?」と語っています。

 原作者としては、ラオウとユリアの間に何かしら描けなかった想いが残っているのかもしれません。しかし、やはりユリアはケンシロウと結ばれていてほしいというのが、大方の読者の希望ではないでしょうか。

 

 ──当初リュウは養父母に預けられた赤ん坊の時点で、既にラオウが他界していたと描写されていました。しかし、のちにラオウは生前リュウと会っていたという設定が付け足されていて、いつ生まれたのかよく分かっていません。

 しかし、そんな後出しの設定が多いのも『北斗の拳』の魅力の一つです。もしかしたら、今後読者が納得できるような新たな母親候補が出てくるのかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「北斗の拳 究極版」第10巻(出版社:コアミックス)』

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