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※この記事にはTVアニメ・漫画『北斗の拳』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・漫画『北斗の拳』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 タキの悲劇は、ただの不運では片づけられないのかもしれません。新作アニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』第8話では、ケンシロウが岩盤を砕く名場面が描かれました。なぜ最初からそうしなかったのか。バット帰郷編には、いくつかの素朴な疑問が残ります。

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◆ケンシロウは本当に最初から岩盤を割れたのか タキの悲劇で変わった拳

 「ほんの僅かな水のために汚れなき命が奪われてしまう」

 「なんて時代だ」

 新作アニメ第8話では、物語終盤にタキを想ってケンシロウが固い岩盤を拳で砕きます。感動的なシーンですが、ここで「え、拳でいけたの?」「だったら何でもっと早く岩盤を割らなかったのか?」と疑問に思った人も少なくないのでは?

 それもそのはずで、枯渇した井戸の底の固い岩盤の下には「水脈がある」という情報は、バットたちが帰郷してからすぐ明かされていた情報です。もし、その時点でケンシロウが岩盤を割っていたなら、少なくともタキが命を落とすことはなかったのかもしれません。

 しかし、実は村に到着した時点のケンシロウは岩盤を「割れなかった」可能性が高いのです。その根拠として、ケンシロウが岩盤を割ろうとした際に、バットが「いくらケンでも岩盤を割るなんて……」と言っていました。

 バットは、これまで曲がりなりにもケンシロウと強敵との戦いを最も間近で見てきた存在です。このセリフは、そんなバットの目から見ても、ケンシロウが岩盤を割るのは不可能だと感じていたのではないでしょうか。

 しかし、北斗神拳は哀しみを背負うごとに力が増す拳法……。そして、その「拳」の真髄は時に「哀しみ」であり、「怒り」であり、「愛」なのです。

 つまり、幼い命が奪われた「哀しみ」、そして理不尽な時代への「怒り」が極まり、初めてケンシロウに岩盤を砕く力を与えたのではないでしょうか。

 ゆえに、最初に村に到着した時点のケンシロウでは、岩盤を拳で割るといった芸当はできなかったと推察できるのです。

◆タキはなぜ一人で水を汲みに行ったのか 優しさが招いた危うい判断

 タキは作中でもトップクラスの優しい子どもであると同時に、とてつもない行動力を持った子どもです。結局、第8話の物語後半ではその行動力が仇となってしまいます。

 タキは隣村の井戸に1人で水を汲みに行くのですが、バット曰く「無断で水を汲んだらまず生きては帰れない」という危険な状況でした。ここで疑問なのは、そんな危険な状況なら、なぜケンシロウに相談しなかったのか、という点です。

 ここで考えられるのは、大きく3つの理由です。まず1つは、子どもである自分だけのほうが目立たずに行けるという自信があった可能性です。タキは、途中ケンシロウに助けられたとはいえ、大人でも厳しそうな灼熱の砂漠を、紫外線で目をやられた状態で踏破していました。これはまだ子どものタキにとっては大きな自信となったと考えられます。

 そして2つ目は、単純にケンシロウという男手に怪我をさせてはいけないという配慮からです。心優しいタキなら、相手を思いやれるでしょう。特にケンシロウは、せっかく村を救いに来てくれた存在で、何より現時点で井戸が掘れる唯一の人物でもあります。つまり、万が一にも怪我をさせるわけにはいかないとも考えたのではないでしょうか。

 そして3つ目が、「無断で水を汲みに行く」という後ろめたさがあった可能性です。タキはケンシロウを神様と捉えていました。いくら、育てのお婆さんのために少量とはいえ、許可なく水を汲むことは決して良いこととはいえないでしょう。つまり、そんなことに、神様の助力を得るのは忍びないと思ったのかもしれません。

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◆ケンシロウはなぜ偵察兵を逃がしたのか 水を求める者への複雑な判断

 井戸を掘り当てたあと、遠巻きに監視していたジャッカルの偵察兵がすかさずやってきてしまいます。ケンシロウはトヨに「誰にもここを悟られてはダメだ」と警告していたのですが、そんな危機的状況が早速起こってしまったわけです。

 しかし、ケンシロウはなぜか「水を飲んだらさっさと出ていけ。そして、ここに井戸があったことは忘れるんだ」と寛容な態度で対応しました。さらに、実力行使をしてきた偵察兵たちに対しても「北斗虚無指弾」と数日の記憶を消させる技を使い、命は奪わなかったのです。これまでのケンシロウからしたらかなり寛大な処置とも言えるでしょう。

 この理由については、2つの可能性が考えられます。まず1つは、命を奪ってしまったほうが村にとってリスクになる可能性です。仮に命を奪った場合、彼らに仲間たちがいたとしたら、異変を調べるため、再び村へ来る危険性が増します。

 つまり、ケンシロウは記憶を消して帰したほうが、彼らが再び襲ってくる可能性が低くなると踏んだのではないでしょうか。

 そして2つ目は、敵がただ「水」を求めてやってきたからです。タキはお婆さんに僅かな水を飲ませるために亡くなってしまいました。「なんて時代だ」というケンシロウの発言からも分かる通り、その悲劇は時代そのものに起因していると考えています。

 ただ水を求める──ケンシロウはもしかしたらそこに善悪は関係ないと感じたのかもしれません。実際、第1話ではケンシロウも水を求めていましたし。だからこそ、ケンシロウはその行動にタキを重ねて、命までは奪わなかったのではないでしょうか。

 

 ──タキは劇中で明かされた通りまだ7歳であり、フィクションとはいえ命を落としてしまったことに衝撃を受けた人も多かったでしょう。しかし、北斗神拳は「哀しみ」を背負うことを真髄としており、『北斗の拳』のテーマも世紀末の理不尽な時代に「愛」を持って生きることにあります。そういった意味でも、タキが亡くなってしまうことは物語に必要な悲劇だったのかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で約10年にわたり編集業務に従事した元編集者。男性向けライフスタイル誌やムック制作のほか、漫画編集者としての経験も持つ。現在はフリーライターとして、映画・アニメ・漫画などサブカルチャー領域を中心に記事を執筆。漫画考察記事では、元編集者の視点を活かし、作品内の描写や設定を論理的に読み解く記事制作を得意としている。

 

※サムネイル画像:アニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』公式サイトより 『「北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-」第8話 場面写真 (C)武論尊・原哲夫/コアミックス, 「北斗の拳」製作委員会』

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