スタジオジブリ制作の映画『火垂るの墓』が、きょう7月15日16時より、Netflixにおいて日本国内で初配信されます。『火垂るの墓』は、原作者・野坂昭如さんと妹たちとの実体験の一部が描かれていますが、この野坂昭如さんという人物は、かなりハチャメチャな人だったといいます。

 また、ジブリ作品の裏側には、あまり知られていない裏設定というものが存在します。

◆『火垂るの墓』原作者・野坂昭如の「破天荒ぶり」がヤバい

 スタジオジブリ制作の映画『火垂るの墓』は、原作者・野坂昭如さんと妹たちとの実体験の一部が取り入れられていますが、妹思いで優しい清太とは裏腹に、野坂さんはなかなか破天荒な人物でした。そのエピソードはまさに「事実は小説より奇なり」と言わざるを得ません。

●入院するレベルのアルコール依存症だった?──泥酔して映画監督と殴り合いの大ゲンカ

 野坂さんは若い頃からお酒の失敗の絶えない人であり、中島らもさんの『さかだち日記』(出版社:講談社、20025月出版(文庫版))というエッセイに、アルコール依存症についての対談が収録されています。

 1990年には映画監督の大島渚さんとトラブルに発展したこともあります。当時、野坂さんは大島さんの真珠婚式パーティーであいさつを行う予定でしたが、大島さんの勘違いにより祝辞の順番を飛ばされ、その間に野坂さんは大量に飲酒して酩酊状態となってしまったそうです。

 なんとか登壇して祝辞を終えたものの、野坂さんは順番を飛ばされたことに激怒して、野坂さんのあいさつを聞いていた大島さんの顎を目がけて右フックを食らわせたのだとか。

 大島さんも怒り、マイクで野坂さんの頭部などを2発殴りつけ、大島さんの妻で、女優の小山明子さんが止めに入った姿が何度もテレビで放送されてしまったといいます。

 2015年に野坂さんが亡くなった際、小山さんが『スポーツニッポン』の取材に答える形で当時を振り返りましたが、「あれはもう笑い話」と語っています。

 また、198711月に出版された『赫奕たる逆光:私説・三島由紀夫』(出版社:文藝春秋)で、野坂さんの祖父もお酒で失敗しており、警察官から骨董品を扱う仕事に転職したと明かしています。酒癖の悪さは遺伝なのかもしれません……。

●永六輔さんの会社で使い込みをする?──警察の追及を恐れた結果……

 野坂さんには、大学生の頃に勤めていた会社のお金を使い込んでしまったという破天荒なエピソードもあります。

 歌手・さだまさしさんが書いた『笑って、泣いて、考えて。永六輔の尽きない話』(出版社:小学館、201611月出版)によると、野坂さんは、永六輔さんの会社で経理担当の専務に就いていましたが、ミスを連発し会社の経営が悪化。

 さらに、野坂さんは会社のお金を使いこんでいたことが発覚し、クビになってしまったそうです。

  2015年9月に出版された『マスコミ漂流記』(出版社:幻戯書房)によると、野坂さんは使い込みをしたことを認めており、警察から追及されることを恐れて、公訴時効がいつなのかを六法全書で調べたことがあるとのこと。野坂さんの破天荒ぶりは、若い頃から健在だったようです。

詳しく読む⇒清太がもしも大人になっていたら…… 『火垂るの墓』原作者・野坂昭如の「破天荒ぶり」がヤバい

◆ジブリ作品の意外と知らない裏設定

 子供から大人まで幅広い世代に愛されるジブリ作品ですが、その夢や愛にあふれる世界観の裏には、知られざる「シリアスな裏設定」が存在しています。

●海外に売られ、夫を……エボシの壮絶な過去──『もののけ姫』

 ファンタジーでありながら、環境問題をテーマにするなど、ジブリ作品の中でもシリアスなストーリーの『もののけ姫』。深山の麓でタタラ場を率いる女棟梁・エボシ御前(以下、エボシ)には、映画では語られなかった「壮絶な過去」がありました。

 書籍『“もののけ姫”はこうして生まれた。』(出版社:徳間書店 1998年出版)によれば、エボシはタタラ場を作る以前、倭寇の頭目にさらわれて海外に渡り、人質という形で強引に妻にさせられていました。

 その後、頭目の配下であったゴンザと密かに協力し、謀反に近い形で夫である頭目の命を奪って全財産を盗み、倭寇から脱走したとされています。

 また、映画パンフレットによると、エボシはかつて平安時代末期から鎌倉時代にかけて起こった歌舞の一種である「白拍子」を演じる芸人だったとされており、宮崎駿監督の著書『折り返し点』(出版社:岩波書店 2008年出版)では、「鈴鹿山の立烏帽子」と呼ばれた伝説上の人物・鈴鹿御前がモデルだったとも明かされています。

 エボシは、山犬など敵とみなした相手には容赦ない「冷酷さ」と、身売りされた若い女性や迫害された病人たちを引き取り、仲間として大切にする「愛情深さ」をあわせ持つ女傑として描かれました。

 エボシの過去の設定はかなりシリアスで、アニメ映画に盛り込むのは難しい内容でしたが、彼女の二面性はこうした過去の体験に起因するものだったのでしょう。

 映画『もののけ姫』が非常に奥深い作品であることは言うまでもありませんが、今なお多くのファンに愛されている理由の一つは、こうした緻密な「裏設定」にあるのかもしれません。

●おソノさんは若いころ「暴走族」だった!? ──『魔女の宅急便』 

 13歳を迎えたキキが、魔女の修行で訪れた町・コリコで、「グーチョキパン店」を営む女将・おソノには、実は驚くべき設定があります。

 2013年に出版された書籍『ジブリの教科書5 魔女の宅急便』(出版社:文藝春秋)には、「もしかしたらゾク(暴走族)だったのかも」というスタッフの意見が記されています。

 また、映画の終盤では、キキの救出劇に興奮して産気づき、エンディングで無事に出産する様子が描かれていますが、「赤ちゃんを産んだ後のおソノさんがバイクに乗る」という別案があったことも明かされています。

 映画のパンフレットでは、「青春時代、それなりにツッパった経験を持つ」と冗談なのか真実なのか分からない書き方で紹介されていたおソノの過去ですが、これらの書籍の記述からすると、「ツッパった経験」は事実だったのかもしれません。

 映画の中で、トンボと仲間たちは地元の不良グループのように描かれていますが、実はこの描写は「コリコの町には、昔から不良グループがいる」という伏線だった可能性があります。そう考えると、思わぬところに「かつてのワル」がいたとしても不思議ではありません。

 突然やってきた見ず知らずのキキに対し、コリコの町の住人の多くは冷たい態度を示しました。そんな中、おソノがキキを懐深く迎え入れ良き理解者となったのは、こうした過去の「ツッパった経験」があったからこそだったといえるかもしれません。

詳しく読む⇒ジブリ作品の意外と知らない裏設定 「エボシは海外で酷い目に……」「おソノさんは昔……」ほか

〈文/アニギャラ☆REW編集部〉

 

※サムネイル画像:『「火垂るの墓」キービジュアル © 野坂昭如/新潮社, 1988』

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