『HUNTER×HUNTER』では、キルアが闇落ちしてゴンと戦うのではないかと、一部のファンの間で考察されることがあります。果たしてキルアは本当に闇落ちしてしまうのでしょうか? また、本作にはカイトが少女に転生するなど、いくつか疑問点が存在します。

◆「キルア闇落ち」の伏線“シルバの言葉”はホントになる?

『HUNTER×HUNTER』では当初から闇の住人と称されるキルアが闇落ちして、ゴンと戦う展開になるのではないかという予想が多かったです。しかし、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』でうずまきナルトとうちはサスケのライバル対決が実現して以降は、冨樫先生は同じような流れにはしないだろうという見解も増えました。

 ただ、キルアが闇落ちしそうな伏線は以前から散りばめられており、選挙編ではこれまでと比べても最大級といえる伏線が追加されることに。果てしてキルアの闇落ち率は現在どのようになっているのでしょうか。

●1度実家に帰るも伏線は生きているのか──シルバの言葉

 ハンター試験後、キルアは実家に連れ戻されますが、ゴンたちと再び旅立つときにシルバは「いつか戻って来る。あいつはオレの子だからな」と闇落ちの伏線ともとれる言葉を放っています。父親でありシルバほどの実力差の言葉が的外れとは思えず、将来キルアが家業を継ぐ可能性は高そうです。

 ただ、キルアはイルミに刺されていた針を抜いた後、不遇な扱いを受けるアルカを救うために1度ゾルディック家に戻っています。これによって伏線は回収されたという見方もできます。

 しかし、シルバが根拠としているのは、「あいつはオレの子だからな」というものです。キルアが家に戻ったのはゴンを元に戻すため、ひいてはアルカを助けるためというはっきりした目的がありました。

 シルバはイルミの針が刺さっているから、アルカがいるからという要素は根拠としていません。「あいつはオレの子だからな」というのは、血や人間性などもっと根本なものでしょう。

 そのため、このシルバの言葉はキルア闇落ちの伏線として、まだ十分生きていると判断できます。キルアの心に大きな負の衝撃を与える出来事が起これば、ゾルディック家の血もしくは彼の人間性の闇の部分が覚醒する可能性はあるでしょう。

●イルミからの解放で伏線は回収されたのか──ビスケの言葉

 キルアはビスケに見切りの早さ、戦いに慎重すぎるという弱点を指摘され、いつかゴンを見捨てると忠告されました。「ゴンを見捨てる=闇落ち」と解釈できますが、この悪癖はイルミに刺された針によって操作されていたもの。ラモット戦で針を抜き取ったことで、ビスケの言葉の伏線は回収されたと考えてよいでしょう。

 ただ、イルミの針を抜いてしまったせいで、新たな伏線が発動してしまった可能性もあります。これまでイルミの針による暗示でキルアは勝ち目のない相手には逃げの一手を選択するよう導かれ、それが彼の命を守っていました。

 その枷がなくなったということは、理由があればキルアは自分より格上の相手とも戦う可能性が出てきたということです。もしキルアにとって身近な人が酷い目にあったり、命を奪われたりしたら彼はそれを実行した相手に戦いを挑むでしょう。

 その結果、キルアにとってもっと大事な人を失うことになったら、後悔と憎しみから心の闇が覚醒してしまいそうです。そうすれば、彼が闇落ちする展開も大いに考えられます。

詳しく読む⇒「キルア闇落ち」4つの伏線 『HUNTER×HUNTER』“シルバの言葉”はホントになる?

◆カイトはなぜ「少女に転生」できたの? 『HUNTER×HUNTER』2つの疑問

HUNTER×HUNTER』には一見、矛盾しているように感じるキャラクターの行動、カイトが少女に生まれ変わった仕組みなど疑問に思える点があります。ゲンスルーが「リスキーダイス」を振った理由、カイトが自らの魂を転移させた能力とは?

●ゲンスルーは「リスキーダイス」をなぜ振った?

 ゲンスルーは「税務長の籠手」を使ってツェズゲラ組からカードを奪う作戦を決行する前、サブとバラだけに危険を背負わせないと「リスキーダイス」を振りました。彼は「ヤバイ橋を渡る時は3人いっしょだ」と言っていましたが、この行動にはこの後のゴン組対ゲンスルー組の戦いに読者の目を集中させる意図があったと思われます。

 20面体のサイコロである「リスキーダイス」は、1面だけ大凶でその他の面は大吉です。大吉が出るととんでもない幸運が起こりますが、大凶が出るとそれまでの大吉分がチャラになるほどの不幸が訪れます。しかも、すべての「リスキーダイス」は連動していて別の人、別のサイコロで出た大吉分も蓄積され、大凶を出した人にその分の不幸も降りかかる仕組みです。

 そのため、ゲンスルーが「リスキーダイス」で大凶を出していれば死んでいた可能性もありました。サブからも「意味ねームチャすんなよ」とたしなめられていましたが、ツェズゲラ組との駆け引きを見ても慎重で用意周到な性格のゲンスルーがこのような無謀な行動に出たことに違和感を覚えた読者もいたのではないでしょうか。

 とはいえ、この行動一つで読者からすれば突如出て来た感があるサブ、バラとゲンスルーの3人の結束がいかに強固なものであるかが伝わりました。なにせゲンスルーはハメ組の初期メンバーの1人で、このグループが結成されたのは5年前です。

 長期間、一緒に過ごして苦労や喜びを共有したにもかかわらずニッケスたちに特別な感情を持つことなく、盛大に裏切ったうえあっさり命を奪っています。このことから、ゲンスルーに対して、ものすごく冷酷で非情なイメージを持った人は多いでしょう。

 しかし、この印象のままストーリーが進んでしまうと、読者の頭にはゲンスルーがいつかサブやバラも陥れて裏切るのではないかという考えが残ってしまいます。そして、ゴン組との戦いで不利な状況になればなるほど、保身のためにゲンスルーが仲間を裏切る可能性は高くなるでしょう。

 そうなるとゲンスルー組対ゴン組の対戦のとき、ゲンスルーがいつ裏切るのかということに多かれ少なかれ読者の意識をそがれてしまいます。これを解消させるには回想シーンでゲンスルーたちの関係性を読者に示すという方法もありますが、こういった手法をメインキャラクター以外で使うのはストーリーのテンポを悪くしがちです。

 回想シーンを使わずに、ゲンスルーが「リスキーダイス」を振る1シーンで彼らの関係性の強さを示したのは秀逸といえるでしょう。そして、これによってゴン組とゲンスルー組の戦いに読者の意識を集中させることにも成功しています。

●カイトが少女に転生した仕組みは?

 ネフェルピトーに倒されたカイトは、その後キメラ=アントの女王から生まれた1人の少女に転生しました。この魂の移動の仕組みやカイトの能力については謎に包まれていますが、コアラのキメラ=アント(以下、コアラ)が少女の正体について語っています。

 コアラが生まれ変わった少女カイトに話していた内容をまとめると、以下の3つです。1つ目は記憶を取り戻したキメラ=アントは、生前の魂をそのまま引き継いでいるということ。2つ目は魂を引き継いだ場合、死ぬ前の人生と同じことを繰り返す傾向があり、それをバカげたサイクルだと言っています。そして、3つ目はそのサイクルから魂が解放された場合、その体には別の魂が入るとのことです。

 コアラには死ぬ前に殺し屋をやっていた記憶があり、キメラ=アントとして生まれ変わっても人の命を奪うことを生業としている自分に同じことを繰り返していると感じていました。そのため、キメラ=アントたちに命を奪われていく人間が魂をそのままに生まれ変わっても、再び搾取される立場になると思い少女の魂が解放されることを祈りながら撃ちました。

 そして、その少女と生まれ変わったカイトが似ていることから、少女の魂は解放されてその体にカイトの魂が入ったのではないかと考えています。コアラの言葉通り、母親想い、妹思いで家族のために魚を釣りに出ていたコルトは、キメラ=アントになってからも餌を調達することに熱心でした。しかし、無駄に命を奪うことは嫌い、自分を産んだ女王蟻のことをもっとも気にかける母親想いの一面を見せています。

 また、ウェルフィンも生前に自分たちの王として認めていたジャイロを追って旅立ちました。このことから魂を引き継いだ者は、やはり同じサイクルを歩む傾向があるといえるでしょう。

 コアラの考えからすると少女の魂はバカげたサイクルから解放され、その体には代わりにカイトの魂が入ったことになります。しかし、カイトは女王蟻に捕食されてはいないので、その魂がどのようにして少女の体に入ったのかというのは疑問です。

 これにはやはりカイトの能力である気狂いピエロ(クレイジースロット)が関係しているでしょう。ジン曰く、カイトに念能力や技を教えたのは彼であり、気狂いピエロ(クレイジースロット)には「ゼッテー死んでたまるか」と本気で思わないと出ない番号があるとのこと。

 つまり、カイトはネフェルピトーとの戦いで最初に出たロッドをはじめ、複数の武器を使って技を繰り出したものの、大きなダメージを与えられず次第に追い詰められていきます。ネフェルピトーは自分の強さがどのくらいか知るためカイトに戦いを仕掛けたこと、彼女がダメージを負っていたこと、カイトとの戦いが楽しかったと言っていることから、戦闘時間はある程度長かったと考えられるでしょう。

 そして、カイトが首をはねられる前に「ゼッテー死んでたまるか」と思ってルーレットを回して出たのが、ジンが言っていたナンバーだったはずです。

 能力の内容としては、カミーラの百万回生きた猫(ネコノナマエ)に近いでしょう。この能力はカミーラの死によって発動するカウンター型で、死後強まる念によって相手の命を奪って彼女を蘇生します。

 カイトの能力も死んだときに発動すると予想されますが、カミーラのように最初から自分が死ぬこと前提というとんでもない覚悟があるわけではないため、死後強まる念といっても相手の命を奪うまでの強さはないはずです。しかし、近くで生まれる命にカイトの魂を宿らせることは可能だと思われます。

 このような能力の仕組みでカイトの魂は、コアラに撃たれて解放された少女の体に入って生まれ変わったのでしょう。

詳しく読む⇒カイトはなぜ「少女に転生」できたの? 『HUNTER×HUNTER』4つの疑問

〈文/アニギャラ☆REW編集部 @anigala01

 

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