『HUNTER×HUNTER』においてゴンはネフェルピトーとの戦いのあと、念能力が使えなくなってしまいましたが、それにはいくつか理由が考えられます。また、本作にはカイトが少女に転生するなどいくつか疑問点があります。

◆ゴンが「念を使えなくなった」理由【考察】

 ネフェルピトーを倒すために限界を超えたゴンは念能力が使えなくっており、主人公なのに久しくストーリーにも絡んでいません。新大陸でジャジャン拳ではきついのでリセットした、もう2度と念能力が使えず戻って来ないのではないかという見解もあります。

 しかし、このまま主人公がフェードアウトするとは考えらず、そこには何かしらの意味があるハズ……。ゴンが念能力を使えなくなった理由と意味を考察していきます。

●ギド戦後の戦線離脱は伏線だった?

 ゴンはウイングの外法によって念能力に目覚め、強敵と対峙し続けて来たためそこから駆け足で成長してきました。逆にウイングの弟子であるズシはゆっくり能力を開花させており、将来的に優れた念能力者に育つためには時間をかけたほうがアドバンテージとなるのではないでしょうか。

 そうでなければウイングが、あれほどゴンとキルアの精孔を無理やり開くのを渋る理由はないはずです。ウイングはゴンであれば普通の方法でも1週間で念能力に目覚めると見立てており、外法で開花させるよりそちらのほうがよいという見解でした。

 また、できるだけ器を大きく育てることを勧めており、そのために修業と同じくらい遊ぶ時間をとることも重要だとしています。しかし、ゴンの前にはヒソカや幻影旅団、ビノールト、ゲンスルー組といった自分より強い敵が常に立ちはだかっていたため、念能力に目覚めてから修業してばかりの毎日でした。

 そんな中で一切の念能力を使わなかった期間があります。それはゴンがギドに負けてからの2ヵ月間でした。

 ギド戦で大ケガを負ったゴンは、ウイングから念の修業と念について調べることを禁じられます。ケガを早く治療するならオーラは重要であり、纏を行ったほうが良かったはずです。

 そのため、ウイングが念に触れることを一切禁止したのは何かしら意味があったと思われます。ゴンは生まれ持った才能と資質によって目覚ましいスピードで念能力を覚えていきましたが、実はこの2ヵ月の完全停止期間はその後の成長に大きく寄与していたのかもしれません。

●キルアが念能力を覚えるのが遅かった理由は?

 キルアはゾルディック家の後継者として兄弟の中でも素質に優れていたにもかかわらず、念能力を覚えるのはもっとも遅かったです。このことは多くの『HUNTER×HUNTER』ファンが疑問に思い、考察しているネタの一つです。

 キルアが念能力の存在を知らなかったのは、イルミやシルバによって意図されたものでした。これはキルアが天空闘技場に挑戦したときに、念能力が必須となる200階では戦わず戻ってくるよう指示されていたことからも明らかです。

 しかも、ゼノやシルバはキルアには比較的自由にさせており、キキョウはその教育方針を甘やかしすぎだと批判しています。また、修業の一貫としてキルアにダーツをマスターさせていることも、過酷な修業や仕事一辺倒ではなかった証拠です。

 このことからゾルディック家も優れた念能力者になるためには、ウイングと同じように遊ぶことも大切だと認識していたのだと思われます。そのため、素質があふれるキルアには、念能力を覚える前にできるだけ器を大きく育てようとしていたのではないでしょうか。

 また、レオリオはハンター試験に合格してから、特有の技でジンをぶっ飛ばすまで2年近く経っています。医学の勉強を優先、もの覚えが悪かったというのもあるでしょうが、将来のことを考えて師匠の意向によってあえて時間をかけていたのかもしれません。

 現在ゴンはくじら島で普通の生活を送っています。器を大きく育てる、修業と同じくらい遊ぶことがキーポイントだとすると、これからの時間は将来の念能力にとって重要となるでしょう。

 このことからゴンの念能力を一旦リセットしたことには、将来的に暗黒大陸でも通用する念能力者になれるようにする意味があるのかもしれません。そう考えると、ゴンがとんでもなくパワーアップして戻ってくることを期待できそうです。

詳しく読む⇒ゴンが「念を使えなくなった」ホントの理由 伏線は「天空闘技場でゴンが負けたアノ男?」【HUNTER×HUNTER考察】

◆カイトはなぜ「少女に転生」できたの?『HUNTER×HUNTER』2つの疑問

HUNTER×HUNTER』には一見、矛盾しているように感じるキャラクターの行動、カイトが少女に生まれ変わった仕組みなど疑問に思える点があります。ゲンスルーが「リスキーダイス」を振った理由、カイトが自らの魂を転移させた能力とは?

●カイトが少女に転生した仕組みは?

 ネフェルピトーに倒されたカイトは、その後キメラ=アントの女王から生まれた1人の少女に転生しました。この魂の移動の仕組みやカイトの能力については謎に包まれていますが、コアラのキメラ=アント(以下、コアラ)が少女の正体について語っています。

 コアラが生まれ変わった少女カイトに話していた内容をまとめると、以下の3つです。1つ目は記憶を取り戻したキメラ=アントは、生前の魂をそのまま引き継いでいるということ。2つ目は魂を引き継いだ場合、死ぬ前の人生と同じことを繰り返す傾向があり、それをバカげたサイクルだと言っています。そして、3つ目はそのサイクルから魂が解放された場合、その体には別の魂が入るとのことです。

 コアラには死ぬ前に殺し屋をやっていた記憶があり、キメラ=アントとして生まれ変わっても人の命を奪うことを生業としている自分に同じことを繰り返していると感じていました。そのため、キメラ=アントたちに命を奪われていく人間が魂をそのままに生まれ変わっても、再び搾取される立場になると思い少女の魂が解放されることを祈りながら撃ちました。

 そして、その少女と生まれ変わったカイトが似ていることから、少女の魂は解放されてその体にカイトの魂が入ったのではないかと考えています。コアラの言葉通り、母親想い、妹思いで家族のために魚を釣りに出ていたコルトは、キメラ=アントになってからも餌を調達することに熱心でした。しかし、無駄に命を奪うことは嫌い、自分を産んだ女王蟻のことをもっとも気にかける母親想いの一面を見せています。

 また、ウェルフィンも生前に自分たちの王として認めていたジャイロを追って旅立ちました。このことから魂を引き継いだ者は、やはり同じサイクルを歩む傾向があるといえるでしょう。

 コアラの考えからすると少女の魂はバカげたサイクルから解放され、その体には代わりにカイトの魂が入ったことになります。しかし、カイトは女王蟻に捕食されてはいないので、その魂がどのようにして少女の体に入ったのかというのは疑問です。

 これにはやはりカイトの能力である気狂いピエロ(クレイジースロット)が関係しているでしょう。ジン曰く、カイトに念能力や技を教えたのは彼であり、気狂いピエロ(クレイジースロット)には「ゼッテー死んでたまるか」と本気で思わないと出ない番号があるとのこと。

 つまり、カイトはネフェルピトーとの戦いで最初に出たロッドをはじめ、複数の武器を使って技を繰り出したものの、大きなダメージを与えられず次第に追い詰められていきます。ネフェルピトーは自分の強さがどのくらいか知るためカイトに戦いを仕掛けたこと、彼女がダメージを負っていたこと、カイトとの戦いが楽しかったと言っていることから、戦闘時間はある程度長かったと考えられるでしょう。

 そして、カイトが首をはねられる前に「ゼッテー死んでたまるか」と思ってルーレットを回して出たのが、ジンが言っていたナンバーだったはずです。

 能力の内容としては、カミーラの百万回生きた猫(ネコノナマエ)に近いでしょう。この能力はカミーラの死によって発動するカウンター型で、死後強まる念によって相手の命を奪って彼女を蘇生します。

 カイトの能力も死んだときに発動すると予想されますが、カミーラのように最初から自分が死ぬこと前提というとんでもない覚悟があるわけではないため、死後強まる念といっても相手の命を奪うまでの強さはないはずです。しかし、近くで生まれる命にカイトの魂を宿らせることは可能だと思われます。

 このような能力の仕組みでカイトの魂は、コアラに撃たれて解放された少女の体に入って生まれ変わったのでしょう。

●ゲンスルーは「リスキーダイス」をなぜ振った?

 ゲンスルーは「税務長の籠手」を使ってツェズゲラ組からカードを奪う作戦を決行する前、サブとバラだけに危険を背負わせないと「リスキーダイス」を振りました。彼は「ヤバイ橋を渡る時は3人いっしょだ」と言っていましたが、この行動にはこの後のゴン組対ゲンスルー組の戦いに読者の目を集中させる意図があったと思われます。

 20面体のサイコロである「リスキーダイス」は、1面だけ大凶でその他の面は大吉です。大吉が出るととんでもない幸運が起こりますが、大凶が出るとそれまでの大吉分がチャラになるほどの不幸が訪れます。しかも、すべての「リスキーダイス」は連動していて別の人、別のサイコロで出た大吉分も蓄積され、大凶を出した人にその分の不幸も降りかかる仕組みです。

 そのため、ゲンスルーが「リスキーダイス」で大凶を出していれば死んでいた可能性もありました。サブからも「意味ねームチャすんなよ」とたしなめられていましたが、ツェズゲラ組との駆け引きを見ても慎重で用意周到な性格のゲンスルーがこのような無謀な行動に出たことに違和感を覚えた読者もいたのではないでしょうか。

 とはいえ、この行動一つで読者からすれば突如出て来た感があるサブ、バラとゲンスルーの3人の結束がいかに強固なものであるかが伝わりました。なにせゲンスルーはハメ組の初期メンバーの1人で、このグループが結成されたのは5年前です。

 長期間、一緒に過ごして苦労や喜びを共有したにもかかわらずニッケスたちに特別な感情を持つことなく、盛大に裏切ったうえあっさり命を奪っています。このことから、ゲンスルーに対して、ものすごく冷酷で非情なイメージを持った人は多いでしょう。

 しかし、この印象のままストーリーが進んでしまうと、読者の頭にはゲンスルーがいつかサブやバラも陥れて裏切るのではないかという考えが残ってしまいます。そして、ゴン組との戦いで不利な状況になればなるほど、保身のためにゲンスルーが仲間を裏切る可能性は高くなるでしょう。

 そうなるとゲンスルー組対ゴン組の対戦のとき、ゲンスルーがいつ裏切るのかということに多かれ少なかれ読者の意識をそがれてしまいます。これを解消させるには回想シーンでゲンスルーたちの関係性を読者に示すという方法もありますが、こういった手法をメインキャラクター以外で使うのはストーリーのテンポを悪くしがちです。

 回想シーンを使わずに、ゲンスルーが「リスキーダイス」を振る1シーンで彼らの関係性の強さを示したのは秀逸といえるでしょう。そして、これによってゴン組とゲンスルー組の戦いに読者の意識を集中させることにも成功しています。

詳しく読む⇒カイトはなぜ「少女に転生」できたの? 『HUNTER×HUNTER』4つの疑問

〈文/アニギャラ☆REW編集部 @anigala01

 

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