<この記事には一部『HUNTER×HUNTER』第38巻の内容が含まれます。ご注意ください。>
『HUNTER×HUNTER』ファンにとって、長年考察ネタとして楽しまれている11人いる!(サイレントマジョリティー)の使い手の正体。ネットではこの犯人が念の講習会参加メンバーにいるという考察が多いですが、単行本第38巻№400のエピソード「秘匿」の最後のコマで新事実が発覚。これによって外部犯である可能性が再浮上しました。
襲撃者が外部犯の場合、犯人はいったい何者で、作中にそのヒントは隠されているのかを考察していきます。
◆隠れた4人の念能力者とヒュリコフを使ったミスリード
ヒュリコフによれば念の講習会に参加している16人のメンバーのうち、念が使えるのに申告しなかったのは4人ですが、これが冨樫先生によるミスリードの可能性がでてきました。
このうちの3人は第9王子私設兵のシェジュールとユヒライ、そして11人いる!(サイレントマジョリティー)にとり憑かれていたロベリーです。
シェジュールとユヒライが念を使えることに自覚がないと発覚した後、「もう一人はさっき国王軍に拘束されたし…」のヒュリコフの言葉とともにロベリーの顔が描かれているのでこの3人は間違いありません。
そして、この後ヒュリコフは「隠れ念能力者はあと一人か…」と述べており、この最後の1人が11人いる!(サイレントマジョリティー)の使い手であると推測しています。
しかし、単行本38巻の№400のエピソード「秘匿」の最後のコマで、第5王子ツベッパの私設兵であるロンギは「水見式は不要です」「私は念能力も使えますから──」というセリフとともに、オーラをまとっている姿が描かれていました。このシーンを素直に受け止めるならば、ヒュリコフのいっていた最後の1人はロンギになります。
ですが、このシーンではクラピカがロンギからの提案を受け入れて、ツベッパ王子の協力者になることを承認。ロンギがツベッパ王子から受けた命令と目的を考えると、クラピカたちを襲う必要はないですから、11人いる!(サイレントマジョリティー)の使い手ではないでしょう。
つまり、隠れ念能力者の中に襲撃者、11人いる!(サイレントマジョリティー)の使い手がいるというヒュリコフの判断はミスリードである可能性が高いです。
念の講習会が始まってから参加者の中に犯人がいるいう誘導が多く見られますが、それは冨樫先生による意図的なものではないでしょうか。
◆そもそも最初の犯行で犯人は1014室にいなかった
ウッディーたちが11人いる!(サイレントマジョリティー)によって死亡した際、犯行は外部の人間によるものでした。これは第14王子ワブルの警護が、わずか2時間で11人から2人(クラピカとビル)だけになったと記されていることから明らかです。
第14王子ワブルのもとには上位の王妃から1人ずつ、合計7人の警護が送られていました。これにクラピカ、ビル、サイールド、カートンの協会員を加えて11人です。
ウッディーを含めてまずは警護の5人が、11人いる!(サイレントマジョリティー)によって命を奪われます。残り2人とカートンは第12王子モモゼの念獣に操られたサイールドによって死亡させられます。そして、サイールドは国王軍に拘束されてしまいました。
この事件に恐怖して去った従事者たちも犯人ではないでしょう。なぜならワブル王子を狙うなら内部に残ったほうが有利だからです。ビルと従事者シマノの潔白は、クラピカの能力によって証明されています。
また、残っていたもう1人の従事者は、ビンセントにあっさり命を奪われたので11人いる!(サイレントマジョリティー)の使い手ではありません。
もちろんまだ赤ちゃんのワブル王子の念獣、念を使えなかったオイト王妃である可能性も除外されます。そのため、最初の犯行は外部の人間によるものであり、念の講習会に参加しなくても襲撃が可能だったことはすでに示唆されていました。
また、ウッディーが死亡したときに、クラピカも外部の人間の犯行である可能性が高いと述べています。そして、クラピカが念の講習会の参加メンバーに犯人がいると言及しているシーンはなく、11人いる!(サイレントマジョリティー)の使い手をあぶり出すために何もアクションを起こしていないのも不自然です。
いずれにせよ、内部犯だと考えているヒュリコフ、外部犯の可能性が高いとしているクラピカのどちらかの判断が間違っているという事態は訪れます。
そうなるとウッディーたちが襲われたときの状況を知っているクラピカの見解に軍配があがるのではないでしょうか。
◆ツベッパは念能力の存在を知っていた
第5王子ツベッパの言動を振り返ってみると、彼は既に念能力の存在を知っていたと考えられます。
ツベッパは念の存在をすべての王子に知らせるようにしたクラピカの行動を、場の停滞を狙っているとすぐに見抜きました。そして、マオールにはクラピカの情報が早急に欲しいと指示を出しています。つまり、ツベッパの目的は最初から念能力について知ることではなく、クラピカと協定関係を結ぶことだったのです。
その証拠に、クラピカによって念能力が開花したマオールを見たときのリアクションが薄過ぎます。さらに彼を見て「マオールでは未だ念能力に対する防衛は望めない」とすぐさま判断しており、念能力を知らない者であればこのような冷静なリアクションにはならないでしょう。
また、ツベッパは晩餐会を病欠した第8王子サレサレが念能力によって命を奪われたことを見抜き、その状況を知ることで考え得る念能力の可能性をリストアップしようとしています。
そして、それを念能力が覚醒した者に共有すれば、育つ能力に影響を与えられるかもしれないとも考えています。この柔軟過ぎる考えは、念能力をあらかじめ知っていなければできないでしょう。
これらのことからツベッパは最初から念能力について知ってはいたものの、自陣営に使い手がロンギくらいしかおらず上位王子に対する防衛力は弱いと判断。そのため、利害が一致するクラピカと協定を結ぶことを重要視し、実際にロンギによってそれを成功させました。
ツベッパは思慮深いうえ、ものすごく慎重な人間です。彼は自らの念獣を上位王子から送り込まれた警護に1度も見せていません。
ヒュリコフにもかなりの使い手だと評価されたロンギの存在はツベッパの慎重な性格、秘密主義を象徴したものでしょう。つまり、念能力を使えるロンギは彼の切り札の1つであり、それを隠すためマオールを私設兵隊長という目立つポジションに置いて隠れ蓑としているのだと考えられます。
◆真犯人を匂わせる恐るべき伏線の1コマ?
隠れ念能力者の最後の1人がロンギであったのならば、真犯人は誰なのでしょうか。襲撃者が外部犯であればその可能性は無限ですが、伏線と思われる1コマがありました。
第35巻においてクラピカとオイト王妃は、第3王子のチョウライに招待されて訪問しています。そのときに1008室の前を通るのですが、扉の前に立っている2人の男がクラピカたちを凝視。そのうちの1人は講習会に参加しているムシャホっぽいですが、もう1人の男からものすごい敵意が放たれています。
クラピカたちは1006室、1010室、1012室の扉の前も通っています。このうち1008室だけコマを割いて描かれているのは不自然です。
また、クラピカがターゲットとしている第4王子のいる1004室の前も描かれていますが、警備兵がクラピカたちを気にしている風はまったくありません。これに対して1008室の男がものすごい敵意を見せているのは、何か意図があると考えるのは自然でしょう。
1008室の主は、第8王子のサレサレです。彼は継承戦に積極的ではありませんが、その母である第5王妃スィンコスィンコは息子を次期国王にしようと画策しています。
その証拠に第12王子のモモゼの命を奪ったのは、スィンコスィンコ王妃の所属兵タフディーでした。念能力者を使って積極的に下位王子の命を狙いに行っていると考えられ、11人いる!(サイレントマジョリティー)による第14王子ワブル陣営への攻撃も彼女の差し金である確率は高いでしょう。
隠れ念能力者の最後の1人がロンギだった時点で、刺客の正体はムシャホではなく前述した1008室の前にいた男である可能性が浮上します。
ただ、ロンギがヒュリコフにさえ念能力者であることを気づかせないほどの手練れであれば、講習会に隠れ念能力者が5人いた状況になり、そうなるとムシャホをはじめ他の候補者が犯人である可能性も残るでしょう。
──『HUNTER×HUNTER』はこれまでも絶妙な伏線やミスリードによって、読者に驚きや楽しみをもたらせてくれています。休載もあったことで11人いる!(サイレントマジョリティー)の正体については、長年ファンの間で考察ネタとなってきました。
物語の再開によってその正体が暴かれ、そこに絶妙な伏線やミスリードが存在していたことが明らかになるかもしれません。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
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