『HUNTER×HUNTER』では今後のストーリー展開について暗示する伏線が、表紙に描かれていることがあります。その一つではないかと考察のネタになっているのが第36巻の表紙に描かれている、花を持っているイルミです。
イルミはもう死んでいるのではないかという見解もあり、この花が何を意味しているのか考察していきます。
◆第36巻の表紙に描かれた花──第12巻とリンクする幻影旅団メンバー
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第36巻の表紙には幻影旅団(以下、旅団)が描かれていますが、既に死んでいるメンバーは花に置き換えられています。そして、新しく旅団に加わったイルミが花を持っていることに対して、今後のストーリーの伏線になっているのではないかと考察しているファンも多いです。
この第36巻の表紙は第12巻の表紙とリンクしており、いずれも旅団メンバーが描かれています。13人の旅団メンバーがいる第12巻に対して、第36巻では死亡しているウボォーギン、パクノダ、シャルナーク、コルトピがおらずイルミとカルトが追加。
両巻を比べると旅団メンバーは同じ場所に描かれていてパクノダ、シャルナーク、コルトピのところが花に変わっています。そのため、花が死を意味しているのは間違いないでしょう。
そして、イルミも花を持っていることが考察ネタとなっています。この花が今後のストーリーに関係する伏線となっているのか気になるところです。
◆ウボォーギンの花を持っている説
1つ目は、イルミがウボォーギンの花を持っているという説です。旅団の初登場から4人のメンバーが死亡しており、その抜け番が花として描かれています。イルミは№11のウボォーギンの代わりに入っているので、本来彼の代わりに描かれるはずの花を持っているのでしょう。
ヒソカが抜けた後の№4に収まったのはカルトでした。もともとヒソカはクロロと戦うため旅団に入団したのであり、抜けただけでまだ生きているためアルカのほうは花を持っていないのだと思われます。
抜け番に入ったイルミだけを描いてしまうとウボォーギンが旅団にいた形跡がまったくなくなってしまうので、冨樫先生の彼への配慮なのかもしれません。当然、この説ではイルミが持っている花には、特に伏線としての意味はないことになります。
◆イルミが死んでいる説──花と口と自己紹介
花が死を意味していることから、それを持っているイルミがもう死んでいる説を唱えているファンも多いです。また、第36巻の表紙のイルミには口が描かれておらず、「死人に口なし」ということもこの説の根拠になっています。
さらにイルミは旅団メンバーへ「ハーイ ボクはイルミ」と自己紹介。このセリフが「敗北はイルミ」と変換でき、それは彼が既に誰かに負けて死んでいることを意味します。
仮にイルミが既に死んでいるのなら、旅団の前にいる彼の正体は誰なのでしょうか。これまでイルミの一人称は「オレ」であったのに対して、自己紹介のときは「ボク」となっています。
一人称で「ボク」を使うのはヒソカです。そして、自己紹介でイルミは右手を「ヒ」の形にしていることから、犯人はヒソカではないかと考察されています。
クロロに負けて死後強まる念によって息を吹き返したヒソカは、失われた指や足部分を伸縮自在の愛(バンジーガム)で型取り、薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)で質感を再現しています。これらの能力を利用すれば、ヒソカがイルミに化けることは可能でしょう。
また、旅団メンバーが中央食堂から解散するとき、カルトとマチだけがイルミを見ています。カルトはイルミの弟で当然一緒に過ごした時間が長く、マチは旅団でヒソカと行動することが多かったです。
そのため、この2人だけがイルミの違和感に気づいているのではないかという見解もあります。しかし、キャラクターの目的や行動原理を考えると、この説の可能性は低そうです。
なぜならヒソカは旅団メンバーと戦いたがっているので、変身して紛れ込む意味はありません。イルミはカルトとともに行動していますが、仮に正体がヒソカだとすれば既にカルトや単独行動をしているマチをねらっているでしょう。
◆イルミが死を届ける死神になることを暗示している説
3つ目は、イルミが持っている花を届ける死神の役となる説です。その届け先がヒソカなのか旅団なのか、はたまたその両方なのかは分かりませんが、現在の立ち位置から考えるとイルミがヒソカに引導を渡す可能性は十分あるでしょう。
イルミはヒソカ自身から彼をターゲットにする依頼を受けています。イルミ自らが手を下す必要はなく、ヒソカが死ねば報酬が入る契約です。
ゾルディック家は依頼遂行のためには待つのも仕事ですから、旅団とヒソカの対決が一段落するまでは積極的には動かない可能性もあります。そのためイルミの行動として考えられるのは、両者が死闘を繰り広げておいしいところを持っていく形です。
また、幻影旅団はカキン国のお宝を狙っており、マフィア一家からもその存在を危険視されています。そのため、カキン国やマフィアがゾルディック家に旅団の始末を依頼する可能性もあるでしょう。
そうすればイルミがヒソカと旅団にトドメを刺しにいく展開になりそうです。この場合、第36巻表紙のイルミは、死を意味する花を届ける死神役を担うという伏線となるでしょう。
──『HUNTER×HUNTER』には伏線や遊び心がふんだんに盛り込まれています。それを考察したり、ときには深読みし過ぎたりするのもファンの楽しみの一つといえます。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
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