2022年から2024年に渡って3ヵ所で行われた「冨樫義博展 -PUZZLE-」。そこで公開された冨樫義博先生のメモをもとに作成された「念能力設定資料」(通称、冨樫メモ)には、念能力の系統が予想外だったキャラクターがいます。

 あまりの意外性にSNSでも多くの驚きの声が上がるほどです。そして、その中には『HUNTER×HUNTERハンター協会公式発行ハンターズ・ガイド』(2004年出版、出版社:集英社、以下、『ハンターズ・ガイド』)に掲載されていた情報と異なっているキャラクターもいました。

◆変化形から放出系に変化したゼノ

 『ハンターズガイド』で変化形の念能力者として紹介されていたゼノは、冨樫メモでは放出系になっていました。キメラアント編でゼノが放った龍星群(ドラゴンダイブ)は、完全に放出系の技です。

 変化形は、オーラの性質を変えることに長けています。そのため、クロロとの戦いで使っていた龍頭戯画(ドラゴンヘッド)と牙突(ドラゴンランス)は、オーラを刃状に変化させて敵を攻撃していると考えるのが合理的でした。

 そして、これらの技ではオーラを体から離していませんが、クロロ戦では相手の技を盗む能力を警戒して変化形だとミスリードさせようとしたのでしょうか。これに対して、龍星群(ドラゴンダイブ)は完全にゼノの体から離れています。

 それでいながら宮殿をボロボロにする威力です。そのため、放出系のほうがふさわしいとなったのかもしれません。

 ちなみに同じく『ハンターズガイド』で変化形と掲載されていたシルバも、冨樫メモでは放出系となっています。ゾルディック家は白髪のキャラクターが変化形、黒髪のキャラクターが操作系であると言われていました。

 しかし、冨樫メモを踏まえるとその法則は崩れてしまいます。ゼノとシルバが放出系になっていたことは、予想外だったファンも多いのではないでしょうか。

◆具現化系でも操作系でもなく放出系だったノヴ

 ノヴは4次元マンション(ハイドアンドシーク)で、マンションを物質化していたので登場したばかりの頃は具現化系という意見が多かったです。しかし、冨樫メモでは放出系に分類されています。

 また、ノヴは宮殿に潜入した際に、窓を開く者(スクリーム)を使って兵隊アリを倒しました。そのため、比較的簡単な条件で、相手の命や意志を奪える操作系の能力者である可能性も浮上します。

 実際にノヴはこの能力を使うのにマスターキーを必要としており、絶対に失くさないように手錠で手首に繋いでいます。能力を発動するのに実在の道具を必要とし、それを失くすと使えなくなるのは操作系の特徴です。

 ノヴの窓を開く者(スクリーム)は、ジェイルの気配を完全に消せる神の不在証明(パーフェクトプラン)と組み合わせれば、メルエムも倒せると言われていました。そのせいもあってか、護衛軍のオーラにビビッてリタイアします。

 条件を満たせば、どんな強い相手にも念能力が発動するのが操作系です。しかし、ノヴが放出系の能力者であったなら、空間を閉じ切ってメルエムの首を切断できるかは、オーラの威力次第だったハズ。

 いくら神の不在証明(パーフェクトプラン)で不意を突いたとしても、メルエムならノヴのオーラに耐えられたのではないでしょうか。窓を開く者(スクリーム)のチートぶりとノブの性格からすると、空間を操る操作系の念能力者のほうがしっくりきます。

 しかし、グリードアイランドで移動系のスペル担当だったレイザーは放出系でした。そのため、空間をつなげて移動するノヴも、最初から放出系というくくりだったのかもしれません。

◆爆弾を具現化しないのに具現化系の能力者ゲンスルー

 ゲンスルーは、一握りの火薬(リトルフラワー)を使った際に、爆弾を具現化していなかったことから、変化形の念能力者だという意見が多く見られました。しかし、冨樫メモでは具現化系の念能力者となっています。

 ゲンスルーは空気に触れると、発火・爆発する黄リンのような物質にオーラの性質を変えているという見解が多かったです。また、息をするようにウソをつく性格も、変化形の念能力者の特徴となっています。

 命の音(カウントダウン)は爆弾の威力を高めるための放出系、爆弾を同時に何十個も物質化する具現化系、相手に仕掛けて発動するための操作系がバランス良く使われている能力です。

 おそらく全力のビスケのパンチで死ななかったバラが放出系、サブは操作系でしょう。この2人はメモリのほとんどを命の音(カウントダウン)に割いているので、キルアたちとの直接戦闘では念能力の技を使えなかったのだと考えられます。

 威力を放出系のバラが担当していて、爆弾を具現化するだけならサブでもできそうです。何よりゲンスルーの性格は変化形の典型的パターンでしょう。

 そして、具現化系の最大の特徴は物質化したものに、特殊な能力を付与できることです。シズクの生物以外は何でも吸い込む掃除機・デメちゃん、ゴレイヌの自分や相手との位置を入れ替える念獣には便利な特殊能力があります。

 ただの爆弾を物質化しているだけの一握りの火薬(リトルフラワー)は、ゲンスルーの実力を考えるとあまりに芸がない能力だと言えます。ゲンスルーも命の音(カウントダウン)にメモリを取られ過ぎて、爆弾に特殊能力を付ける余裕がなかったのでしょうか。

◆死体を操っているのに強化系のイカルゴ

 イカルゴの死体と遊ぶな子供達(リビングデッドドールズ)は、死体を操ってその者の念能力を使うというものです。そのため、シンプルに操作系と考えられていましたが、冨樫メモでは強化系となっています。

 強化系としては変則的な能力ですが、操作系の能力としても当初から違和感がありました。なぜなら、操作系の最大の特徴は、比較的簡単な条件で相手の意志や命を奪えることです。

 たとえば、シャルナークであれば、アンテナを刺してしまえば相手を操ったり、命を奪ったりできます。敵を操るのにまず死体にしないといけないイカルゴの能力は、操作系としてはかなり遠回しなものと言えるでしょう。

 人の命を奪う覚悟がなく、操作系でありながらこのような能力にした可能性もあります。しかし、能力を使うのに道具を使っていないところも不自然です。

 そのため、イカルゴはやはり最初から強化系の念能力者だったのかもしれません。タコの足を銃に変えて、弾丸を放つほうがイカルゴ本来の能力なのでしょう。

 ──『ハンターズガイド』には著者・冨樫義博とあり、表紙に「キャラクター&ワールドオフィシャルデータブック」とあるため、公式ガイドブックと認識している人も多いでしょう。しかし、表紙には「ハンター協会公式発行」とも書いてあります。

 つまり、あくまで発行された時点でハンター協会が把握・推測していたデータという形なのだと思われます。連載が長期化して途中で設定が変わってもいいように、伏線・保険としてあえてそのような形にしていたのかもしれません。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

※サムネイル画像:Amazonより

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