グリードアイランドでのドッジボール対決でゴレイヌは、レイザーやヒソカ、ゴンたちのすごさに圧倒される役回りでした。かませ犬ならぬ、かませゴリラ的な立場だったわけですが、その能力は念の本質をつかんだものでありレイザーにも一目置かれるほど。

 ゴレイヌの能力には念能力の奥深さが秘められており、その部分においてネテロ会長の百式観音との共通点が見られます。

◆ドッジボール対決のカギとなった念能力とは?

 ドッジボール対決でもっとも重視された念能力は、グリードアイランドでの修行によってゴンやキルアが覚えた、オーラの攻防力移動「流」です。レイザー曰く、念の戦闘においてオーラの攻防力移動は戦いの基本であると同時に奥義にもなり得るもので、実はヒソカとレイザーの能力もこの「流」をいかに攻略するかを考えて設計されています。

 ヒソカの伸縮自在の愛(バンジーガム)は相手に付けて伸縮させれば守りのバランスを崩せるので、オーラが薄い場所を攻撃しやすいです。また、ゴトー戦で見せたように伸縮自在の愛(バンジーガム)でヒソカ自身が高速移動をすれば、どこから攻撃が来るか予測できないのでオーラの攻防力移動が追い付きません。ノブナガも伸縮自在の愛(バンジーガム)はよくできていて、やりづらいと評価していました。

 レイザーの能力は放った念弾を念獣である14人の悪魔とのパス交換で高速移動させるため、その動きについていけない相手、オーラの攻防力移動が下手な相手には防御力が薄いところを狙って攻撃できます。実際にツェズゲラはボールの動きについていけず大ダメージをくらっており、オーラの攻防力移動まで下手だったら致命傷となっていたでしょう。

◆合体技の中核を担ったキルアのオーラ攻防力移動

 レイザーのスパイクを受け止めるために行った、ゴンたちの合体技ではキルアのオーラ攻防力移動が中核となっていました。この絶妙なオーラの攻防力移動によってクッションと踏ん張りの2役をこなしたキルアを、レイザーとビスケは「天才的センス」「恐ろしい才能」と絶賛しています。

 2人の実力者がこのように表現したのは、それほど念能力の戦いにおいて「流」が重要だということです。

 キルアはまだ経験は乏しいですが、オーラの攻防力移動における配分値の見極めにおいてセンスの高さを見せています。ビスケがキルアと同じレベルに至ったのは20代後半だったということですから、そのセンスのすばらしさは相当なものでしょう。

◆レイザーにダメージを与えたのはゴレイヌだけ

 ゴレイヌの念能力である白の賢人(ホワイトゴレイヌ)は自分と位置を入れ替え、黒い賢人(ブラックゴレイヌ)は他人と位置を入れ替えられます。この2つを駆使して位置を頻繁に変えれば相手は戦いにくいこと間違いなく、格上の相手でもダメージを与えることも可能でしょう。

 実際にゴレイヌはこの念能力を使って、レイザーにダメージを与えていました。大きなダメージではなかったですが、しっかりレイザーの顔は腫れていることからオーラによる防御の薄いところを突くことがいかに大切かを物語っています。

 ドッジボールというルール内での戦いだったため、ヒソカたちは直接相手を攻撃することはなかったですが、ボールをぶつけてレイザーにダメージを与えたのはゴレイヌだけです。ゴンがジャジャン拳で放ったボールはとんでもない威力でしたが、真正面からだったためレイザーにすべて対処されました。

 残念ながらゴレイヌのスペックが低かったのでレイザーを完全に出し抜くには至らず、逆にボールをぶつけられて気絶してしまいます。しかし、『呪術廻戦』の東堂葵と虎杖悠仁のコンビのように、ゴレイヌが攻撃力のある味方と組めばかなり強力です。

 レイザーは瞬時にそうした戦い方も想定して、「いい能力だ。大事にしなよ」とゴレイヌに声をかけたのでしょう。そして、念能力者の達人になればなるほどオーラの攻防力移動は上手いはずですから、実力が伯仲していればお互いダメージを与えるのは難しくなります。それだけに念での戦いにおいては能力がバレたとしても、いかに相手の意表を突ける攻撃を繰り出せるかが重要です。

 敵の攻撃がどこに来るか見極められなければ、常に体全体を大きなオーラで覆って防御するしかありません。しかし、その場合はオーラの消耗が激しくなり、それは戦いにおいてかなり不利になることを意味します。

◆ネテロ会長の百式観音との共通点

 ネテロの百式観音も相手にとって予想外の攻撃を繰り出すのに長けた技であり、オーラの攻防力移動の裏を突きやすいのはゴレイヌの念能力との共通点です。キメラ=アント編で王宮に突入したとき、迎え撃ったネフェルピトーは百式観音によるあり得ない場所からの攻撃をまともにくらってしまいます。

 冨樫先生直筆の「冨樫メモ」に基づいた設定資料や『HUNTER×HUNTERハンター協会公式発行ハンターズ・ガイド』によれば、ネテロ会長は強化系です。しかし、百式観音による攻撃は放出系なので本来の力の80%しか出せていないはずで、直接殴ったほうが威力はあります。

 ただ、ネテロ会長くらい攻撃力があると放出系の技でも十分威力がありますし、それ以上に予想外の場所からの攻撃で相手のオーラが薄いところを狙ったほうが有効ということでしょう。

 ネテロ会長は念使いで最強だった時代を経験していますから、直接殴る強化系の攻撃よりも、念能力の戦いの奥義でもあるオーラの攻防力移動の裏を突ける放出系の攻撃のほうが有効と考えたのでしょう。その結果、百式観音という能力に至ったのだと思われます。

 残念ながら百式観音による攻撃は、もともとの身体スペックが高いネフェルピトーやメルエムには有効なダメージは与えられませんでした。しかし、普通の人間の念能力者であれば対処するのはかなり難しいはずです。

 スケールこそ大きく違いますが、ゴレイヌの念能力もオーラの攻防力移動の裏を突くという点では百式観音と共通しています。

 ゴレイヌは具現化した念獣に位置を入れ替える特殊能力を付与していますが、具現化系といっても相手の防御力を無視して切れる刀などチートなものは具現化できません。

 付与する能力が限られた範囲内で位置を入れ替える程度のものなら、相手がどれだけ強くても難しい制約もなく発動できる点に着目したのは非常に目の付け所が鋭いといえるでしょう。さらに念能力の極意である「流」を攻略できる特性を持つわけですから、レイザーがゴレイヌの能力を褒めたのも納得です。

 

 ──ゴレイヌはいい奴なのになぜか仲間がいなくて、グリードアイランドでもソロで活動していました。しかし、彼の能力を考えると、本領を発揮するのは戦闘に長けた仲間を得たときなのでしょう。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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