『HUNTER×HUNTER』では当初から闇の住人と称されるキルアが闇落ちして、ゴンと戦う展開になるのではないかという予想が多かったです。しかし、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』でうずまきナルトとうちはサスケのライバル対決が実現して以降は、冨樫先生は同じような流れにはしないだろうという見解も増えました。

 ただ、キルアが闇落ちしそうな伏線は以前から散りばめられており、選挙編ではこれまでと比べても最大級といえる伏線が追加されることに。果てしてキルアの闇落ち率は現在どのようになっているのでしょうか。

1度実家に帰るも伏線は生きているのか──シルバの言葉

 ハンター試験後、キルアは実家に連れ戻されますが、ゴンたちと再び旅立つときにシルバは「いつか戻って来る。あいつはオレの子だからな」と闇落ちの伏線ともとれる言葉を放っています。父親でありシルバほどの実力差の言葉が的外れとは思えず、将来キルアが家業を継ぐ可能性は高そうです。

 ただ、キルアはイルミに刺されていた針を抜いた後、不遇な扱いを受けるアルカを救うために1度ゾルディック家に戻っています。これによって伏線は回収されたという見方もできます。

 しかし、シルバが根拠としているのは、「あいつはオレの子だからな」というものです。キルアが家に戻ったのはゴンを元に戻すため、ひいてはアルカを助けるためというはっきりした目的がありました。

 シルバはイルミの針が刺さっているから、アルカがいるからという要素は根拠としていません。「あいつはオレの子だからな」というのは、血や人間性などもっと根本なものでしょう。

 そのため、このシルバの言葉はキルア闇落ちの伏線として、まだ十分生きていると判断できます。キルアの心に大きな負の衝撃を与える出来事が起これば、ゾルディック家の血もしくは彼の人間性の闇の部分が覚醒する可能性はあるでしょう。

◆イルミからの解放で伏線は回収されたのか──ビスケの言葉

 キルアはビスケに見切りの早さ、戦いに慎重すぎるという弱点を指摘され、いつかゴンを見捨てると忠告されました。「ゴンを見捨てる=闇落ち」と解釈できますが、この悪癖はイルミに刺された針によって操作されていたもの。ラモット戦で針を抜き取ったことで、ビスケの言葉の伏線は回収されたと考えてよいでしょう。

 ただ、イルミの針を抜いてしまったせいで、新たな伏線が発動してしまった可能性もあります。これまでイルミの針による暗示でキルアは勝ち目のない相手には逃げの一手を選択するよう導かれ、それが彼の命を守っていました。

 その枷がなくなったということは、理由があればキルアは自分より格上の相手とも戦う可能性が出てきたということです。もしキルアにとって身近な人が酷い目にあったり、命を奪われたりしたら彼はそれを実行した相手に戦いを挑むでしょう。

 その結果、キルアにとってもっと大事な人を失うことになったら、後悔と憎しみから心の闇が覚醒してしまいそうです。そうすれば、彼が闇落ちする展開も大いに考えられます。

◆ヒソカとの間にくすぶる種火──ゴトーの死

 既にキルアにとって身近な人間である執事のゴトーが命を奪われ、その実行犯であるヒソカとの間に火種がくすぶっています。この事実はカナリアの工作によってキルアには隠されていますが、彼の知るところになればヒソカへの復讐に乗り出す可能性は高いです。

 さらに現在はブラックホエール号内で幻影旅団に入っているイルミとカルトが、ヒソカと戦う展開もあり得るでしょう。もし彼らまでヒソカの手にかかることがあれば両者の確執は決定的なものなりますし、ゾルディック家は壊滅的なダメージを受けます。

 ミルキでは後継者として物足りないですし、キルアにかかる期待は今以上のものとなるでしょう。そうなるとシルバやキキョウの思惑通り、キルアがゾルディック家を継ぐ展開になるかもしれません。

 いずれにせよゴトーの死という火種がある以上、キルアがヒソカと戦う理由は存在します。その戦いが実現すれば結果いかんでは、キルアが闇落ちするケースが生じることになるでしょう。

◆チート能力持ちの末路──アルカの存在

 キルアの闇落ちルートの伏線として、最大の要因はアルカです。キルアにとって現在もっとも大事な存在であるアルカの命を奪われれば闇落ち必至ですし、これまでの流れから考えると『HUNTER×HUNTER』のチート能力持ちは退場させられる傾向があります。

 窓を開く者(スクリーム)というチート能力を持つノヴは、モントゥトゥユピーの凶悪なオーラに精神をやられて戦線から離脱。未来予知ができる天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)の持ち主ネオンも死が示唆されました。

 アルカへ「お願い」すればその後見返りは必要ですが、人の命を奪ったり億万長者になったりも簡単です。何かを治す「お願い」をした場合には残酷な見返りを要求されることはなく、さらにキルアが使える命令は何のリスクもなく「お願い」を叶えてもらえます。

 治した後は眠ってしまう制限はありますが、このアルカの能力があれば戦いでどんなダメージを負っても回復可能。何よりキルアが命令すれば、敵を排除することも簡単です。

 ノヴやネオン以上に圧倒的なチート能力を持つアルカですから、今後何らかの形で退場する可能性は高いでしょう。実際に選挙編でヒソカはアルカの命を奪って、キルアの恨みを買うことを考えていました。

 さらにキルアを死に追いやれば、今度はゴンがヒソカの命をねらうでしょう。その展開はヒソカにとって、この上なく楽しい状況です。

 そう考えるとアルカがキルアの闇落ちのトリガーになる可能性は高いと思われます。ただ、キルアが闇落ちしてもゴンと戦うのではなく、ヒソカと対決する展開になるかもしれません。

 

 ──アルカという最強カードがあるうちは、キルアが戦いに参戦する展開はなさそうです。そして、キルアが闇落ちしそうなほど大切な存在はゴンとアルカでしょう。

 しかし、ゴンは主人公なので死ぬことは考えづらいです。そうなると、やはりキルア闇落ちの鍵はアルカが握っていると考えられます。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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