<この記事には一部『HUNTER×HUNTER』第38巻の内容が含まれます。ご注意ください。>

HUNTER×HUNTER』第0巻に登場していた謎の女性シーラが、第38巻の回想シーンで再登場。彼女と幻影旅団初期メンバーの過去が明らかになりました。

 しかし、いまだに彼女がクルタ族の集落を訪れた理由や現在の所在地、生死については謎のままです。そこで新たにシーラの目的と幻影旅団によるサラサの敵討ち、クルタ族を襲った理由について考察していきます。

◆シーラがクルタ族の集落を訪れた目的

 シーラがクルタ族の集落を訪れた理由は、クラピカのような好奇心旺盛な者に外の世界の魅力を教えること、外で生活しやすいように公用語を教えることでした。つまり、外の世界に旅立たせることで、クルタ族の全滅を避ける目的があったと考えられます。

 シーラは足が治りかけるとまた転んで何度もケガを繰り返したとあることから、たんに迷い込んだだけでなく、クラピカとパイロに外の世界の知識を教えようとしていたのは明らかです。また、シーラが去ってからも語学の勉強ができるように、彼女がハンターを目指すきっかけになった冒険活劇ディノハンターという本を置いて行っています。

 そして、実際にクラピカはディノハンターを読んだことをきっかけに外への世界へ強い興味を持つようになり、公用語もマスターしました。さらには長老の試験をクリアして旅立っていますから、シーラの思惑通りになったといえるでしょう。

◆シーラの現在と幻影旅団との関係

 第0巻だけの情報ではシーラは幻影旅団の初期メンバーで、ヒソカやシルバに倒された者の1人(映画では旧4番はオモカゲ)だったのではという考察もありました。

 しかし、第38巻ではクロロがサラサの命を弄んだ犯人をどう探すかメンバーに説明している場面に背を向けて、悲しそうな表情を浮かべながら去って行きました。幻影旅団の結成時のメンバーにもいなかったため、彼女は別の道を選んだと考えられます。

 また、第0巻ではクラピカのもとを去るとき、置手紙に「その時ワタシはプロハンターになれてるといいな」と書いていました。そのため、シーラは純粋にハンターの仕事に憧れている、ゴンと同じようなタイプのはずです。

 サラサの敵討ちをすることを心に決めたクロロも、彼女自身がそのような蛮行を決して望んでいないことを理解しています。シーラはサラサともっとも仲が良かったため、彼女の気持ちと自分の望みを考えたうえで復讐には加担しないことを決めたのでしょう。

 そのため、現在はプロハンターになっている可能性が高いです。また、彼女が幼少期から愛読していたディノハンターの本は新しい世界への好奇心を湧き立たせる冒険活劇ですから、未知の領域である暗黒大陸に興味を持っていてもおかしくないでしょう。

◆幻影旅団はサラサの敵討ちを達成している?

 サラサの死は幻影旅団結成のきっかけであり、敵討ちは何よりも優先して達成しなければならない目的です。先走りそうになるウボォーギンに対して、クロロは3年というリミットを提示していることから、幻影旅団はすでにサラサの敵討ちを達成していると考えて間違いないでしょう。

 サラサの命を奪った犯人を野放しにした状態で、悠長にヨークシンのオークション品を狙うなどウボォーギンが許すはずがありません。また、敵討ちが終わっていないのに、カキン帝国のお宝を狙うこともしないでしょう。

 実際に幻影旅団は現在、シャルナークやコルトピの命を奪ったヒソカ狩りを最優先に動いています。これらのことから、幻影旅団結成のきっかけとなったサラサの敵討ちは真っ先に達成していると考えるのが自然です。

 ただ、犯人と思って報復した者の裏に、本当の首謀者がいたという可能性はあるでしょう。多くの緋の目やパイロのものと思われる頭部を所持しているツェリードニヒ。彼が求めているのは「前途ある若者が極限状態下で産み出す総合芸術」であり、実際に2人の女性を解体しています。

 サラサは前途ある若者であり、マフィアの人狩りによって極限状態に晒されました。ツェリードニヒの年齢は不明ですが、彼の性格からすれば当時まだ子供だったとしても、そのようなビデオを欲していた可能性はあります。

 そして、そのニーズを満たそうと思うなら、ケツモチをしているマフィアのエイ=イ一家を使うでしょう。実行犯の男は自分の欲望を満たすと同時に、ツェリードニヒのためにサラサを手にかけたということも考えられます。

◆幻影旅団がクルタ族を襲った理由は?

 クルタ族が襲われたとき、流星街の報復を意味する「我々は何ものも拒まない、だから我々から何も奪うな」というメッセージが残されていました。このため、クルタ族がサラサの死に関わっていたのではないかという考察もありますが、その可能性は低いでしょう。

 なぜなら、クラピカと戦ったときにウボォーギンがクルタ族というワードを覚えていなかったためです。サラサがマフィアの人狩りに命を奪われたとき、もっとも怒りの感情を露わにして暴走しそうだったのがウボォーギンでした。

 そのため、クルタ族がサラサの死に関係しているのであれば、彼がその存在を忘れているわけがありません。緋の目を見る前に、クルタ族という言葉を聞いた時点でピンと来ているでしょう。

 初登場時のクロロは26歳でクルタ族の襲撃は5年前なので、このときにはサラサの復讐を成し遂げていた可能性は高いです。そう考えると彼女とはまったくの別件で、クルタ族が流星街の住人に何らかの被害をもたらしたケースも考えられます。

 クルタ族は差別や緋の目狩りのため、この百何十年かは定期的に移住して身を隠しながら生きてきました。身を隠すといえば流星街はうってつけの場所であり、過去にそこの住人と何らかの因縁、トラブルがあったとしてもおかしくはありません。

 もう一つの可能性は、サラサの葬式後のクロロの言葉にあります。彼は近いうちに通信革命が起きて、サラサの命を奪った犯人が作品であるそのビデオをネットで発表したがると予想していました。そして、そのような悪人をおびき寄せるために、警察の手が及ばないネットの空白地域、いわゆる闇サイトを自分たちで作ると宣言しています。

 さらに彼は「小悪人共が震え上がり決して流星街に近づかない様この街と自分をデザインする」とも述べていました。流星街をデザインするためには当然かなりの資金が必要となり、緋の目を闇サイトで売ったのもそのお金を得るためではないでしょうか。

 ヒソカは「団長は獲物を一頻り愛でると全て売りはらう」と述べており、幻影旅団がオークション品やカキン帝国のお宝を積極的に狙うのも流星街のための資金集めと考えられます。

 また、クルタ族の強さは裏の世界の住人なら知っている人もいるでしょうし、それを流星街の人間が全滅させたなら、おいそれと手を出せなくなるでしょう。クルタ族とは何の因縁もなく、単純に緋の目による資金収集、流星街に手を出した者の末路に偽装することで悪党への警告に利用したのかもしれません。

 いずれの理由にせよ、シーラは幻影旅団が近いうちにクルタ族を襲う可能性があると知って、何とか助けようと画策したのだと思われます。移住を促す手もありますが、彼女の言葉を長老たちが信じるかは分かりません。

 逆に集落から外におびき出すための罠と判断されれば、クルタ族の隠れ家を知っているシーラは間違いなく拘束されるためリスクが高いです。また、彼女がクルタ族の集落の場所にたどり着けたのなら、移住しても幻影旅団が新天地を突き止めるのは難しくないでしょう。

 シーラはクラピカに外の世界の魅力を植え付けて、旅立たせることに成功しました。これは頑なに外の世界と隔絶するクルタ族を逃がす術を持たず、幻影旅団を止めることもできなかった彼女が考えた苦肉の策だったのではないでしょうか。

 

 ──サラサの事件に関しては、死体とともに残されたメッセージの内容などまだまだ気になる謎が多くあります。連載再開によって、新たな事実の判明や謎の解明が進むことに期待です。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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