『HUNTER×HUNTER』の最新話掲載によって、想像以上にビヨンド=ネテロ(以下、ビヨンド)が狡猾・用意周到であり、カキン国の内部まで策略を張り巡らせていることが明らかになりました。それによって、ビヨンドがカキン王の血筋を引いている可能性も浮上しています。
その場合ビヨンドの母、つまりアイザック=ネテロ(以下、ネテロ)の子を身ごもった相手は誰だったのでしょうか。ビヨンドの出生や顔のキズの秘密について考察していきます。
◆チョウライがナスビ王の実子ではない伏線を回収?
第33巻には王位継承戦の参加条件として、国王ナスビ=ホイコーロの正室の子であることが既に記されていました。連載再開でこのルールの重要さが改めてフィーチャーされ、これによって第3王子チョウライがナスビの実子ではないという伏線も再注目されています。
第3王子チョウライがケツモチをしているのは、シュウ=ウ一家の組長オニオール=ロンポウです。彼はナスビの異母兄弟ですが、婚外子であるため前回の王位継承戦には参加していません。
チョウライは念能力や念獣について聞くために、オニオールのもとを訪れました。このとき、帰り際に「頼んだぞ…父さん…」というチョウライのモノローグが入っています。
そのため彼は、第3王妃トウチョウレイとオニオールの子供である可能性が高いです。つまり、王位継承戦に参加するにはナスビの実子ではなくても、正室の子であればよいというルールはこの時点で示されていたことになります。
チョウライはトウチョウレイと同じ肌の色をしているため、この2人は実の親子であることな間違いないでしょう。また、オニオールに食事を食べさせている娘も、血縁者の可能性もあります。
オニオールは婚外子の二線者であることから自らは王になることはできませんでしたが、密かに自分の子供をカキンの王にしようと画策しているのでしょう。そういった陰謀も含め王位を勝ち取ることこそが、カキン国の王位継承戦なのだと思われます。
◆ビヨンドの顔のキズはカキン王室の血族の証?
王位継承戦の参加条件が国王ナスビの正室の子であればよいということで、14人の王子の中にビヨンドの子供がいる疑惑が浮上しました。このことから、ビヨンドもカキンの血を継いでおり、顔のキズは二線者の証である可能性があります。
壺中卵の儀は「壺に血の継承を証し、王即位への思いを念ずる」ことで特別な力を授かるための儀式です。そして、守護霊獣は死者の縁の深い者に憑くとされています。
この場合の死者というのは、壺中卵の儀に使う壺を具現化させた初代王のことでしょう。実際に壺中卵の儀では壺に血を注いでいますし、守護霊獣はカキン王の血筋を受け継いでいる者にとり憑くと考えてよいでしょう。
王子の中にビヨンドの子供がいるとなれば、考えられるのは彼がカキン王族の血を引いている可能性です。王の婚外子は二線者として顔にキズをつけられますが、ビヨンドの顔にもエックス字の大きなキズがあります。
二線者のキズは二枚刃でつけられるため、傷跡の見た目はオニオール、ブロッコ、モレナとは違います。しかし、二線者のキズは屈辱の証でもあるため、ビヨンドの性格からするとその上からより深く大きなキズをつけた可能性もあるでしょう。
ただ、傷跡が一つだけであれば二線者の存在を知る者には、それを隠すためにさらなる傷をつけたと気付かれる可能性もあります。その対策として効果的な方法は、もう一つ同じようなキズを増やすことです。その結果、ビヨンドがエックス字のキズを有している可能性も十分考えられるでしょう。
◆ネテロの妻は元カキン王?
ビヨンドがカキンの血筋だとするなら、その母親はいったい誰なのでしょうか。父親であるネテロが、若い頃にカキン国の元国王との間に作った婚外子である可能性が高いです。
カキンでは正室の子供は性別関係なく王子と称され、王位継承戦に生き残れば女性でも王になれます。そのため、ナスビより前の王に女性がいれば、ネテロとの間に子供が生まれていても不思議ではありません。
オニオールは現国王ナスビの異母兄弟のため、前国王も男ということになります。そのため、女王が即位していたのはそれより前になるでしょう。
ネテロは享年100歳を超えており、ビヨンドがクカンユ王国による暗黒大陸の調査に参加したのは50年ほど前です。そのため、カキン国の国王が女性だったときに、ネテロの子供を身ごもっていた可能性は十分あり得るでしょう。
強さを追い求めるネテロの性格から考えると、カキン国王を正式な妻としたとは思えません。巡り合った2人は恋に落ちて恋人関係になり、彼女はビヨンドを身ごもったものと思われます。
もしかしたらネテロは、彼女が妊娠していたことを知らなかった可能性もあるでしょう。その場合、大人になったビヨンドが彼の前に現れて親子である事実を知ったのかもしれません。
◆ビヨンドは30年前からカキン国乗っ取りを画策?
カキン国は約30年前の真林館事件を機に帝国社会主義から議会民主主義へとシフトし、現在の新しい国へと生まれ変わりました。これを機にビヨンドはカキン国に入り込み、自分の子供を仕込んでいったのものと思われます。
年長の王子たちやビヨンドの子であるロンギの年齢を考えると20代だと思われるので、やはり30年前の真林館事件がキーポイントとなりそうです。この事件の詳細は明らかになっていませんが、仕掛けたのがビヨンドであることも考えられます。
なぜなら、今回の暗黒大陸進出も新生カキン帝国になったことを建前として、各国との暗黒大陸不可侵条約をうやむやにしているからです。これほどビヨンドにとって好都合なことはありません。
彼がどういった目的で自分の子供をカキン国王にしようとしているのは不明です。ビヨンド自身は暗黒大陸の探索が目的であるため、国を乗っ取ることには興味がないように思われます。
そのため、自分の子供をカキン国王にするのは、暗黒大陸の探索を始めるきっかけ、継続するための後ろ盾にする、暗黒大陸からのリターンを独り占めするためかもしれません。しかし、ナスビ国王の時代に探索をスタートできたことを考えると、あくまで保険の一つだった可能性もあるでしょう。
──王子の中にビヨンドの子供がいるかもしれない。この一つの疑惑によって、これまで何気なく通り過ぎていた場面も、もしかしたら伏線なのではないかと気になり始めてしまいます。新事実が明らかになるたびに漫画を読み返したくなり、一気に考察が広がるのが『HUNTER×HUNTER』の魅力といえるでしょう。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
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