アイザック=ネテロ(以下、ネテロ)は、キメラ=アントの王メルエムとの戦いの果てに命を落としました。このキメラ=アント事件という未曽有の事態を引き起こした人物として有力なのがビヨンド犯人説です。息子であるビヨンドがネテロを死に追いやった理由を考察していきます。

◆理由1 カキン国がわざと女王蟻を外部へ流出させた?

 50年ほど前に暗黒大陸の探索に失敗したビヨンドはゾバエ病を持ち帰り、ネテロから自分が生きている間は2度と探索できないよう枷を課されました。しかし、ビヨンドはそのようなことで暗黒大陸の探索を諦めるわけがなく、ネテロがキメラ=アントの討伐で命を落としたことは好都合だったわけです。

 つまり、ビヨンドには動機が十分で、息子でありながら父ネテロに早く死んで欲しいと思っていた可能性がありました。そして、カイトに合流していたゴンたちは、カキン国の依頼で同国の奥地にて生物調査をしていたところ、ヨークシンのオークションに奇妙な生物(女王蟻)の体の一部が持ち込まれたという情報をこっそり教えられます。

 そこからヨークシン、次に未確認生物の体の一部が見つかったヨルビアン大陸の南西、さらにはミテネ連邦にあるNGLに移動。潮流を考えるとキメラ=アントの女王がカキン国の南東から、ヨルビアン大陸の西側に流された可能性も考えられます。

 キメラ=アントは暗黒大陸の生物ではありますが、直接ヨルビアン大陸に流れ着いたとは考えづらいでしょう。なぜなら暗黒大陸から生きてたどり着くには巨大湖メビウスが広すぎるからです。

 つまり、カキン国が何かしらの目的があって保有していた女王蟻を外部へ流出させた可能性が考えられます。そして、かつては念能力者として最強だったネテロの命を奪おうと思ったら、ビヨンドが暗黒大陸産の生物に頼るのは合理的な結論でしょう。

◆理由2 ビヨンドはネテロが衰えるタイミングをねらっていた?

 ビヨンドはカキン国に自分の子種を撒いており、王子の中にも彼の子供がいるのではないかといわれています。これだけ精力と行動力にあふれるビヨンドが、ネテロが死ぬのを黙って待っているわけがありません。

 実際に彼は暗黒大陸を探索するためのチームを準備していました。いわゆる協専と呼ばれるハンターたちです。

 彼らは成否にかかわらず報酬がもらえる、協会から斡旋される仕事を専門にしています。そのため、ほかのハンターからはさげすまれていますが、その正体は本当の実力を隠していたスペシャリストばかりです。

 これはネテロに暗黒大陸を探索するためのチームを準備していると悟られないためのビヨンドの策略でしょう。暗黒大陸探索チームに参加する25名を選出するために、200名からなる協専ハンターをパリストンに掌握させていたのですから人材発掘だけでなく地道な育成も行っていたのかもしれません。

 さらに資金の調達、カキン国に入り込んで暗黒大陸へ進出させる画策もしていたと思われます。そして、障害がネテロだけになったタイミングで、キメラ=アントを放つ計画を実行に移したのでしょう。

 そのタイミングもネテロが全盛期を過ぎて、衰えてきた頃をねらっていたと思われます。そして、ネテロを倒すほどの蟻の王が生まれるには、念能力者を女王蟻のエサにすることが必須です。

 そのため、カキン国はカイト以外のハンターにも生物調査を依頼して、その際にこっそり女王蟻の情報を流すことで好奇心旺盛なエサが向かうよう仕向けていたのだと考えられます。

 摂食交配をするキメラ=アントが念能力者をエサにすれば、その子孫たちが念能力を使えるようになるという予想は簡単に成り立つでしょう。

 また、ネテロが死ぬのをのんびり待っていれば、ビヨンドが用意した協専のハンターたちが先に衰えてしまいそうです。そう考えるとあのタイミングでネテロがキメラ=アント討伐で命を落としたのは、決して偶然ではないでしょう。

◆理由3 ネテロに薔薇を使わせたのはビヨンドやパリストンの策略だった?

 キメラ=アント討伐にあたってパリストンは、十二支んがネテロと行動を共にする選択肢を消すように動いていました。キメラ=アントの特性もあって、下手な戦力は相手に取り込まれるという理由で少数精鋭にせざるを得なかったことも、ビヨンドの狙いだった可能性があります。

 また、協専ハンターを使ってあえてキメラ=アントの退治に失敗して、蟻が世界に広まる手助けもしています。このことからハンター協会へのプレッシャーは強まり、ネテロは討伐に失敗できなくなりました。

 そのため、最悪でも蟻の王を仕留めるために貧者の薔薇(ミニチュア・ローズ)を使うという選択をとらざるを得なくなったのでしょう。ネテロに薔薇を使わせるというのも、パリストンやビヨンドの策略だったのかもしれません

 軍隊やテロリストではなく未知の生物による脅威であれば、ハンター協会が討伐を任されるのは当然です。そうなればパリストンの暗躍によって、ネテロを圧倒的に不利な状況となる戦地に送り込むのは難しくはなかったでしょう。

 しかし、暗黒大陸の探索に行きたいビヨンドからすれば、キメラ=アントが好き勝手に暴れて世界を混乱に陥れる展開は望ましくありません。そのため、最初からキメラ=アントの王を始末する方法、つまり貧者の薔薇で決着をつけるという結末を用意して計画を実行に移したのだと思われます。

 そして、ネテロならその役割を誰かに押し付けるようなことはしないと読んでいたのでしょう。

◆ビヨンドとカキン国の取り引きとは?

 ビヨンドとカキン国の結びつきは当初の印象よりかなり強いものがありますが、表向きは暗黒大陸に行きたいビヨンドとそこからのリターンを得たいカキン国という構図でしょう。しかし、カキン国は自分たちによる世界統一を国是としており、裏にはもっとどす黒い取り引きがあると思われます。

 ビヨンドに雇われているパリストンは、約5000体のキメラ=アントの繭を回収していました。ジンはここからふ化した半獣人たちを使って、パリストンが次のハンター試験で遊ぼうとしていると予想。

 また、パリストンも会長の座を継いだチードルが作るハンター協会が退屈なら、次は本気でおちょくると告げていました。しかし、カキン国とビヨンドから暗黒大陸進出の宣言もあってハンター試験の形式が変わったせいか、パリストンはキメラ=アントをいまだに使っていません。

 約5000体のキメラ=アントを兵隊、もしくは他国を混乱させるために使えれば世界統一を考えるカキン国からすればこれほど大きなメリットはないでしょう。そのため、ビヨンドはキメラ=アントを取り引きの材料にしたのかもしれません。

 また、ビヨンドは自分の子供を次のカキン国王にして、そのタイミングで約5000体のキメラ=アントを使って世界を統一しようと目論んでいるとも考えられます。

 既にふ化しているはずのキメラ=アントたちがいまだに表に現れていないのは、待機組の協専ハンターの念能力によってコントロールしているからでしょう。

 現時点では不気味なほど、おとなしくしているビヨンド。しかし、彼の暗黒大陸への執念が想像以上だったことが次第に露わとなって来ています。

 そのため、ビヨンドが本格的に動き出したら、カキン国とのより深い関係や陰謀が明らかになっていきそうです。

 

 ──ハンター協会、カキン国、マフィア、幻影旅団、ビヨンドにヒソカと多くの勢力と覚えきれないほどのキャラクターが登場する暗黒大陸編。そこに渦巻く思惑や陰謀に考えを巡らせると脳がオーバーヒートしそうなので、加齢で思考力が衰える前にこのシリーズが結末を迎えてほしいものです。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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