戦闘狂で知られるヒソカですが戦えれば何でもよいわけではなく、興奮するバトルと興味がないバトルが存在します。敵が強いことは当然ですが、その他にも好みがあることがヒソカ自身から語られました。

 そこからヒソカがキメラ=アントと戦いたくなかったワケとその矛盾、クロロに激怒して旅団狩りを決めた本当の理由について考察していきます。

◆ヒソカが興奮しないバトルとは?

 ヒソカは自分のことを異種間戦闘(アニマルプレイ)や集団戦闘(パーティープレイ)には興奮しない、いたってノーマルな人間だと認識しています。つまり、あくまで人間同士の11の戦闘(プレイ)が好きだということです。

 そのため、人間ではないキメラ=アント討伐の話を聞いても心が動かなかったと語っています。また、ブラックホエール号で起こっているハルケンブルクの鳴動には興味を持ちましたが、集団行動型の能力だと知って一気に萎えたそうです。

 ヒソカがキメラ=アントについて知ったのは選挙編でイルミに聞かされてからですが、仮に討伐が終わる前に知っていたとしても彼は戦いに参加したいという気持ちは起きなかったのでしょう。しかし、これには2つの矛盾があり、少し言い訳っぽい感じがします。

 なぜなら、キメラ=アントには人間が混ざっており、特に記憶を取り戻した個体はとても人間くさかったからです。そのため、ヒソカが楽しめる11のバトルができたのではないかと思われます。

 また、グリードアイランドではレイザーに対して、ゴンたちと一緒に闘うパーティープレイを楽しんでいました。この2つについて、果たしてヒソカの真意がどこにあるのかを考えていきたいと思います。

◆キメラ=アントは人間くさかった

 王になろうと暗躍していたレオル、裏の王を目指していたウェルフィン、里親の命を奪われて王に反抗したメレオロンなど同じキメラ=アントでもその思惑はさまざまで実に人間くさかったです。そのため、キメラ=アントとの戦いが心のない虫やロボットを相手にしているように感じた人はいないでしょう。

 確かに記憶のない下級兵は、感情や思考力が乏しかったです。しかし、美貌を捨てて醜い姿になることで強固な体となる奥の手を見せたザザン、自分の能力に有利な場所に引き込んだつもりが逆手に取られたレオルなど駆け引きも見ものであり、そこには人間同士の戦いとそん色ない腹の探り合いがありました。

 また、ネフェルピトーもカイトとの戦いを楽しんでいたことから、師団長クラス以上との戦いであればヒソカも十分楽しめていたでしょう。そのため、彼の異種間戦闘(アニマルプレイ)に興味がないというのは、キメラ=アントに限っては言い訳、もしくは戦えなかったことへの負け惜しみのように聞こえてしまいます。

 しかし、ヒソカがイルミから聞いたキメラ=アントの情報は、それほど詳しいものでなかったと考えれば納得です。おそらく実際に遭遇する前にスピンたちが話していた、キメラ=アントに関する基本的な知識しかヒソカは持っていなかったのでしょう。

 そうであれば、キメラ=アントに対してヒソカの食指が動かなかったとしても不思議ではありません。

 しかし、ヒソカが師団長クラス以上のキメラ=アントに遭遇していれば、きっと考えを改めたでしょう。人間臭さと思考力がある相手なら、たとえ蟻であっても戦いたいと思ったはずです。

◆ゴンたちとのドッジボール対決を楽しんでいたヒソカ

 ヒソカはレイザーとのドッジボール対決で、ゴンたちと組んで集団戦闘(パーティープレイ)を楽しんでいました。しかし、これはあくまでスポーツとしての範囲で、命の奪い合いではなかったのでヒソカとしては余興みたいなものだったのでしょう。

 最後の仕上げ以外はあくまでゴンたちのサポート役に徹していましたし、レイザーによるドッジボールのルールも守っています。そもそもヒソカは除念師との交渉が目的であって、旅団メンバーが見つけるまで暇を持て余していました。

 そのため、ドッジボールはゲーム内のイベントの1つであり、暇つぶし程度のものだったのでしょう。ヒソカは「楽しかったから」と感想を述べていましたが、彼にとってこの対決はゴンたちとの集団戦闘(パーティープレイ)の範疇には入らないと思われます。

◆クロロとの決闘はアブノーマルだった

 ヒソカは天空闘技場でクロロに敗れてから旅団メンバーとは場所を選ばずどこで会っても戦うと決め、実際にコルトピとシャルナークの命を奪っています。これはクロロとの決闘がヒソカにとって異種間戦闘(アニマルプレイ)と集団戦闘(パーティープレイ)であり、アブノーマルで興奮できかったことによる怒りが原因なのでしょう。

 クロロはヒソカとの戦いで、コルトピやシャルナークたちの念能力を借りて戦っていました。これは彼の能力がそういうものなので、ヒソカとしても想定の範囲であり許容範囲でしょう。

 しかし、あの戦いにマチたちが手を貸していた可能性があります。クロロは終始、天空闘技場の観衆に紛れながら戦っていました。

 そのため、本当にクロロがコルトピやシャルナークの力を一時的に盗んでいたのか、それとも観衆に隠れた彼らが自分の能力を使って団長を助けていたのかは不明です。また、マチが念糸でシャルナークのアンテナを回収する手助けをしていた可能性もあります。

 もしマチたちが手助けしていなかったとしても、クロロが多くの観衆をコピーや人間爆弾にして使っていた戦い方はヒソカからすれば、集団戦闘(パーティープレイ)に当てはまりそうです。そして、意思のない操られた観衆との戦いは、異種間戦闘(アニマルプレイ)ならぬ人形戦闘(ドールプレイ)といえるでしょう。

 実際にヒソカは大部分を爆弾人形の処理に使っており、クロロとの絡みはほとんどありませんでした。そのため、楽しみにしていた天空闘技場でのクロロとの決闘は、ノーマルなヒソカにとってアブノーマル、変態的なプレイだったことになります。

 念能力に操作系がある以上、操作された人間と戦うことはある程度想定しているでしょう。しかし、あれだけの人間を操ったうえ、戦いの主力として利用されてはヒソカからするとおもしろくありません。

 このクロロの戦い方への怒りによって、ヒソカは旅団メンバーに限ってはどこで会ってもその場でヤリ合うことに決めたのだと思われます。

 おもしろい戦いができれば、自分が死ぬのも本望と考えるのがヒソカです。しかし、興味のない、興奮しないバトルに命を賭けるのはもう勘弁といったところなのでしょう。

 

 ──明らかに異質で変態っぽい言動が多いヒソカが、自分をノーマルだと思っていた衝撃の事実。しかし、周りからアブノーマルに見られていても、人は意外と自分のことを普通だと思っているもの。自らを客観的に視ることの大切さをヒソカから学べたような気がします。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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