<この記事には漫画『HUNTER×HUNTER』最新話までのネタバレが含まれます。ご注意ください。>
コミックス第38巻でブラックホエール号内において初めて姿を見せたヒソカ。以前からこのヒソカは偽物ではないかとファンの間で考察されていましたが、最近のエピソードでその正体が判明しました。
その考察、そして「天才すぎる」とファンをうならせたダブルミーニングによる伏線とはいったいどのようなものだったのでしょうか。
◆ボノレノフの変身能力
コミックス第36巻でボノレノフは、変容(メタモルフォーゼン)という変身能力を使って行動する方針を団長に告げています。そのため、この時点でボノレノフが化けているのは、ヒソカではないかという予想はされていました。
ヒソカを探すのにヒソカに化けるのは矛盾していますが、ボノレノフは変身能力をどう使えばいいか考える頭がないと団長に丸投げ。クロロは「やってもらいたい事がある」と、彼に何らかの指示をしていました。
クロロはマフィアが均衡を保つため、ヒソカを見つけ出しても旅団から遠ざけると推測。実際にシュウ=ウ一家の若頭ヒンリギはボノレノフが化けているヒソカを探し出し、第1層の娯楽エリアに誘導しました。
早い段階でボノレノフの変身能力は示唆されていましたが、これだけではリンチにカウンターを浴びせたヒソカが本物ではないという結論には直結しません。それではヒソカが偽物であると考察されていた、その伏線と根拠を見ていきましょう。
◆セリフにトランプマークがほぼない
ヒソカが持っているほかのキャラクターにない特徴といえば、セリフの最後にハートやスペードなどのトランプマークがつくことです。しかし、マフィアと接触したときのヒソカのセリフにトランプマークがついていたのは1ヶ所だけでした。
「ついカウンター入れちゃった」というセリフにダイヤマークがあるだけとなっています。ヒソカのセリフの最後に毎回トランプマークがあるわけではないですが、これまでを振り返るとこの登場回数は極端に少なかったです。
おそらくボノレノフは姿をヒソカそっくりにはできても、独特の口調をマネするのは簡単ではなくトランプマークがついていなかったのだと思われます。
「ついカウンター入れちゃった♦」というセリフは、リンチの能力によって一緒にいたザクロにも正体がバレてしまったかもしれないという警戒心から、かなり気合いを入れて口調をマネしたのでしょう。
そして、正体がバレていないと分かったため、ヒソカの口調をマネしなくても通用する相手だと判断して元に戻したのだと思われます。
そのため、もしヒソカをよく知る人物に会っていたら、ボノレノフはがんばってトランプマークがつくような話し方をしていたかもしれません。
◆「ヒソカか?」と聞かれても一切答えない
ボノレノフはヒソカに化けている最中に、合計4回ヒソカなのかどうかかをたずねられていますが、一切それに答えていません。
短い登場シーンの中で4回も確認され、そのどの質問も無視している不自然さによって、偽物ではないかと考察されていました。
ヒソカであると認めなかったのは単純にボノレノフの性格のためか、もしくは能力が影響していると考えられます。変容(メタモルフォーゼン)は他の能力と同じく舞うことで音を奏でて発動しますが、もう一つの条件が変身する相手と対話することです。
過去に1度でも会話していれば変身でき、姿を変えていられる時間はその相手との対面時間とほぼ同じになります。ヒンリギによると元の自分のサイズよりも体を大きくしたり、小さくしたりできる変身能力は珍しいようです。
変容(メタモルフォーゼン)は変身できる体のサイズに制限はありませんが、ボノレノフ自身は小さいサイズの体に変わる場合は変身時間が短くなると感じています。このことから体のサイズを変えるために、ほかにも何らかの条件があってもおかしくありません。そのため、自分から変身している者の名前を名乗ったり、認めたりすると変身がとける制約があることが考えられます。
冨樫先生が単純に読者に違和感を抱かせるためだけにこのような伏線を仕掛けるとは思えないので、ボノレノフの能力に絡めた理由がある可能性は高いでしょう。
◆天才すぎる伏線「聞こえてないのかな…?」のダブルミーニング
第38巻でヒソカに変身していたボノレノフがリンチにカウンターを入れた直後、「聞こえてないのかな…?」とザクロに問うシーンがありました。このセリフには2つの意味があり、伏線が天才すぎるとファンを唸らせています。
当初の視点ではリンチを気絶させた後ヒソカ(変身したボノレノフ)が、ザクロに「目的は?」と質問。これにザクロは「あんたがヒソカだよな?」と聞き返したため、これを受けてヒソカ(変身したボノレノフ)が「聞こえてないのかな…?」とプレッシャーをかけるやり取りとなっていました。
しかし、その実体はリンチの能力で「ううん実はヒソカに化けた偽物だよ」という心の声を聞かれて焦っていたボノレノフの素のセリフだったことが判明。ザクロにも聞かれたと思っていたら、「あんたがヒソカだよな?」とたずねてきたので、心の声が「聞こえてないのかな…?」という安堵の意味で発せられた言葉でした。
同じセリフなのにプレッシャーと安堵の2つの意味を持たせる仕掛けに、「ダブルミーニングになっていたのか」「天才すぎる伏線」と絶賛の嵐。これぞ『HUNTER×HUNTER』といえる仕掛けに、ネットやSNSも大いに盛り上がることとなりました。
──『HUNTER×HUNTER』には冨樫先生の遊び心がある仕掛けから、ストーリーに関わる重要な伏線までさまざまな楽しい要素があります。今後も奥深いストーリーと思わずうなってしまいそうな伏線によってファンを喜ばせてくれそうです。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
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