<この記事には漫画『HUNTER×HUNTER』最新話までのネタバレが含まれます。ご注意ください。>
第11王子フウゲツがみるみる衰弱していくなか、センリツたちは念による攻撃という予測をもとに容疑者を探っています。しかし、その見立てが間違っているという考察が多く、そこに絡む伏線とミスリードがスゴすぎると話題に。果たしてフウゲツを呪っている誰なのか、その正体と攻撃方法を考察していきます。
◆第7王子ルズールスの守護霊獣はミスリード?
フウゲツが低級邪霊にとり憑かれるようになってから、背中に注射の跡が見つかりました。このためセンリツたちはクスリをさばいている第7王子ルズールスを怪しんでいますが、この予測はミスリードであるという考察が多くなっています。
その理由としてはカキン国王のナスビが守護霊獣同士が命を奪い合うことはなく、守護霊獣の憑いた人間を直接攻撃しないと明言しているからです。背中の注射のような跡は直接攻撃に含まれるでしょうから、第7王子ルズールスの守護霊獣の仕業である可能性は低いといえます。
ですが、ルズールスの守護霊獣の能力は標的の欲望を具現化して罠を張り、ターゲットが罠にはまると発動するというものです。実際に彼の守護霊獣が能力を使っているシーンはなく、1コマでさらっと説明されています。
しかし、この1コマが強烈な伏線になっていてスゴすぎると話題に。なぜなら、フウゲツは自身の守護霊獣の能力である秘密の扉(マジックワーム)を進化させたいという欲望にとり憑かれており、まさに罠にはまっているような状態だからです。
ルズールスの守護霊獣は具現化系半強制型の操作能力と解説されているため、フウゲツがオーラを消耗して弱っていくように操作している可能性も考えられます。ただ、フウゲツがカチョウの遺言である手紙を渡したときのルズールスは、うかつに動くことがもっともリスクが高くバランスをとることを重要だと判断していました。
守護霊獣は王子が意図して動かせるわけではありませんが、能力者の意志や考えを汲んで動く傾向があります。そのため、一貫として他王子の排除に積極的ではないルズールスの守護霊獣が、フウゲツを攻撃しているとは考えづらいでしょう。
何よりナスビによって明言されている隠されたルールがあることから、フウゲツを攻撃しているのはルズールスの守護霊獣ではないと思われます。彼の守護霊獣の能力がフウゲツの現状にあまりに当てはまりすぎますが、これは冨樫先生による考え抜かれたミスリードと考えるのが自然でしょう。
◆ウショウヒの念能力「虫射球」
フウゲツの背中の跡は注射の跡のほかに虫に刺されたもののようにも見えます。そこで容疑者にあがってくるのが、第1王子ベンジャミンの私設兵で虫射球(ニードルボール)を使うウショウヒです。
ウショウヒは当初フウゲツを担当しており、虫射球(ニードルボール)を彼女に憑かせていました。しかし、この能力にはターゲットがウショウヒの半径20メートルの範囲から出ると解除され、1度取り除かれたら2度と効かない縛りがあります。
フウゲツは秘密の扉(マジックワーム)による空間移動で彼の能力の範囲から離脱。これによって、彼女に憑いていた虫射球(ニードルボール)はすでに解除されています。
ウショウヒはその後、第8王子サレサレの担当となったためフウゲツのもとを離れました。虫射球(ニードルボール)を1度解除されたら2度と効かないという縛りから考えて、フウゲツの衰弱はウショウヒの仕業である可能性はゼロといってよいでしょう。
ただ、フウゲツの虫刺されの跡自体がミスリードの可能性があります。跡はウショウヒの虫射球(ニードルボール)によるもので、彼女が衰弱して低級邪霊が憑いているのは別の能力者の攻撃である可能性は考えられるでしょう。
◆カミーラの私設兵メシュシの呪い
カミーラの私設兵は不可持民であり、呪いをもってターゲットの命を奪う能力を持っています。その中の1人である第11王子の呪詛担当メシュシによって、フウゲツが衰弱させられている可能性が考えられます。
彼女たちの能力つじつま合わせに生まれた僕等(ヨモツヘグイ)は、標的に縁のあるものと小刃を身に着け、毎日標的を想うことで呪念を高めていきます。呪いの発動条件は小刃で自死することです。
できるだけ長い期間、できるだけ近い距離で標的を想うことで呪いは強くなります。さらには自死する場所も重要で、標的に近ければ近いほど呪いが強力になって命を奪うまでの時間が短縮化。
憑かれた者は呪念によってオーラを奪われます。もっとも強力な呪いであれば、強制的な絶状態となって数時間で死に至るとのこと。
カミーラの私設兵隊長のサラヘルはハンター協会の除念師をあぶりだすため、とりあえず適当な王子に呪いを飛ばそうと考えていました。フウゲツも標的の候補の1人でしたが、彼女はブラックホエール号の脱出に失敗してから司法局に保護されています。
この場合、フウゲツを呪うとなると距離が遠すぎるため死に至らしめるまで半年かかるという見立てでした。このため、メシュシによる仕業ではないと考えられますが、ここでもう1人重要な人物の関与が浮上してきます。
司法局のカイザルはフウゲツに不自然なほど協力的で、その理由の一つとしてセンリツへの好意をアピール。ド直球の告白をするほどですが、センリツは彼の行動や心音から操作系の能力者に操られているのではないかと疑っています。
カミーラの守護霊獣の能力は強制型の操作系で、ある条件を満たした者を意のままに操れる能力です。彼女は第1王子ベンジャミンへの襲撃に失敗して、一時司法局の管理下に置かれていました。
そのため、カイザルと接触する機会があり、このときに守護霊獣が能力を発動させていた可能性があります。守護霊獣の力でカイザルを操れば、メシュシを司法局に手引きさせられるでしょう。
さすがにフウゲツの目の前とはいきませんが、ある程度近くの人目のない場所を用意してメシュシに自死させればかなりの呪力で発動できるはずです。司法局内部でなくとも、そこに隣接する別の部屋であれば死体を片付けるのも難しくはないでしょう。
このことからフウゲツを呪っているのはメシュシの可能性が高いと思われます。しかし、カイザルが操られていてセンリツへの気持ちもウソであるという見立て自体がミスリードという展開も冨樫先生ならやってきそうです。
◆フウゲツとカチョウの能力の代償
フウゲツは1日1回限定だった秘密の扉(マジックワーム)を無制限で使えるようになっています。この強引なパワーアップとカチョウの2人セゾン(キミガイナイ)の負担によって、自らの生気が衰えて低級邪霊に憑かれている可能性も考えられるでしょう。
フウゲツは船外の場所に扉をつなげようとしたり、実際に能力を使って救命艇のある部屋に移動したりと短期間でいろいろなチャレンジをしています。秘密の扉(マジックワーム)の使用回数制限もなくなってパワーアップしていることもあり、それだけオーラを消耗している状態です。
また、秘密の扉(マジックワーム)の扉が閉まる条件は行きはフウゲツ、帰りはカチョウが中に入った瞬間です。この能力に2人が関与しているということは、カチョウの2人セゾン(キミガイナイ)もフウゲツがいてこそ発動する能力だと考えられます。
2人セゾン(キミガイナイ)はカチョウとフウゲツ、2人のうちどちらかが死ぬとその者の姿となりもう一方が死ぬまで守るという能力です。最初からカチョウとフウゲツの2人がいることを前提としてものとなっています。
そうなるとフウゲツは2人セゾン(キミガイナイ)の発動にもオーラを取られている状態であると考えらえるでしょう。そのうえ、秘密の扉(マジックワーム)を酷使し過ぎたため、消耗が激しくなって衰弱している可能性もあります。
──各陣営の思惑が複雑に交錯しており、それにともなって多くの伏線とミスリードも入り乱れています。しかし、11人いる!(サイレントマジョリティー)の犯人を含めて、正体が明かされなければ伏線もミスリードも真に効果を発揮することはありません。そのため、冨樫先生には根を詰めてオーラを消耗し過ぎない程度にがんばって、しっかり伏線を回収してほしいところです。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
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