『HUNTER×HUNTER』ではキャラクターのそのときの判断や感情による行動が、その後ネテロやカイトの死亡につながったと考えられるものがあります。はたして、それらは本当に致命的なミスだったのでしょうか?
◆ゴンのラモット攻撃でキメラ・アント強化
カイトと共にNGLに入ったゴンたちはラモットと遭遇、優位に戦いを進めて大ダメージを与えるも逃げられてしまいました。この結果、ラモットをはじめ多くのキメラ・アント兵が念を習得することになりましたが、これはゴンが原因でなくてもいずれ同じ結果になっていたでしょう。
ゴンの念による攻撃に耐えたラモットに殴られることで、キメラ・アント兵たちは念能力に覚醒しました。しかし、ラモットがオーラを操れるようになったのと同じタイミングで、最初から念を使えていたネフェルピトーが生まれています。
念能力者であるネフェルピトーはラモットと話しているとき、骨の中にポックルが隠れていたことに気づいていました。そのポックルの脳をいじることで念能力への知識を深め、その後全師団長と全兵隊長を招集して選別を開始。
ラモットに彼らを殴らせることで、念能力を使える者を増やしていきました。仮にこの時点でラモットが念能力に目覚めていなかったとしたら、覚醒方法はポックルから聞き出していたはずです。
また、ネフェルピトーが師団長や兵隊長全員を殴るという面倒なことをするとは思えませんが、1人、2人殴ってしまえばあとはそれで覚醒した師団長に処理させればよいでしょう。ラモットがゴンに受けたダメージから回復するのも1日2日程度でした。
そのため数日分の遅れはあったかもしれませんが、キメラ・アントが念能力で強化される未来に変わりはなかったと思われます。つまり、女王蟻が死んだあとに巣立ったレオルやヂートゥ、ブロヴーダによって多くの市民や警官が命を奪われる事態は変わらなかったでしょう。
◆ジンのせいでカイトが死亡?
ゴンがカイトと再会したきっかけは、グリードアイランドのクリア者がニッグを対象に同行(アカンパニー)を使ったときにカイトの元へ飛ぶようにジンがしていたためでした。その流れから一緒にNGLに入ることになり、カイトはネフェルピトーとの戦いの末に死亡します。しかし、これはゴンたちがいなかったとしても結果は変わらなかったでしょう。
なぜなら、カイトチームによるカキン国での生物調査はゴンとキルアがやって来る前から既に行われていました。そこで得た未確認生物の情報を追ってNGLにたどり着くわけですが、ゴンたちが合流していなくても同じ流れになっていたでしょう。
カイトが1人でNGLに入るか、ゴンとキルアと一緒に3人で入るかの違いしかなかったはずです。また、カイトはネフェルピトーの円にわざと触れたと考えられていますから、戦闘になったことに関してもゴンやキルアが関与していたからという要素はありません。
問題はゴンたちがおらず、カイト1人だけだったら逃げられたかどうかです。しかし、これはネフェルピトーとの実力差を考えると無理だったでしょう。
片腕を失っていたものの、カイトはしばらくネフェルピトーと1対1で対峙していましたが逃げられていません。そもそもあの距離を一瞬で詰められると想定していなかったことがカイトのミスであり、実力差が予想以上であったことの証です。
ゴンやキルアが逃げられたのもネフェルピトーが興味を持たなかっただけで、その気であれば全員の命を奪えていたと思考えられます。
逆にゴンたちがあの場面にいなければカイトの死によって彼らが強くなることもなく、その後の王宮突入メンバーにも選ばれなかったでしょう。
そうすればメレオロンも仲間にならなかったですし、モラウたちだけでは苦戦は必至。ネテロだけでなく他にも犠牲者が出る結末となっていたかもしれません。
◆パリストンの重用でネテロが死亡?
ネテロは周りをイエスマンだけで固めるのを嫌い、あえて最も苦手なタイプであるパリストンを副会長に置いていました。キメラ・アント討伐ではこれが大きく裏目に出てしまいますが、パリストンが副会長でなくても最終的にネテロは1人でメルエムと戦って貧者の薔薇(ミニチュア・ローズ)を使ったと考えられます。
確かにパリストンのせいで十二支んがネテロに同行するのを阻まれました。しかし、メルエムの圧倒的な強さを考えれば、十二支んと一緒に戦ったとしても勝てなかったでしょう。
むしろネテロの足手まといになったり、メルエムに喰われてパワーアップされていた可能性のほうが高いです。十二支んに犠牲者が出て、なおかつ結局ネテロの自爆でなければ倒せない事態となれば本末転倒。
いずれにせよ誰かが貧者の薔薇(ミニチュア・ローズ)を使う必要があったと考えられますが、あの時点でハンター協会はメルエムがどの程度強いのかは把握できていませんでした。ということは、普通に戦って勝てればそのほうが良いと考えるのは当然です。
そのため、戦ってみて勝てる見込みがなければ貧者の薔薇(ミニチュア・ローズ)を使うというプランは崩せなかったでしょう。その役割をネテロが担うか十二支んの誰かが担うかですが、ネテロには久しぶりに強敵との1対1の本気の勝負をしたいという願望があったはずです。
その多くがネテロに心酔している十二支んは会長が1人で全責任を負うプランに反対していましたが、副会長のパリストンの画策によって結果的にその方向でシナリオは進みました。しかし、ネテロはパリストンがそう動いてくれることを望んでいたのかもしれません。
むしろこのような緊急事態に陥ったときに、ネテロが強敵と真剣勝負できるようにパリストンが動いてくれると予想して彼を副会長にしていた可能性すら考えられます。また、そういう意味ではパリストンこそがネテロの真意を本当に理解していたといえるでしょう。
◆マチの失言で旅団が壊滅へ?
クロロとの戦いに負けたヒソカに、マチは「戦う相手と場所はちゃんと選ぶことだね」という言葉をかけました。これによってタイマン勝負に旅団メンバーが手を貸していたのではないかとヒソカが疑念を抱いてクモ狩りに動いたという考察が多いですが、クロロとの再戦を考えるなら彼がとる行動は結局同じだったでしょう。
ヒソカは除念師を見つけた報酬としてクロロとタイマンで戦う権利を得ました。しかし、クロロはしばらくヒソカから逃げており、おそらくその間に恋のダイヤル6700(イマワシデンワ)を使って必要な能力を持つ者を探していたのでしょう。
さらにはヒソカに勝つために、観戦者がいる天空闘技場を戦いの舞台に指定しています。決闘後にヒソカが「相手十分の条件で勝つのは難しいな…」と発言していたように、クロロは万全の準備で戦いに臨んでいたということです。
そのため、同じようにヒソカ側からクロロと戦いたいという形で再戦をしても変わらない流れとなるでしょう。そして、再び万全の準備を整えられて同じ結果になると考えれます。
そうなるとヒソカが取る手段は一つです。クロロ側からヒソカに戦いを挑むようにしなければなりません。
そのために手っ取り早い方法としては、旅団メンバーを狩ることでしょう。特に創設時のメンバーの命を奪えば、クロロだけでなくマチら初期メンバーもヒソカに激怒することマチガイナシ。
また、能力を貸し出し中のシャルナークとコルトピをねらえば、彼らが命を奪われたことにクロロは人一倍の責任を感じるでしょう。そして、実際に幻影旅団はヒソカをねらうのに躍起になっています。
マチの失言がなくとも、ヒソカはすぐにこの結論にたどり着いていたでしょう。そのため、遅かれ早かれヒソカは旅団相手には戦う相手と場所を選ばないことにするという方向へ方針転換していたと考えられます。
──人生は選択の連続であり、後になってその決断を悔やむことも多々あります。しかし、困難から逃げる選択さえしなければ、そのときにベストと思って下した決断を後悔する必要はないのかもしれません。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
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