クロロはヒソカとの再戦にあたって、自分が死んでも旅団が続いていくための次善策を用意していることを示唆していました。この「次善」が何を意味するのか、どのようなデザインで旅団を継続させていくのでしょうか?
◆クロロの「次善」とは旅団が続く方策のこと
クロロはヒソカに勝つための方法を模索しながら、「既に次善は整い旅団は続く」、「オレが死すとも」という意味深な言葉を残しています。文字通り受け取るなら、クロロが死んでも旅団が続いていく方策を既に準備しているという意味になるでしょう。
もちろんヒソカに勝つことがベストであり、そちらの選択肢が「最善」です。しかし、そのための能力を得るにはカキンの至宝である三種の神器を盗んで、盗賊の極意(スキルハンター)をパワーアップさせる必要があるとクロロは考えています。
「最善」が叶わなかったときのための「次善」であり、その内容は幻影旅団を立ち上げた目的に関係すると考えてよいでしょう。クロロはサラサを失ったことで、流星街とそこの住人に悪党が危害を及ぼさないようにすると誓いました。
そのための幻影旅団であり、実際にA級首への畏怖からヨークシンのオークションのお宝を盗んだのが彼らだと知るとマフィアは手を引きました。そして、そのシステムはクロロが死んでも機能するようにしておかなくてはなりません。
◆キーワードは「デザイン」
クロロの「次善」についてキーワードとなるのが「デザイン」という言葉です。
彼は幻影旅団を設立するときにもこの言葉を使っており、そのことから「次善」についても流星街に害する者を近づけさせないことを目的としていると推察できます。
クロロは「小悪人共が震え上がり決して流星街に近づかない様この街と自分をデザインする」と宣言。そして、旅団については畏怖の象徴となるようにクロロが死んでも続くようにデザインしたという主旨の発言もしています。
このことから既に「次善」は完成していることは間違いないでしょう。そこでやはり気になる点は、どのような方法で旅団という組織を生き残らせるかということです。
冨樫先生の用意周到さを考えると、何らかの伏線は既に張っている可能性は高いでしょう。そして、その方法は普通の念能力ではなく死後の念のような特殊な力であり、クロロの盗賊の極意(スキルハンター)とうまく絡めてあると考えられます。
そこで候補に挙がってくるのが、カキン帝国の王子の守護霊獣やジョイント式の念能力です。クロロが死んでも旅団を継続させるという観点から、似たような効果を持つ2人の王子の能力に可能性を見出せます。
◆意識や体乗っ取り系の能力の可能性
存在を永続的に残したい場合によくマンガやアニメで見られるのが、自分の命を奪った相手の意識を乗っ取る能力です。
『HUNTER×HUNTER』でもカキン帝国の第9王子ハルケンブルクがこれに近い能力を持っているため、クロロが幻影旅団を存続させるために有していてもおかしくないでしょう。
ハルケンブルクの能力は強化系・相互協力型の強制的人格変換であり、死を覚悟して矢を放つというものです。この矢は1度放たれると防御不可能で、刺された標的とハルケンブルク自身もしくは彼を支持する従者の中からランダムで選ばれた者の人格を強制的に入れ替えます。
つまり、もしヒソカによってクロロが命を奪われた場合、これに似た能力によってヒソカの意識と体を盗むということです。相手の能力を奪うクロロの盗賊の極意(スキルハンター)をベースに、死後強まる念として発動するようにすれば相手を乗っ取ることは可能でしょう。
もしかするとクロロはハルケンブルクの能力に似たものを既に盗んでおり、自分の死をスイッチとして発動させるようにしている可能性も考えられます。または盗賊の極意(スキルハンター)のレベルアップによって、新しい能力として覚えたのかもしれません。
いずれにせよこのような能力であれば、体は変わってもクロロの意識は永遠に生きることになりますから幻影旅団も継続させられます。自分の死によって発動する能力は強力であり、おそらく除念でもされない限りは解かれることもないでしょう。
意識だけでなくもともとのクロロの能力も引き継げるのなら、永遠に生き続けることが可能です。「次善」の策としては十分過ぎるものであり、幻影旅団が続けば流星街を外敵から守り続けることも容易となります。
◆能力を引き継ぐ系の能力の可能性
旅団を継続するためにもう一つ考えられるのが、次の団長に能力を引き継げる能力です。
『HUNTER×HUNTER』でもカキン帝国の第1王子ベンジャミンがこれに近い能力を持っているため、クロロも能力を誰かに引き継ぐ策を用意している可能性が考えられます。
ベンジャミンの能力の名前は、星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)です。カキン国王軍学校を卒業してベンジャミンの私設兵団に所属している者が死ぬと、その念能力が彼に受け継がれます。
これと同じようにクロロが死ぬと、その能力を誰かに引き継ぐようにしておくことは可能でしょう。ただし、幻影旅団の団長としての地位と意志も引き継ぐとなると、その相手は流星街に関係がある者に限られます。
クロロの能力を受け継いでも私利私欲のために好き勝手に行動されたら、流星街に悪党が手を出せないようにするという目的を果たせなくなってしまいます。当然旅団の現メンバーがうってつけではありますが、彼らはヒソカ狩りに参加しているので死ぬ可能性も高いです。
そうなると旅団外部の人間でなおかつ流星街に関わりがある人物、そして当然かなりの強さを求められます。流星街の人間というくくりでいえばシーラやレンコの名前が挙げられますが、旅団の団長を引き継ぐとなればかなりのカリスマ性も必要です。
これらを兼ね備える人物といえば、その動向が謎のままであるジャイロです。彼はキメラ=アントに取り込まれるも、その強靭な意志で女王蟻の支配から逃れて1人旅立って行きました。
念能力ももともと使えていたか、ほかのキメラ=アントとなった同胞と同じように覚醒している可能性は高いでしょう。NGLの裏の顔のリーダーとして君臨していたこともあり、カリスマ性も十分だと考えられます。
彼は流星街の出身ではありませんが、ウェルフィンはジャイロが流星街に行ったと予想して後を追って行きました。そのため、クロロが既に彼に接触していてもおかしくはないでしょう。
また、キルアたちの母であるキキョウは流星街出身のため、ゾルディック家の誰かが出向のような形で旅団の団長を引き継ぐ可能性もあるかもしれません。カルトやイルミを入団させたのも、既に自分が死んだあとの旅団のことを考えてゾルディック家との関りを作っておきたかったという思惑が働いていたとも考えられるでしょう。
──政治家や会社など現実の世界でも後継者問題は重要事項であり、大切なことは組織の目的や矜持をしっかり受け継ぐことです。ただ、マンガのように相手の意識を乗っ取ったり能力を引き継がせたりはできません。早めに後継者育成に着手し、年をとってもその地位に執着することなく潔く若い人に譲ることが組織を正しく存続させるための秘訣といえるでしょう。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
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