アルカ=ゾルディックに寄生していると多くのファンの間で考察されている、五大災厄の一つ「ガス生命体アイ」。ナニカの能力は「願いを叶える力」とされていますが、アイ自身の能力は未だ未知数です。
しかし、ゾルディック家が持つ極端な共依存関係を考えると、アイは単なる願望実現の存在ではなく、寄生主に関わる者の精神に影響を与える厄災的な力を持っている可能性が考えられます。
◆暗黒大陸由来のアイがもたらす影響とは?
「暗黒大陸編」では、ゾルディック家の祖先であるジグ=ゾルディックが暗黒大陸へ渡ったことが明かされました。そこに潜む五大厄災の一つが「ガス生命体アイ」であり、アルカに寄生している可能性が示唆されています。
ここで重要なのは、アイの能力が単なる「願望実現」にとどまらない可能性があるという点です。
五大厄災はどれも人間にとって脅威となる存在ばかり。人類を滅ぼした可能性すらあったキメラ=アント以上の危険度のある災害にカウントされるアイ。どれだけ恐ろしい存在なのか想像することすら困難です。
もしアイの本質が、ガスのように周囲に影響を撒き散らすものだとしたら。「寄生主に関わった者の精神を支配し、強い依存関係を生むもの」だとしたらどうでしょうか?
事実、アルカを取り巻くゾルディック家の人々は、異常なほどに彼女を管理しようと、あるいは守ろうとします。この現象は、アイの能力による影響なのかもしれません。
◆キルアの持つ依存性な性質
キルアはアルカに対して「絶対に守るべき存在」としての強い執着を見せています。アルカを救うためなら、家族との関係を完全に断ち切ることすら厭わなかったほどです。この異常なまでの保護意識は、通常の兄妹関係を超えています。
さらに、キルアはゴンに対しても強い依存傾向を見せていました。ヨークシンシティ編ではゴンといることが「楽しい」と語り、キメラアント編ではゴンのためにすべてを捧げようとしました。これらの行動は、共依存関係に陥った人物の特徴と一致します。
キルアのこの極端な執着は、単なる性格の問題ではなくアイの影響を受けた結果ではないでしょうか? もしアイが「関わる者に特定の対象への異常な依存を生じさせる」能力を持っているのなら、キルアの行動にも説明がつきます。
◆イルミとシルバがアルカを徹底管理しようとする理由
イルミとシルバはアルカを地下に隔離し、能力の発現を防ごうとしました。これは単に「能力が危険だから」だけではなく、「アルカに関わると精神的に影響を受けるから」と考えられます。
また、イルミはアルカのことを家族だと思っておらず、コミックス31巻でも命を奪おうとしています。これは、アルカの存在が家族にとって危険を招く可能性があるからという理由だけではなく、イルミ自身が「アルカに関わると精神が支配される」ことを理解していたからかもしれません。
事実、イルミもまたキルアに対して異常な執着を見せており、彼を支配しようとしています。
また、カルトも兄への強い執着を抱いています。カルトが執着している兄とは、カルトがアルカに嫉妬心を抱いていることもあり、キルアのことをさしているという見方が強いです。
ですが一部のファンの間では、イルミのことをさしているという可能性も考察されています。カルトは「兄を取り戻すため」に幻影旅団に加入しましたが、これは「イルミがアルカによって変化した」ことを意味しているのではないでしょうか?
ゾルディック家全体が、アイの影響を受けて強烈な共依存関係に陥っている可能性が考えられます。
◆ゾルディック家に広がる“共依存の沼”
ゾルディック家の家族関係を整理すると、異常なほどの支配と依存の関係が見えてきます。
・キルア → アルカとゴンに対して極端な依存傾向を見せる。
・イルミ → キルアに対してハリを刺してコントロールするなど、異常ともいえる支配欲を見せる。
・カルト → 「兄さんを取り戻すため」との理由で旅団に加わるなど、兄に異常な執着を見せる。
・シルバ → 家族を管理しようとするが、結果的に依存関係を生む。
・キキョウ → キルアに過剰な執着を見せる。
ゼノとミルキに関しては、今のところそういった様子は感じられませんが、ゾルディック家の大多数が依存傾向であることは間違いないでしょう。
ゾルディック家がこれだけ極端な共依存関係を持っているのは、もともとの家庭環境や性格だけが原因とは言い切れません。アイの影響によって、家族の多くの「歪んだ関係」が強化され、共依存の沼に引きずり込まれている可能性があります。
アルカに宿るガス生命体アイは、「願望を叶える力」だけでなく、「関わる者を強烈な相互依存に陥らせる力」をガスのように撒き散らしているのではないでしょうか?
もしこれが事実ならば、アイの力は単なる危険な願望実現能力ではなく、「精神そのものを侵食する能力」だと考えることもできるでしょう。アイは、ゾルディック家という強い結束を持つ一族に寄生し、彼らの関係性を歪めながら存続し続ける。それこそが、アイの本質なのかもしれません。
──暗黒大陸編に入ってしばらく出番のないキルアとアルカ。ですがこの先、アルカとアイの関係が明かされる可能性があります。特に、アイの能力が「単なる願望実現ではない」とすれば、その危険性が本格的に描かれる展開も考えられます。
〈文/鷹野あやね〉
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